「卒業研究I・II」(情報理工学科・角皆担当クラス)連絡ページ(2023年度版)


説明会について

数学分野の合同説明会

まずはこの合同説明会に来て下さい。

研究室個別の相談会

まとまって話が出来ると効率的なので、 対面およびZoomによる相談会を下記のように設定します。 これ以外で個別に話をしたい場合には、電子メイルで連絡を下さい。

研究分野(整数論)について

整数論は文字通り整数の性質の解明に取り組む分野ですが、 整数の初等的な取り扱いに留まらず、 代数・解析・幾何など数学のあらゆる手法を用いて数の振舞いに迫る所に 醍醐味があります。 近年益々広く深い理論として発展している一方、 根本的な対象は整数という素朴なものであり、 実際に計算して実感でき、また実例を重んずるという特徴もあります。 近年は計算機が発達して実際に扱える範囲も急速に拡がり、 理論的な事柄の実例を具体的にどうやって計算するかという実効性の追求や、 多くの実例計算から様々な現象を観察し予想を立てるという実験的な側面も 益々重要になってきました。

また、情報化社会を支える基礎的な数理技術である暗号・符号などにも、 整数論的な数理現象が(不思議なほど)大いに利用されており、 応用面からも注目を集めつつあります。 特に近年では扱う数理現象も高度になり、応用研究の現場でも、 かなり本格的に数学を学んでいることが必要になっています。 実際、情報数理技術の研究者として企業の研究所など大学以外の研究機関で 研究をしている人の中にも、数学で博士の学位を取得している人も多いのです。 素朴と深遠・理論と計算・探求と実用が表裏一体となっている所も魅力の一つです。

当研究室について(研究分野)

整数論の中でも、 特に最近の研究分野は「構成的Galois理論」で、 例えば、与えられた有限群を分解体のGalois群に持つ多項式の 具体的な構成を目指しています。 歴史的理論的な背景は非常に深いものがありますが、 整数・有理数・多項式などを具体的に扱って計算することが重要で、 そこに幾何的な洞察や計算機による計算を両手の武器として切り込んでいく、 古くて新しい分野です。 個人的には抽象論だけでない「手触りのある数学」が好みです。

「卒業研究」では、整数論の基本的なテキストの講読から始めます。 上記のように代数・解析・幾何など数学のあらゆる手法を用いますが、 始めは参加者の好みも鑑みてそのうちの或る一面を選び そこから取り組んでいくことになりますので、 どの分野が好きな人も整数論の旗の下に集うことが出来ます。 数学の様々な分野が有機的に関連し響きあっている様子を、 その中で幾らかでも感じることが出来れば、と思っています。 とはいえ、中でも主に代数的な手法から入ることになろうかと思います。 計算機を用いた数学に興味のある人も歓迎します。 また、大学院進学希望者も歓迎します。 数学領域進学希望者のみならず、 情報学領域に進学したいが学部で基礎理論を固めておきたい、 という人も歓迎です。 セミナーは一緒に行ないますが、指導の重点が変わることになるでしょう。 希望者が多い場合は成績を基に決定されますが、 数学系科目を多く履修している人が望ましいと考えます。

「卒業研究」の目標

「卒業研究I・II」(角皆担当クラス)は、数学分野のゼミです。 数学分野のゼミでは一般に、毎週1回程度のテキストセミナーを通じて、 その内容をしっかり理解すること、 また「理解する」ということを体感すること、 自分が理解したことをきちんと伝えられるようになること、 を目標とします。 そして、一年間のセミナーの総まとめとして、卒業研究発表会に臨みます。 従って、位置付けとしては、 「毎週のセミナーが主、発表会(および卒論)が従」 と考えています。 春学期の始めのうちは、 テキスト講読の方法(準備・発表)についての指導にも重点を置きます。 卒研発表がテキストの内容のまとめだけではつまらないので、 秋学期に入ったら、出来れば具体的な問題・実例に取組んで計算・考察を行ない、 卒研発表会で発表できるよう指導したいと思います。 自分の興味に基づいて、取り組む問題を選べると良いと思います。

