この授業では、 ∀∃を用いた命題の記述・証明、および複素数を使った解析学について演習を行う。 特に、 (実数を含む)複素数の数列や関数の収束発散を正確に論ずるための いわゆるε-δ論法に習熟し、 複素関数の微分と積分を学び、留数定理を利用した積分計算に習熟する。
この中から、「ε-δ論法演習」の7回(隔週)を担当する。
「この問題は計算機でも計算できないなぁ」 「君は実に…計算が下手なんだなぁ」 「そうじゃなくて計算できないことが証明できるんだよ」 「え?どゆこと?」
「計算」とは何か、「計算できるか/できないか」というような問いに対して、 数学では、「計算機が行なうこと」を「計算」と考え、 計算機が行なえることを「計算モデル」として定式化することによって 「計算」を定義し、明確に答えることを可能にしてきた。 本講義では、代表的な計算モデルを取り上げながら、 計算の理論・アルゴリズムの概念・計算量の理論の初歩を紹介し、 計算の可能性・効率について論ずると共に、 具体的な例として幾つかの基礎的な数理アルゴリズムについて触れる。
代数学の話題の中から、学部の授業では到達しないが、 大学院生としては知っているべき基本的な内容を選んで講義する。 内容は受講生の希望や予備知識などを踏まえて決めるが、 加群のホモロジー代数・有限群の線型表現などの基本事項を予定している。
「この方程式は平方根だけじゃ解けないなぁ」 「君は実に…方程式を解くのが下手なんだなぁ」 「そうじゃなくて平方根だけじゃ解けないことが証明できるんだよ」 「え?どゆこと?」
方程式の解法理論から生まれたガロア理論は、 現代では体の拡大の理論として定式化され、 さらに様々に一般化されて数学のあちこちに現れている。 本講義では、方程式の古典解法から始め、 体論の基礎事項の後に、体の拡大の理論としてのガロア理論を扱い、 最後にガロア理論を踏まえて古典解法を再訪する。
数学を学んでガロア理論を知らずば画竜点睛を欠く。さぁ君もいますぐ登録。
小学校の算数以来馴染みの深い「数」、とりわけ「整数」の振舞いについて、 様々な奥深い現象を紹介する。 剰余と合同式、ユークリッドの互除法による最大公約数の計算法、 連分数展開、方程式の解法理論の歴史、素数の概念の意義と見直しなどの話題に加え、 暗号など近年の情報化社会における応用などを通じて、 数理現象の探求が数理技術として活用されている様子にも触れる。 高校の「数学II・数学B」程度の予備知識を想定する。
「0.999…って大体1だよね。」 「大体ってなんだよ。ちょうど1だよ。」 「え?そうなの?」
実数全体の集合Rは多くの数学的現象の基本的な場であり、 ただ数が集まった集合であるだけでなく、 四則演算が出来るという代数構造、 大きい/小さいという順序構造、 近い/遠い・収束・極限という距離・位相構造を備えていることが重要である。 本講義の前半では、 より基本的な数である自然数から実数を構成する道筋を辿ることで 実数の基礎付けを行ない、 後半では、実数の基本的な構造の中でも特に距離・位相構造に焦点を当てて、 幾何学・解析学が展開する場としての実数の基本性質を講義する。 集合・写像・同値関係などの用語を用いるので、 「現代数学A」(或いはそれに準じる科目)を学んでいることが望ましい。
現在の社会では、日常的に接している商品やサービスの裏側で数学が応用されており、 また報道されているニュースの意味を正しく理解するためにも 基礎的な数学的な知識が必要である。 これらの内容は高校や大学の通常講義で学ぶ数学と深く関係しているものの、 より実用的であり幅広い内容に渡っている。 この講義では、現代社会に生きる人間が、 この様なさまざまな場面で必要となる数学的知識について、 専門的な内容に深入りし過ぎずに解説し、 社会に出たときに有用となる数学的教養を学ぶ。
この中から、導入の1回に加えて、3回を担当し、 現代の情報化社会での安全な情報通信を支える数理技術の例として、 秘密分散・誤り訂正符号・公開鍵暗号などについて、 その基本的な仕組み・活用・裏付けとなる基礎数理を、実習を交えて紹介する。