2001統計力学II Q&A-4 (11/9回収分)
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注)読みやすいように文体を多少改変・統一してあります。
良問(?)には苗字を公開してありますが、困る人は申し出て下さい。
また、苦情や不満についてのコメントを公開する場合は必ず匿名としますので、
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*できるだけ具体的に書いていただけると対応・補足できます。
例:「よくわからなかった」⇒「二重和の取り方で、なぜ束縛条件が外れるのかわからなかった」
Q's
- ジャケットを机の上に置くと黒板の下の方が見えないので置かないで下さい。
- 有限温度でフェルミ面の付近がぼやけるというのはエネルギーの高いところで
粒子がぎっしりつまっていないということですか?
- FermiエネルギーeFがkF2に比例していることが特殊ならば何かそれにより
有利なことがあればいいのに。
- 三次元の極座標表示がどうして k2dkdjk
dcosqk
になるのかわかりません。
k2dkdjk
sinqkdqk
ではだめですか ?
- スピン(内部自由度)というものが厳密にはいまいちよくわかりません。(加藤)
- 最低限覚えておかねばならない数学の公式は?
- どれが一番基本の公式なのか、わかりずらい。
- (調和振動子の状態密度を無理矢理考えたときに)どうしてhwが小さいとき
だけ意味があるのか?(山田、乙黒)
- T=0のときのエネルギー(フェルミエネルギー)というのがぴんときません。
どういうエネルギーを持っているのですか?
- ほんの一部の粒子しか比熱に寄与しないということが量子力学的な説明(排他律)
でよくわかった。
- 状態密度を求めるときに乗ずる値(スピンの分)はいつも2(=2S+1)でよいのか?
- 「状態密度とはヒストグラムである」、という説明がありましたが、ヒストグラムって
なんですか?
- 状態の和を計算するとき出てくる(2p)-3V
d
d3kで、係数(2p)-3Vがどうして出てくるの
かわからない。
A's
- ジャケットを机の上に置くと黒板の下の方が見えないので置かないで下さい。
以後、気を付けます。 <<<TOP
- 有限温度でフェルミ面の付近がぼやけるというのはエネルギーの高いところで
粒子がぎっしりつまっていないということですか?
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その通り。是非、お友だちにも説明してあげてください。よろしくお願いします。
- FermiエネルギーeFがkF2に比例していることが特殊ならば何かそれにより
有利なことがあればいいのに。
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Fermiエネルギーに限定したものではなく、単に運動エネルギーが運動量の
自乗に比例していることが特殊だということです。
比例していない例としては、電磁波E=ckが一番わかりやすいでしょう。
その他、固体内の格子振動(フォノン)E~sin
k もそうですし、固体内の自由電子
も、Bragg散乱の影響で、ホントに自由な電子に比べてエネルギーの式は
変わってきます。
- 三次元の極座標表示がどうしてk2dkdfkdcosqk
になるのかわかりません。
k2dkdfkdqksinqk
ではだめですか ? <<<TOP
OKです。dcosq=sinqdq
です。
- スピン(内部自由度)というものが厳密にはいまいちよくわかりません。
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自転だとか、元来持っている性質とか、いろいろ言われますが、厳密には、
相対論を取り入れた量子力学で四元ディラック方程式から導かれます。
- 最低限覚えておかねばならない数学の公式は?
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スターリングの公式、留数定理、ラグランジュの未定定数法
でしょうか。
(テイラー展開とか、部分積分とか、フーリエ変換は常識としています)。
- どれが一番基本の公式なのか、わかりずらい。
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基本は、
イ) ボルツマンの公式と、
ロ)
ミクロカノニカル、カノニカル、グランドカノニカルにおける
確率分布と分配関数の表式
でしょうか。
次に、
ハ)
自由粒子の状態の和の取り方(波数でもエネルギーでも自在に出来るように)
その次に、
ニ) 温度とエントロピーの関係(ミクロカノニカル)
ホ)
ヘルムホルツの自由エネルギーと分配関数の関係(カノニカル)、
ヘ) フェルミ分布関数とボーズ分布関数の表式
ト) フェルミ波数の表式
チ) PVと大分配関数の関係(グランドカノニカル)、
などが挙げられます。
- (調和振動子の状態密度を無理矢理考えたときに)どうしてhwが小さいとき
だけ意味があるのか? <<<TOP
絶対に意味が無いと言うわけではありませんが、「密度」というからには、
ある程度、ぎっしり詰まっていてくれないと意味がないわけです。
固体や気体の密度を定義する際には、原子がある程度、ぎっしり詰まっていて
どこをとっても大体同じ密度になっているということが前提条件です。
穴開きチーズのようにスカスカでは密度は定義しにくいのです。
(場所によって密度が異なるから)。
状態密度でも、あまり準位がすかすかだと(hwが大きい場合)、エネルギーの
値がほんのわずか違っても、そこにたまたま準位が当たっている場合とそうでない
場合とで状態密度が違ってしまうのです。
- T=0のときのエネルギー(フェルミエネルギー)というのがぴんときません。
どういうエネルギーを持っているのですか?
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絶対零度でも「大きな運動エネルギー」を持っているのです。
普通の金属では、フェルミエネルギーが大体10万度程度なので、
EF = 100000 (K) = 10000/kB
(erg) = mv2/2
より、vはおよそ光速の1%というとてつも無い速さとなります。
金属中の自由電子は、パウリの排他律のために、たとえ絶対零度でも
非常に大きな運動エネルギーを持っているのです。
もちろん、全ての自由電子が、大きな運動エネルギーを持っているの
ではなく、ゼロから、フェルミエネルギーまで、広く分布しています。
また、方向も色々なので、すべての電子について平均するとゼロ
になってしまうため、フェルミエネルギーを、エネルギーとして取り出すことは
残念ながらできません。
- ほんの一部の粒子しか比熱に寄与しないということが量子力学的な説明(排他律)
でよくわかった。 <<<TOP
良かったです。他の人にもどんどん教えてあげてください。
- 状態密度を求めるときに乗ずる値(スピンの分)はいつも2(=2S+1)でよいのか?
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自由電子の場合なら、いつも 2でOKです。
講義でも注意しましたが、状態密度自身の表式にその2が既に含まれていないか
どうかをいつも気を付けて下さい。
- 「状態密度とはヒストグラムである」、という説明がありましたが、ヒストグラムって
なんですか? <<<TOP
来年の2月頃、試験の成績分布が掲示されます。それがヒストグラムです。
- 状態の和を計算するとき出てくる(2p)-3V
d
d3kで、係数(2p)-3Vがどうして出てくるの
かわからない。 <<<TOP
箱の中に閉じ込められた自由粒子の波動関数を、周期境界条件で求めると、
となり、ここから、
が得られます。
注意)このように、三乗とか、体積、という係数は、求めようとしている系が三次元
であることに由来します。平面内を運動する電子とか、ミクロに細い針金の中を
走る電子などを考えるときは、係数も違ってきます。平面内では、自乗と面積です
し、一次元なら、一乗と長さです。
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