第18回 独立後のメキシコ政治 (1)  6月13日(木) 1.植民地末期のメキシコ社会 □ 植民地(ヌエバ・エスパーニャ)時代のメキシコ社会 ・キリスト教(カトリック)とラテン文化(思想、言語、社会習慣、生活様式)が土着の要素を取り込みつつ浸透・定着 ・社会階層:  本国生まれのスペイン人(ペニンスラール peninsular)  現地生まれのスペイン人(クリオーリョ criollo)  混血(メスティーソ mestizo)  先住民(インディオ indio)  黒人 □ 独立の背景 ・「新大陸(アメリカ)生まれのスペイン人」というアイデンティティの形成  日刊紙『メキシコ日報』創刊(1805) ・ヨーロッパ啓蒙思想の流入、アメリカ独立とフランス革命の影響 ・スペイン・ブルボン朝による植民地改革:  徴税強化のための行政改革、中央集権強化 →現地政治勢力の不満  植民地防衛軍の増強 →クリオーリョ・メスティーソ主体の軍隊組織  自由主義経済改革 →クリオーリョ商人の経済力増大 2.新国家メキシコの誕生 □ 独立闘争 ・ナポレオンのスペイン征服(1808)による植民地の混乱 ・イダルゴ神父の蜂起(1810、グアナフアト州・ドローレス村)  メスティーソや先住民も含む大勢力に発展、シンボルは「グアダルーペ聖母像」  ~イダルゴ神父は処刑(1811)~各地に分散して闘争 ・モレロス司祭の独立闘争  議会開催(1813、ゲレーロ州・チルパンシンゴ)、独立綱領の起草(1814)  ~モレロス処刑(1815)~各地に分散して闘争 ・副王軍司令官イトゥルビデの寝返り  独立構想「イグアラ綱領」を発表、君主国家として独立達成(1821)  ~自ら皇帝アグスティン一世に(1822)。  ~サンタアナが共和制への移行を求めて蜂起、イトゥルビデ帝政の崩壊(1823) □ 共和制の開始 ・共和国憲法(1824)  連邦制  代議制、ただし大統領・議員は間接選挙  国教としてのカトリック □ 脆弱な国家 ・独立闘争による国土の荒廃 ・財政基盤の弱さ (限られた税収、欧米諸国からの借款、欧米諸国からの賠償請求) □ 政治的不安定 ・保守派と自由主義派の対立(~1860s)  連邦主義か中央集権か *憲法改正(1835)で連邦制廃止  教会擁護か反教会か  →統一的政治理念を形成しえず ・非合法な手段による政権奪取  武装蜂起(プロヌンシアミエント pronunciamiento)、クーデター ・カウディーリョ(caudillo)による支配  武力・カリスマ性・統率力、個人的利益の追求  →国家建設に向けた長期的展望の欠如 ⇒ 典型的ラテンアメリカ政治としての19世紀メキシコ政治