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           「競争、BS,CATV・・・ 韓国メディア会の暑い季節」
                            新聞通信調査会報 382号 1994/9


 今年7月にアジアで初の国際マス・コミュニケーション学会の大会が、ソウルのシェラトン・ウォーカーヒル・ホテルで6日間にわたり開かれた。世界各国から350名が参加し、日本からも30名近くの研究者や学者が出席し、いくつかの研究報告もなされた。

 1980年に始まった言論機関の統廃合、言論基本法などによる厳しい政府コントロールから解放された87年以来、韓国のマス・メディアは活況を呈している。今回の国際的な学会開催もそうした背景とマスコミ界の意気込みから生まれたと言えよう。ソウル最大の書店教保のマスコミコーナーを見れば、それが一目瞭然だ。従来のマスコミ概論、総論から各論、とくに広告関係がそして加熱気味とも思えるCATV関係の本がところ狭しと並んでいる。

 最近のマスコミ概況を紹介しよう。

 3万5千人余りを抱える韓国マスコミ界は、新聞界が60%強の2.1万人(うち女性は15%、日本より比率は高い)と最も多く、放送界は1.3万人(同11%)、通信社は2%弱(同8%)の600人程である。1983年当時と比べると、全体で1.9倍(新聞=2.2倍、放送=1.5倍)の規模に増えている。1千人規模で社員を抱えるのは大手の『朝鮮日報』や『韓国日報』、『ソウル新聞』など5紙で、いずれもソウルで発行される中央紙である。経済、英字、スポーツ、地方紙となると、百人以下の小規模新聞社もある。ほぼ6対4でソウルで働くマスコミ人が多い。
 平均24−32頁建ての韓国の新聞は一部300ウォン(約36円)で売られ、宅配率は94.8%と日本並に高く、立ち売りは3.8%。広告媒体費でも、依然新聞が41.3%と高く、以下テレビが27.8%、ラジオ4.2%、雑誌3.8%の順。

 1987年の「六・二九民主化宣言」以来、新聞・雑誌の発行は最大限自由となり、日刊紙は一挙に倍の六十数紙に増えたが、それはし烈な競争を生んだ。現在は百十数紙を数える。昨年も慶尚北道の『大同新聞』など三紙が創刊される一方、倒産などにより三紙が休刊、経営難で従業員への給料遅配などの問題も起きている。昨年1月、『中央日報』『朝鮮日報』など首都ソウルを本社とする12中央紙がいっせいに月極め購読料を五千ウォンから六千ウォンに値上げ(英字紙は七千ウォン)したため、公正取引委員会に睨まれることにもなった。

 ところで、昨年4月1日、1920年の創刊以来夕刊紙として長い伝統を保ってきた『東亜日報』が朝刊紙に衣替えした。在野的ではあるが古いカラーを固守し部数が伸び悩みしていた同紙ではあったが、近年成長著しい『朝鮮日報』との同一市場での競争により、発行部数も伸びている。この結果、朝刊紙部門は『朝鮮日報』や『ハンギョレ新聞』など7紙を数え、朝刊市場での競争がさらに激化された。

 「不偏不党、産業発展、文化建設、正義擁護」を社是とする韓国の最古紙『朝鮮日報』は社屋の新築に続き、CTS化をはかることで、部数も二百万部の大台にのせた。『スポーツ朝鮮』や週刊誌、月刊誌などの出版物も好調だ。

 今後は海外ニュースや調査報道、フィーチャーといった紙面内容、あるいは販売網の充実や広告の獲得といった営業部門での伸びが、各紙の成長を握ることになるだろう。例えば、韓国メディアの海外特派員はアメリカに続いて19メディア、34人を日本に送りこんでいる。紙面審査の面では、『朝鮮日報』や『東亜日報』がオンブズマン制度を導入した点は興味深い。

 いま、韓国マス・メディア界は目前に控えた衛星放送の打ち上げ、CATVの普及、そして外国企業に解禁となった広告業界に注がれている。ソウル放送(SBS)の参入により公民共存となった放送界において、CATVと衛星放送の実現は先進国入りを図るものともいわれる。数年前まで声高に叫ばれた「文化侵略」論議が現実を前にどのように展開されるのであろうか。
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