2010年度の講義概要
一変数の場合を中心に、微分積分など数学に於ける解析的手法を扱う。
高校までの「等式の数学」で余り触れられない「不等式による評価」の話から始めて、
Taylor展開の理論を大きなテーマとし、
極限・収束・無限和・微分・積分・近似計算などを関連付けて講義したい。
また、化学の学習で必要な常微分方程式のうち、簡単なものの解法にも触れる。
高校までで学んだ知識も活用する一方、それらのより確かな基礎付けも与える。
問題演習や多くの例を通じて理論的な事項を実感すると共に、
将来出会う様々な実例に馴染んでもらいたい。
主な参考書
- 三宅敏恒『入門微分積分』(培風館・ISBN-10: 4563002216・ISBN-13: 978-4563002213)
- 足立恒雄『理工基礎 微分積分学I ―1変数の微積分―』(サイエンス社・ISBN-10: 4781909965・ISBN-13: 978-4781909967)
- 中島匠一『なっとくする微積分』(講談社・ISBN-10: 4061545418・ISBN-13: 978-4061545410)
- 小林昭七『微分積分読本』(裳華房・ISBN-10: 4785315210・ISBN-13: 978-4785315214)
- 志村真帆呂『優しい微積分』(プレヤデス出版・ISBN-10: 4903814017・ISBN-13: 978-4903814018)
- 金子晃[監修]/中島多加子・米山実希[著]『積分計算 そのまま使える答えの書き方』(講談社・ISBN-10: 4061539744・ISBN-13: 978-4061539747)
- 高木貞治『解析概論(改訂第3版・軽装版)』(岩波書店・ISBN-10: 4000051717・ISBN-13: 978-4000051712)
- その他「微分積分」「解析学」などと付く本はたくさん出版されているので、
書店・図書館などで自ら見比べて自分に合ったものを選んでもらいたい。
計算機室での実習により、C 言語によるプログラミングの演習を行なう。
基本的な課題に取組みながら、文法を中心に基礎事項を学ぶ。
自分でプログラムを書き実際に動かしてみることを通じ、
単に文法を覚えるのみならず、
プログラミングの本質的な考え方を身に付けてもらいたい。
Unix 上で実習を行なうので、
情報処理I・II程度の基本操作に習熟していることを要す。
主な参考書
- 「プログラミング言語C(第2版)」
B.W.Kernighan・D.M.Ritchie 著・石田晴久訳
(共立出版)
- 「パソコンプログラミング入門以前」伊藤華子(毎日コミュニケーションズ)
- その他適宜。online manualを大いに活用されたい。
文法書や例題の豊富な参考書も役立つであろう。
情報をディジタル化して転送する際、如何に効率的に通信を行なうことができるか、
情報源符号化の基礎理論をまず紹介する。
次に通信途中で生じる誤りに正しく対処するための数理技術である
誤り訂正符号の基礎について解説する。
続いて情報化社会の安全を支える数理技術である
公開鍵暗号などの現代暗号論の基礎について概説を行なう。
代数幾何・整数論などの必要な予備知識についても適宜補いつつ講義を進める。
本講義は「応用数学I」(理工学部数学科)・
「情報数学特論」(理工学研究科理工学専攻情報学領域)の合併講義である。
主な参考書
- G.A. Jones, J.M. Jones "Information and Coding Theory" (Springer-Verlag, ISBN-10: 1852336226, ISBN-13: 978-1852336226)・和訳あり(一樂重雄・河原正治・河原雅子(共訳)「情報理論と符号理論」(シュプリンガー・ジャパン・ISBN-10: 443171216X・ISBN-13: 978-4431712169))
- J.H. van Lint "Introduction to Coding Theory (3rd ed.)" (Springer-Verlag, ISBN-10: 3540112847, ISBN-13: 978-3540112846)
- J.A. Buchmann "Introduction to Cryptography (2nd ed.)" (Springer-Verlag, ISBN-10: 0387207562, ISBN-13: 978-0387207568)・和訳あり(林芳樹(訳)「暗号理論入門―暗号アルゴリズム、署名と認証、その数学的基礎」(シュプリンガージャパン・ISBN-10: 4431713115・ISBN-13: 978-4431713111))
「十を知って一を教える」。
解法テクニックや知識断片の羅列・押付けに陥らない為には、
中学高校で学習する数学の内容をより高く広く深い立場から理解し、
数学全体での位置付けや他の事柄との関連を認識した上で、
その中の何を如何に教えるかを意識的に選択することが必要である。
アンケートや模擬授業を通じ、
具体的な授業の方法についても議論し、共に考える。
主な参考書
- 「数学の教育をつくろう」上野健爾・岡本和夫・黒木哲徳・野崎昭弘編
(日本評論社・数学セミナー増刊)
- 「数学受験術指南」森毅(中公新書)
- 「こんな入試になぜできない〜大学入試「数学」の虚像と実像」
上野健爾+岡部恒治編(日本評論社)
- 「数学力をどうつけるか」戸瀬信之(ちくま新書)
- 「数学的思考法〜説明力を鍛えるヒント」芳沢光雄(講談社現代新書)
- 「分数が出来ない大学生」岡部恒治・戸瀬信之・西村和雄編(東洋経済新報社)
- その他適宜。
コンピュータによる計算の原理を単純化したモデルで説明する。
数の表わし方・機械語・プログラム内蔵方式・論理回路・
純化されたコンピュータの内部などを話し、
