1961年に上智大学に理工学部が設立された際,東京大学理学部化学科から本学の化学科の教授に着任された南英一先生が上智大学における地球化学の礎を築かれました.
南先生は地球化学の歴史に名を残す,日本における地球化学の父と呼ぶべき先生です.
南先生は上智大学着任直後より,活火山である群馬県の草津白根山を対象とした地球化学的研究を開始しました.
以降,上智大学では今日まで「草津白根山の地球化学的研究」を代々受け継いでおり,現在も毎年数回の現地調査を行って,途切れることなく50数年の観測データを取り続けています.
また,新たな分析手法が開発されたり,新たな発見があった場合に,過去の試料をもう一度分析することができるように,これまでの調査で採取された種々の試料(岩石,温泉水,河川水など)が50年以上にわたり管理・保管されています.
上智大学が草津白根山の研究を始めてからすでに40数年が経ち,その間,草津白根山では2回の水蒸気爆発(噴火)がありました. 上智大学による地球化学的な火山研究は,この噴火予知に大きく寄与し,結果として「化学的火山噴火予知」が社会的に認知されることになりました.
しかしながら数千年から数万年のタイムスケールの火山活動からすれば,我々の観測はその歴史のほんの一瞬を切り取ったに過ぎません. これからも現地調査を続け,現地に現れる様々な火山活動に伴う自然現象を学び続け,さらなる火山活動の理解と噴火予知に努める必要があります.
我々,木川田研究室の研究対象は火山にとどまらず,種々の関連分野へと広がりを見せていますが,上智大学の地球化学の歴史的背景に鑑み,あくまでも実地での調査と観測を重視しています.自然を見ずに自然現象を語ることはできません.いくら理論やモデルを組み上げても,それが観測事実として立証されなければ仮説の域を出ることはなく,自然現象を解明したことにはならないと考えるからです.
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上智大学理工学部物質生命理工学科
木川田研究室