<プレゼンテーション>

 私たち2011年度秋学期ドイツ社会研究ゼミは、前半に東ドイツの社会的問題(人口の減少・高失業率など)について文献を読み議論を重ね、後半では東ドイツの問題を参考にしながら東日本大震災後の日本の様々な事柄に関して日独比較を行い、2012年1月12日(木)のドイツ語圏入門3の授業でドイツ語学科2年生に対し、7名が各々のテーマについて10分のプレゼンテーションを行いました。また2名が、Zukunft der erneuerbaren Energie in Japan および Kizuna と題したドイツ語によるレポートを作成しました。

 以下、当日発表した7名のテーマと概略です。

ドイツメディアと東日本大震災
~Süddeutsche Zeitungから見る3.11の報道内容の変化~ (I.M.)

 ドイツを代表する新聞の一つSüddeutsche Zeitung(SZ)における東日本大震災の3ヶ月ごとの報道内容の変化を同時期の読売新聞を用いて比較考察を行った。結果、SZでは、異例なほど長期に渡り日本の3.11に関して報道されていたが、報道内容は原発関連に偏っていることが分かった。このことから海外ニュースの報道は各国の関心の高い事柄に集中するため、その報道内容が実際に現地で問題になっていることであるかは判断しにくいと考察できる。

日本とドイツにおける放射能への対応比較
~3.11とチェルノブイリ~  (S.A.)

 3.11後の日本とチェルノブイリ後のドイツの対応を比較することで見えてくる類似点と相違点を考察した。政府の不十分な対応及び情報とそれに対する国民の怒りと不信感という類似点、日本での、風評被害や汚染被害を受けた地域を支援しようとする団結的な動きと、ドイツでの、放射能汚染が疑われる農産物を全面的に避けようとする反応という相違点が見受けられる。相違点に関しては、自国で起きた事故の被害を支援しようとする結束力、遠方で起きた事故に対する被害者意識の違いがこの要因の一つといえるだろう。

日独のエネルギー教育教材を比較して (I.H.)

 3.11前後の教科書記述、日独各々の政府機関から発行される教材を比較し、エネルギー教育を考える切り口とした。3.11を受けて、日本の教材にみられた、「安全神話」と言われた記述は削除された一方、Fukushimaの事故や原発の危険性について今なお記述は不十分だ。ドイツでは、対立する視点をとりあげ、多角的に物事を捉え、そのあり方や将来を子ども達が自ら問い、考えられる教育を行ってきた。3.11後に変化がみられた日本のエネルギー教育は、まだまだ改善の余地があるだろう。

政治面から分析する日独のエネルギー問題 (S.M.)

 ドイツの各党におけるエネルギー問題の方向性は明確である。2011年3月27日、2つの州選挙では脱原発を主張している緑の党が大勝した。これは選挙を通して国民の意見が政治に示されたといえる。一方日本では二大政党である自民党、民主党の方向性は未だ不透明であり、国民が選挙を通してエネルギー問題に意思表示することが困難である。その代替案として現在都市を中心に行われている「原発国民(住民)投票」は政党を通さず直接国民の意見が反映される手段となっている。現在、日本の国民は政党を通さずエネルギー問題への意見を表明することを余儀なくされている。

電力買取補償制度の日独比較  (S.H.)

 再生可能エネルギー電力固定価格買取制度について、日独の比較を行った。日本の特別措置法(2011)では、買取価格の水準、適格技術の規模および条件が、ドイツの現行法と比較してまだ具体的に決められていない。特に太陽光発電に関しては技術革新と低コスト化が求められるため、引き下げ率を設定する必要があるだろう。ただし日本特有である、余剰電力のみの買取制度は、家庭で使用する電力を自宅で生産でき、余剰電力があれば収入にもなるため、発電事業者の新規参入と節電を促進できると考えた。日独に共通する課題として、機器の製造、輸送、発電、廃棄のプロセスにおいて環境負荷の低いエネルギー源に買取補償対象を絞ることを挙げた。

持続可能な発展は可能なのか
~芸術・文化による社会・経済発展から探る~  (K.Y.)

 ドイツのロマンチック街道は第二次大戦後、ドイツ復興を目的に、観光地として街道を整備したという経緯をもつ。英国のグラスゴー市やドイツのドルトムントの事例によれば、工業都市を芸術・文化によって再生させることによる持続可能な発展は不可能ではない。今後の3.11復興の有効な一策として、良いお手本となるのではないだろうか。

「東北地方」は「旧東ドイツ地域」から何を学べるか
~これからの「ローカル」のありかたを考える~ (U.T.)

 旧東ドイツ地域と東北地方の歴史と地域復興政策を比較し、東北地方がどうやって復興すべきかについて考察した。今回、東ドイツと東北地方について調べてみて、どちらの地域も豊かな自然環境や労働力があり、再生可能エネルギーを産業の軸に据えることに可能性があると感じた。私はこれまで大都市にしか住んだことがなく地方の都市や産業についてどちらかというと無関心であったが、この発表をしたことで地方へ目をむけるようになったと思う。