2000.12.21

アジアの都市インフォーマルセクターの現状とその可能性U


B日本のODAによる大規模プロジェクトが貧困層に与える影響の例(マニラ)

●ODAについて

ODA贈与借款(利子率が低く返済期間が長いもの)
財源贈与は税金、借款は厚生年金や郵便貯金
種類と実施機関
@無償資金協力は外務省
A技術協力は国際協力事業団(JICA)←外務省
B借款は海外経済協力基金(OECF)←経済企画庁。他に商品借款。
→海外経済協力基金と日本輸出入銀行(大蔵省)が統合して、国際協力銀行(1999.10.1)
(注)本来目的がまったく異なる。海外経済協力基金 (途上国の国造り)。日本輸出入銀行(国際的に活動する日本の企業支援 (プラント輸出に対する貸付け。その支払いに対する貸付け)及びそのた めの金融秩序な安定)
以上は二国間援助。他に世界銀行、アジア開発銀行、国際機関へ拠出する多国間援助。
特徴:借款の比率が高い。技術協力の割合が低い。
ODAを支える理論的支柱:近代経済学理論に裏付けら れた経済成長論。(つまり投資による経済成長論とtrickle down effect(パイが大きく なればしずくが落ちるようにこれが社会各層に行き渡る)の理論。

・1996年3月11日−14日のFact Finding Mission(現地調査)

  1. メトロマニラ環状5号線の高架橋建設:ケソン市エスコパ
  2. アンガット給水拡大計画による水路建設:ケソン市(ラメサダムからバララ)
  3. 国鉄通勤南線活性化事業:マカティ市南バンカル
  4. ニノイ・アキノ国際空港拡張計画による強制移転地:カビテ/ダスマリナス
  5. 沿岸無線整備計画による無線基地建設:タギッグ

・強制立退きについてのどのような原則があるのか

  1. フィリピンの国内法(不法占拠であっても1992.3月以前から住んでいる土地に関しては、居住の権利がある。)
  2. 1995年8月改訂:OECF『環境配慮のためのガイドライン』の一部に記載。
    『環境配慮のためのOECFガイドライン(第二版)』移転住民への配慮についての抜粋
    1. プロジェクトは、その計画策定段階で移転住民数が必要最小限になるように代替案の慎重な検討がなされたものでなければならない。
    2. 住民移転が発生するプロジェクトにおいては、影響を軽減するための計画が予め策定されていなければならない。その計画は、借入国によって移転住民の意向が十分聴取されたものでなければならない
    3. 住民移転に伴う影響を低減するための計画は、移転住民の移転後の生活、所得の回復を目的としたものでなければならない。
  3. 1990年6月:世界銀行『非自発的移住に関する業務指令』
  4. 1991年12月:OECD(経済協力開発機構)『開発プロジェクトにおける非自発的移住と再定住に関するガイドライン』(日本政府も承認)

Cカンボジア(プノンペン)の強制立退き(スライド)2000.3

※最近は、上記と並行して居住権についての意識も高まる。

居住権に関する最近の国際的認識

●「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)

・1966年に国連で採択。日本は、1979年9月批准。第11条は「相当な食糧、 衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての、すべての者の権利」 を認めている。

●1996年国連人間居住会議(ハビタットU)

・居住権(the right to adequate housing)承認。全会一致アジェンダ「すべて の人が適切な住まいを、すなわち健康で安全で権利を保障され、入手しやすく、 賄える範囲にあり、基本的なサービスや利便が整えられた住居を有し、そして居 住差別からの自由と保有条件の法的保護を享受する」

●「強制立退きに関する意見書採択」(上記社会権規約に関する委員会)1997年5月

「立ち退きによって個人がホームレスになったり、人権を蹂躙されるような ことがあってはならない。また立ち退きの犠牲者が自分の力によって必要な手段 をとることができない場合には、国家側はすべての適切な手段、そしてありうる 資材を用いて、代替住宅、再定住、生産可能な土地などそのケースに適した援助 を確実に行わなければならない。」


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