このような「数学分野の通常のセミナー」と異なる形態として、 特にテーマの希望が明確な場合には、 テキストセミナーを行ないつつ、 早い時期から課題学修を行なうことも考えられます。 例えば、GeoGebraのような対話的幾何学ソフトウェアなど、 数理現象を可視化するソフトウェアを用いて、 さまざまな数理現象について実験・観察・探求をしたり、 それを見せたり伝えたり教えたりするようなコンテンツを作成したり、 ということを主眼として、研究テーマを選ぶことも考えています。 実験・観察だけでなく、 現象を理解するための基礎知識やそこからさらに進む探求について、 テキストセミナーを並行して行なうこともあるかと思います。 しかし、テーマによっては効果的な指導が難しく、 通常の形態のセミナー以上に、 自主的・自律的・積極的・意欲的な取組みが必要になるでしょう。 いづれにせよ、この形態の実験・観察を主としたセミナーは、 余り経験のない試みなので、 ともに試行錯誤しながら進めることになります。 ここに書くべきことも定まっていませんので、 以下では「数学分野の通常のセミナー」について絞って詳述します。

「セミナー形式」とは

基本的にはテキストの内容精読が中心で、いわゆる「セミナー形式」で行ないます。 講読するテキストの分担範囲を決めて精読し、担当者が板書発表を行ない、 それに対して他の参加者が解からない所を質問して担当者がそれに答える、 という形式で進めて、テキスト内容の確かな理解を目指すものです。 簡単に言うと、参加者が交代に講師役となって講義を行なう形式です。 標準的には週1回(人数にも依りますが参加4名なら2〜3時間程度)のセミナーを行ない、 各人が少なくとも2週に1回程度のセミナー発表を行なうことになります。 (卒研発表会が近付いたら、準備のためにスクランブルで追込みに入ります。) セミナー以外では特に時間・場所の制約はありませんが、 セミナーのない日は次回に向けた準備を行なうことが必要なので、 セミナーを中心に一週間が回るようになるでしょう。

進め方に関する注意

毎週のセミナーに向けて、相当の準備をして臨むことが必要です。 準備とは、テキストを精読して理解する(少なくともそう努力してくる)ことです。

数学のテキストの読み方について

数学のテキストには数式・数学記号・専門用語が多く使われます。 数式・数学記号は言語であって、 多くの情報を簡潔に紛れなく伝えることが出来ます。 僅かな点も疎かにしては確かな理解が出来ないが、 きちんと読み解けば(原理的には)誰でも理解できる筈です。 専門用語もきちんと明確な定義があるので、 解からなくなったら定義に立ち戻ることにより、 確実に理解を繋ぎ止めることが出来ます。 また、論理の展開は厳密に行なわれるので、 「なぜそれが成り立つか」という理由を明確に理解することが必要ですが、 一方で、原理的には誰でも論理を追えるように書かれていますので安心して下さい。 そうでなければ論理展開にギャップがあると見なされます。 「俺はそう思わないけど、みんなそういうからそうだと納得しなきゃいけない」 ということは数学ではあり得ません。理由は必ず見付かるはずです。

そのように数式・数学記号・専門用語を用いて書かれた内容、 及びその主張が成り立つ理由を理解するのが、 数学のテキストを読むということであり、 その状態に向けてセミナーの準備を行なうのです。 と言っても、自分がその状態に達したかどうか、 初めは自分でも中々判らないと思いますし、 それに向けて具体的にはどうすればよいのか戸惑うこともあるでしょう。 そこで、一つのコツとして次のことを挙げておきます。 「言葉で書かれていることを数式で表現する」 「数式で表現されていることを言葉で説明する」 これが出来ていれば、 書かれている内容について或る程度は理解できたと言ってよいと思います。

使用テキスト

「初等整数論」「ガロア理論」や「代数的整数論」の 初歩的な所から書かれたテキストを選ぶ予定です:

他にも希望があれば応相談。 また、予備知識となる授業を修得している希望者に対しては、それを踏まえて、 代数的整数論・構成的ガロア理論の基本的なテキストを選ぶことも考えています。 こちらも応相談。

内容に関連する授業科目

一般に数学系の科目は全て関連していると言えますが、 中でも下記に挙げる授業を履修・修得していることが望ましいと考えます (必修科目は除いてあります)。 今年度までに履修・修得していない場合には、 ゼミと並行して4年次で履修することを強く勧めます。

その他の数学系科目の中では下記の科目も基礎的あるいは比較的関連するものです。