1)カラチのオランギ地区概観&OPPのやってきたこと
カラチのスラムは、マニラやバンコクと全然違っていました。マニラやバンコクは大都市の中にスラムが多数点在しているのですが、カラチは、カラチ市のまわりが、全部砂漠で、この公有地である砂漠に人々が不法占拠してカラチを大きくしていきます。だから、砂漠でよければ土地が一杯あるのです。僕が泊ったところは、オランギという地区で、その地区だけで、100万人の人が住んでいます。この地区は、バングラデッシュ独立(1971)以降、バングラデッシュから脱出してきて、カラチのまわりの砂漠に不法占拠した人達が中心です。
当初は、水道や下水の設備等なにもないので、ひどい生活環境だったようですが、1980年から、カラチの大学の建築学科出身の若者の有志5人が集まって、その地に入り、スラムの住人で意識ある人数人とグループ(OPP(オランギ・パイロット・プロジェクロ)というNGO)をつくって、建築や都市計画の専門性を活かしながら、スラムの人々が自分達で、下水設備を作っていく方法を開発して、その方法を広めたり、家づくりのための良質なブロックを安く自分達で作る技術や、安く家の屋根をつくる技術を開発して、広めたりすることによって、100万人いる地域全体の環境が今では、スラムと思えないほどよいものとなっています(カラチ中心街の大英帝国時代の旧市街などよりも衛生的で広々としている感じ)。パキスタンは政府が弱くて何も出来ないのですが、まるで、かわりに自分達で、地方自治体を作っているような感じで、私にはとても面白かったです。
そして、今や、カラチ中の他のスラム地域だけでなく、ハイダラバードやラホールなどパキスタン全土のスラムの人々がこれを真似するようになりつつあります。また、下水設備や都市計画だけでなく、今の彼らの関心は、住民の衛星プログラム、Fammily Planning,教育、Credit Porgramなど多岐に及んでいます。
ただ、少し、皮肉なことですが、ODAもNGO(特に国際NGO)も援助関係者は、今やパキスタンでは、OPPブランドと何らかの関係を持とうとして、よく訪問し、その対応が最近は多すぎて、スラムの人々の中にいる時間が減ってしまうとなげいていました。
2)OPPのスタッフについて
私には、5人の専門家の徹底した姿勢とスラムの人々との関係がも興味深かったです。というのは、5人の専門家は、きちんと大学教育を受けたパキスタンの社会におけるエリートですが、スラムの人々を上から援助するのではなく、対等に一緒に働くために、自分達の生活レベル(具体的には、NGOのスタッフとしての給料)をその地のスラムの人々が、なんらかの自営業をやって得ることの出来る収入とほぼ同じ額しかもらわないとあらかじめ意識的に選んでいます。
そうすることによって、そのNGOにスラムの人々をスタッフとして迎えても対等に、真に仲間として関われるし、また、スラムの人がそのNGOに参加することによって、スラムの他の住人との間の摩擦が生じることもなく、スラムの人々全体が、そのNGOだけは、自分達と同じ側にいると認めてくれているようです。その辺が他のNGOやODAやJICAなどとは決定的に違うようです。
また、OPPの人が言うには、最近ではよく世界銀行、アジア開発銀行、国連などが、10倍の給料を提示して、彼らの引き抜きに来るようです。その給料を一回もらったら、もう終わりだ!と言ってました。どうして、そのような選びが出来るのか、不思議な気がするくらいでした。また、その5人とスラムの住民である特に3人からなる中心的8人のメンバーのチームワークも見事で、とっても生き生きとしてます。5人のうち、3人はあえて独身生活で生涯この仕事にかけることを選んでいます。うち一人は女性で、彼女がDirectorでした。
3)OPPのスタッフのスラムの人々に対する姿勢
もう一つ印象的だったことは、OPPの人々のスラムの人々に対するセンスでした。つまり、OPPの人々は、スラムの人々がこれまでやってきたこと、彼等の技術、彼等の可能性など、つまり彼等自身を心から尊敬しているということです。最初から彼等を尊敬して、関わりを始めると、物事の見え方がかわるようです。先進国の援助の場合は、頭では、現地の人々を大事にと考えていますが、心の奥で、自分達の方が優れているという意識がどうしてもあるようです(その場合、どうしても価値観の押し付けになる可能性があります)。
例えば、下水設備についても、これまで、スラムの住民達がやってきた試みを尊重します。そうすると日本人の目から見ると、なんとなく雑然として、きちんとしたシステムにならないような気がしますが、そして、実際にアジア開発銀行や世銀は、これまで住民達が自分達でやった設備をまったく考慮にいれずに新たな、金のかかるシステムに作り直すことをすぐに考えます。しかし、それは、実際には動かないことが多いし(実例として、今年、かえって、下水が逆流しだして、人がその中で死ぬという事件が起こり、住民達は、ADBの作った設備を自分達で、埋めてしまっていた)、少なくとも、住民達に劣等感や無力感、依存心を植え付けていきます。
そもそもOPPの目的として、近代化された先進国のスステムを目指すのでなく、その地の人々が自分達で、自分達の生活を改善していくというプロセスそのものを目的にしているように感じます。だから、上に書いたような様々なプロジェクトをいろいろなスラムで行なおうとするときには、徹底的に、各スラムに住民達が今まで何をしてきて、何がうまくいき、何が失敗してきたのか、ということを実際に一人一人とあって話して、そのような関わりの中で始めていきます。
(以降、文章になってなくてメモ書きのままで済みません)
4)オランギスクール
(100万人のオランギ地区に公立学校は、70校、しかも先生がいないことが多い。)
スラムの子供達の状況:3つの理由で学校にいけない。
@学校がない。
A学校に払うお金がない。
B朝から夜まで働いている。
スラムの若者のうち少し教育を受けている人々が自分達の周りの子供たちのために何かしたい。one room school。OPPは彼等に融資。
3段階
@Setup:黒板など。約一万円
Ainstitutional shape(屋根や部屋の区切り)5万円
B政府への登録。同時に、先生としてのskill up,教材等の技術的援助。
夜間学校も多い。子供たち(6歳くらいから)は朝8時から夜6時まで仕事。夜6時半から9時半までNight Shool.授業料は、月50-100円が払える限界。
5)専門性
・専門家の役割も重要。代替案を出せる。はじめて、世界銀行のプロジェクトを変更させることに成功した。
・真の専門性が重要。彼らの可能性を最大限に生かしたまま技術をいかに伝えるか。
・最初、OPPでは専門家として大学生をスラムに連れてこようとしたが、なかなかエリートは関心を示さない。それよりも、スラムの若者を育てた方が簡単であると認識し、最近ではスラムの若者に専門的技術を伝えようとしている。