<2013年秋学期 紹介文>

 数値が何もかも表せるかのような現代の社会で、教養は再び見直されるべきものではないでしょうか。受験のテストの点数、偏差値、TOEICの点数、人間性だって点数化されることがあります。しかし学ぶことは必ずしも点数化する必要ないのだと思います。「あっ!このテーマに興味があるかも!」、これが始まりです。この途切れてしまいそうな小川のような細い流れが知識欲の泉に注ぎ込まれます。この泉の中には点数は浮かんでいません、かわりに膨大な数の漢字、ひらがな、アルファベットがひしめき合っています。つまり知識の根源は本です。おたまじゃくしのような小さな記号の集合体で成り立つ本は私たち人間に人格や品位を与えてくれます。それは新しい世界への入り口でもあります。

 木村ゼミ「ドイツ社会研究」では本を読むということを大切にしてきました。単純なようで複雑な作業です。学期の前半では"原発"という共通テーマを設定し、議論し考察してきました。時にはドイツ語の文献と格闘し、時にはイグナチオ教会で行われていた原発に関する講演会に参加しました。そして仕上げとして各自ブックレポートを紹介しあい、ドイツの原子力反対運動・現在のドイツの脱原発の状況への理解を深めました。今年度は前期まで教授が在外研究で不在だったため、後期だけの開講で少人数でしたが、「三人寄れば文殊の知恵」、私たち学生四人+素晴らしい教授で意見を出し合いました。

 学期の後期には、各自興味のそそる研究テーマを見つけそれについてのプレゼンテーションを行いました。
テーマの内容は、
「ユダヤ人迫害をドイツ国民はどこまで知っていたか」
「ドイツにおける女性社会」
「エコライフ――ドイツのデポジット制度-―」
「環境共生都市について――ドイツの取り組み、日本の取り組み――」です。

 前提としては「ドイツ社会」に関することでした。なぜ外国について学ぶ必要があるのかと眉毛しかめて口をへの字に曲げているそこのあなた、「ドイツ」を学ぶことは日本にとって有益なのです。ドイツも日本も第二次世界大戦で敗北しその後驚異的な発展を遂げ、今や世界のリーダー的地位にいます。つまり、例えば原発問題や女性の社会進出など現代抱えている問題も似たり寄ったりなものばかりなのです。さらにドイツは環境の面で日本とは異なる価値観を大切にしていて、工業先進国でありながら、大量生産・大量消費型の日本とは異なる側面が見られます。ドイツは地理的にはるか遠くに位置しているので、ゼミ研究のために気軽に行くことはできません。しかし「本」という知識の泉、新しい世界の入り口を介することで、ゼミ参加者は日本社会に貢献できる人物になれればと、ゼミに参加している・・・・・・にちがいありません。(文責:S.M.)