徒然物草(2011年5月)
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大相撲五月場所は一週間ほど前に終わって、少々遅くなったが、
やはり前代未聞の場所であるので書き留めておこう。(2011-05-29)
- 今場所は殊更に「技量審査場所」と呼ぶ向きがあるが、
本場所は元々技量審査の場であって、番付の昇降を争うもの。
その結果
(横綱推挙・大関昇進などの際には明示的に意識されるように、本来は相撲内容も含む)
により、番付を作成し、それを看板にして興行を打つものである。
(囲碁のプロ棋戦に詳しい方であれば、以前あった大手合を想起すればよかろう。
あれはスポンサー無し(一時期はあったが)の内部棋戦で、
それによって段位を決めていたのだった。)
であるから、今場所はどう見ても正しく「本場所」なのである。
それを敢えて「技量審査場所」と言い立てるのは、
それが解かっていないだけなのかもしれないが、
むしろ解かっている解かっていないじゃなくて、
単に言い立てたいだけの「ためにする」言い方なんじゃないか。気に喰わないね。
- 一番大きな影響があったのは十両の取組が半分くらいになってしまったことだが、
この「十両」(正式な呼称は「十枚目」)という地位の孕む問題が、
今回の直接の原因であるように思える。
元々あったのは幕内とそれ以外との違いのみであって、
十両は幕内以外の地位の一つである。
その幕下の上位十枚目までを関取相当の待遇にしたので「十枚目」と呼ぶ。
番付を見れば一目瞭然で、幕下と同じ段に書かれているのが経緯を表している。
ベテランの幕内力士が怪我や不調で幕から落ちたときに、
すぐ幕下扱いでは引退に追い込まれる場合もあろう。
相撲界を支えた人気力士が簡単に止めざるを得ない状況は辛い。
その緩衝帯としての機能は必要だろうと思う。
一方、下から上がってくる若手力士にとっては、一場所15日間を取り切り、
また、関取としての行動を身に着けるための準備期間である。
いづれにせよ長くいるべき地位ではないのだ。
今回の騒動で角界を去った力士の多くは、
残念なことにこの地位に長く留まることを優先した力士であって、
中には上がってきたときに大いに期待した力士もいたが、
気付けば長いことくすぶっていて相撲っぷりも冴えない力士が多く、
正に今回の騒動で「そういうことね」と納得してしまうような面々であった。
見る側からすれば要りません。
その代わりに来場所は幕下から活きの良い所が大勢上がってくるので、
これで活性化するでしょう。
但し、暫くしてまた似たような状況になってしまってはいけない。
十両は長くいるべき地位ではないことを制度面で明確にすべく、
待遇を変えて、下記のようにしてはどうだろうか。
要は本来の形に見直せ、ということである。
- 十両は関取待遇であるが、給料は幕内とは大差にする。
- 但し、新十両になると関取として用意すべきものが沢山あるので、
新十両から数場所(1年程度が適当か)の間は一種の仕度金を支給する。
- さて場所の結果だが、白鵬が13勝2敗で優勝、7連覇。
番付の権威を守った形である。
今の状況の中で、現役力士の先頭に立つ重責を担っているのは立派としか言い難い。
- 大関陣はまあまあ。
上位では、琴奨菊は関脇で連続二桁、いよいよ来場所は大関昇進を懸ける場所になる。
稀勢の里は何とか勝越しに漕ぎ着けただけとは不満だが、例によって気負い過ぎか。
鶴竜の小結での12番は大したものだが、
幾ら何でもこれで来場所も小結に留め置きでは気の毒過ぎる。
発揮した技量を適切に評価してこその技量審査であって、
関脇を3人(以前で言う張出)にして鶴竜を関脇に昇進させるべきである。
それで東筆頭で11勝の豪栄道と西6枚目で12勝の栃ノ心とが東西の小結で、
丁度良いではないですか。
- 新入幕で一場所分待たされた魁聖が初日から9連勝を含む10勝で敢闘賞。
佐田の海以来とか、10日目も勝っていれば大鵬以来だったとか、
記録の話になると昔の力士の名前が出てくるのも楽しみで、
それを思い起こさせてくれる活躍は実に立派。
実力を蓄えて待った甲斐があったというものだろう。
- という訳で、来場所は重石が取れて大挙上がってくる新十両力士に大いに期待。
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近所の酒屋で
「一ノ蔵」の蔵元さんが試飲即売会。
宮城は地震があると言われていたので相応の対策を取っていたこと、
それで本震の後も早い時期に出荷態勢を整えられたが、
そこに余震が来て出荷出来なくなったのが精神的に応えたこと、
いつも納入している県内の酒屋さんの中にはまだ連絡の取れない所もあり、
営業が再開していないお店も多いこと、
それで普段は地元にしか卸していない銘柄も持ってきたこと、
被災地の避難所では家族内などで飲むのはともかくとして、
正直言って大勢で宴会を出来るような状態ではないけれど、
だからと言ってそれ以外の地域でも自粛して飲まずにいるよりも、
飲める人は飲んで経済を回してもらいたいこと、
また「ササニシキ」「ひとめぼれ」「蔵の華」などお米のこと、
など、貴重なお話を伺いながら、3品目を試飲。
せっかくなので、
普段は県内でしか飲めないというササニシキで作った純米大吟醸を購入。
飲んで支援だ、がんばっぺ宮城。(2011-05-08)
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