コンピュータがどのように自動的に動き、どのように判断を行うかを説明する。
また、計算の理論・アルゴリズムの概念・計算量の理論の初歩を紹介し、
計算の可能性・効率について触れる。
本講義は「電子計算機概論I」(理工学部数学科)・
「計算機数学」(理工学部情報理工学科)の合併講義であるが、
数学科の「計算機数学」とは別の講義である。
主な参考書
- 和田秀男「計算数学」(朝倉書店・ISBN-10: 4254114427・ISBN-13: 978-4254114423)
- Micheal Sipser "Introduction to the Theory of Computation" (PWS Publishing Company, ISBN-10: 0534950973, ISBN-13: 978-0534950972), 太田和夫・田中圭介・阿部正幸・植田広樹・藤岡淳・渡辺治(共訳)による和訳あり
- 「計算理論の基礎 [原著第2版] 1.オートマトンと言語」(共立出版・ISBN-10: 4320122070・ISBN-13: 978-4320122079)
- 「計算理論の基礎 [原著第2版] 2.計算可能性の理論」(共立出版・ISBN-10: 4320122089・ISBN-13: 978-4320122086)
- 「計算理論の基礎 [原著第2版] 3.複雑さの理論」(共立出版・ISBN-10: 4320122097・ISBN-13: 978-4320122093)
基礎生物・情報実験・演習(情報理工学科クラス)
理工学部の全学生を対象に、
基礎的な生物学および基礎的な情報学を習得させる事を目的とする。
生物実験では、様々な生き物に直接触れながら体の作りを調べ、
刺激に反応する様子を観察することにより、その働きを理解する。
また、DNAや酵素等を抽出・解析することにより、
生命現象の物質的基盤をより深く理解する。
情報演習では、プログラミングの基礎を学ぶ。
コンピュータを動かすには、処理内容をプログラムとして記述することが必要である。
演習では、変数・型・条件分岐・繰り返し・配列・関数などのプログラムの要素、
構造、処理の流れを、実際にプログラムを作成・実行して理解する。
プログラミング言語にはC言語を使う。
この中の情報演習(7回)を担当する。
いわゆる「情報リテラシ」とは、しばしば「情報の読み書き能力」と言われるように、
(必ずしもコンピュータで扱う電子的な情報に限らない)「情報」に対して、
それを受信・処理・創出・発信する
総合的かつ基礎的な素養を意味する。
本授業では、本学の全学共通の必修科目として、
「情報」を扱う際の基本的な考え方を身に付け、
それを活用できるようになることを目標とする。
勿論、コンピュータを始めとする情報処理機器の操作を身に付けることも含むが、
単なるコンピュータ実習を目的とするものではないことを
注意しておく。
具体的には、演習を通じて、
コンピュータの基本操作・電子メール送受信・ウェブ閲覧
・エディタやワープロによる文書作成・表ソフトの利用
・文献検索・プレゼンテーション資料作成および実演
・Webページ作成・ネットワーク社会でのマナー・倫理・著作権
などの基本項目を学ぶ。
理工学概論II(安全と倫理)
現代社会において、安全と倫理は重要な問題である。
特に技術開発やその利用を主な業務とする理工系の人間にとって、
これらに対する認識は非常に重要である。
本講義では、これらに対する基礎知識について輪講で講義する。
この中から、2回を担当し、
情報化社会での安全な情報通信を支える数理技術の中から、
秘密分散・誤り訂正符号・暗号通信・電子認証などについて、
その基本的な仕組み・活用・裏付けとなる基礎数理を、実習を交えて紹介する。
数学特論3
(早稲田大学教育学部数学科・非常勤)
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Galois理論では、与えられた多項式に対して
その分解体のGalois群を求めることが第一の問題となるが、
次には逆に、与えられた有限群に対してそれをGalois群に持つ
体拡大・多項式の存在や、実際にそれを求めることにも興味が向く。
このような「構成的Galois理論」について、予備知識の補足を交えながら、
幾つかの手法の初歩を講義する。
一般的な理論に乗る部分もあるが、実際には扱う体や有限群の個性が強く影響し、
一筋縄でいかない所がある。
古典的な方程式解法理論に深く関わる所もあり、
特に実例を多く扱うことで「計算する数学」の面白さを思い出してもらいたい。
受講生の理解度に合わせて、適宜進度を見直すことがある。
主な参考書
- 中野伸「ガロア理論・その標準的な入門」(サイエンス社・SGCライブラリ27・ISSN 0386-8257)
- 足立恒雄「ガロア理論講義[増補版]」(日本評論社・ISBN-10: 4535601410・ISBN-13: 978-4535601413)
- J.P.Tignol, "Galois' Theory in Algebraic Equations" (World Scientific Publ.)
- J.P.Serre, "Topics in Galois Theory" (Jones & Bartlett Publ., Research Notes in Math. vol.1)
- Jensen, Ledet, Yui, "Generic Polynomials" (Cambridge University Press)
- その他「ガロア理論」と付く本はたくさん出版されているので、
書店・図書館などで自ら見比べて自分に合ったものを選んでもらいたい。
- また入学以来の各関連科目のノートを充分に活用されたい。
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