2001統計力学II Q&A-6 (11/30回収分)
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注)読みやすいように文体を多少改変・統一してあります。
良問(?)には苗字を公開してありますが、困る人は申し出て下さい。
また、苦情や不満についてのコメントを公開する場合は必ず匿名としますので、
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*できるだけ具体的に書いていただけると対応・補足できます。
例:「よくわからなかった」⇒「二重和の取り方で、なぜ束縛条件が外れるのかわからなかった」
Q's
- ゾンマーフェルトの公式で、有限温度(T
>0)なのに、微分の項をm(T)=eFとして
よいのはなぜですか。 (梅田) <<<TOP
- パウリ磁化の計算や、mの磁場依存性の計算で、f
(e)とD(e)の引数の「片方」だけ、
e±mBH
のようにずらすのはなぜですか。両方ずらしてはだめなのですか
(田中) <<<TOP
- パウリ磁化の計算や、mの磁場依存性の計算で、f
(e)とD(e)のどちらの引数
をずらすのか決まりがあるのですか
(松井、藤田)
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- パウリ磁化の計算で、どの低エネルギー部分の電子の磁気モーメントが、
↑と↓とでキャンセルしているのか下図で詳しく示して欲しい。(富沢)
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- パウリ磁化の計算で、磁場で↓と↑の電子のフェルミ面がずれると不安定
なので、一部の電子のスピンの向きが変わる(上図で斜線を引いた部分)
と習ったが、なぜ、スピンの向きが変わるとエネルギーが下がるのか?(大久保、長田)
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- パウリ磁化の計算で、状態密度が、原点から↑と↓の両方とも右にずれて
いるが、原点の周りで対称的に左右にずれるのではないか?(梶田)
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- 磁場が大きい場合のm(H)の計算方法を教えて欲しい。(乙黒)
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- ツェータ関数の任意の引数に対する値、例えばζ(3/4)などを解析的に
求められますか?(石川) <<<TOP
- 化学ポテンシャルを言葉で簡単に説明すると何ですか。(久保)
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- 以前の話ですが、有限温度でのフェルミ分布関数の説明で、下図で、AとBの
面積の差が化学ポテンシャルのずれということでしたがはなぜですか?
粒子数が変わってしまうのですか?<<<TOP
- ニ準位系の問題は、局在電子スピンに磁場をかけた時の振る舞いと同じですか
(増岡) <<<TOP
- ゾンマーフェルトの公式が未だによく理解できない。<<<TOP
- ヘルムホルツの自由エネルギーでスピンが1/2だと、状態eiが二つずつ
あると習いましたがなぜですか?<<<TOP
- レポートの提出状況を教えて欲しい。今からでも間に合いますか?<<<TOP
期末テストで頑張ります。
期末と中間の配分比を教えて欲しい。
A's
- ゾンマーフェルトの公式で、有限温度(T
>0)なのに、微分の項をm(T)=eFとして
よいのはなぜですか。 (梅田) <<<TOP
二次微分の項は、∝f "(m(T
))×T2 ですから、既に温度が2次で入っています。
よって、化学ポテンシャルの温度によるずれを代入しても、ずれの部分は、4次の
項になってしまうので、微小量として無視してよいのです。
(講義でも説明したはずなのですが、うまく伝えられなかったようですね)。
- パウリ磁化の計算や、mの磁場依存性の計算で、f
(e)とD(e)の引数の「片方」だけ、
e±mBH
のようにずらすのはなぜですか。両方ずらしてはだめなのですか
(田中) <<<TOP
結論から言うと、両方ずらしてはもちろんだめです。
講義での説明が足りなかったと反省しています。
まず、下の図で、磁場がかかると状態密度は、ずれます。
次に、これでは全エネルギーが高くて不安定なので、下向き方向の一部のスピン
(斜線を引いた部分)が反転して、上向きになります(磁場方向を向く)。そして、
のようになるわけです。よって、状態密度はずれて、フェルミ分布関数はずれない、
というのが、ホントの正解です。しかし、下の質問にもあるように、どちらをずらしても
OKです。
- パウリ磁化の計算や、mの磁場依存性の計算で、f
(e)とD(e)のどちらの引数
をずらすのか決まりがあるのですか (松井、藤田)
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正確には、上の質問の回答にもあるように、状態密度をずらして、フェルミ分布関数
はずらさないのが正しいのですが、変数変換すれば両者は同じになるので、結果は
等しく、どちらでもOKなのです。
- パウリ磁化の計算で、どの低エネルギー部分の電子の磁気モーメントが、
↑と↓とでキャンセルしているのか下図で詳しく示して欲しい。(富沢)
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斜線でハッチされて「いない」部分です。右図のようにずらさないで書くと判りやすい
かも知れません。ところでゾンマーフェルトの四次の展開項は出ましたか。
- パウリ磁化の計算で、磁場で↓と↑の電子のフェルミ面がずれると不安定
なので、一部の電子のスピンの向きが変わる(上図で斜線を引いた部分)
と習ったが、なぜ、スピンの向きが変わるとエネルギーが下がるのか?(大久保、長田)
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磁場の方を向いた方がエネルギーが低いからです。
講義でも言いましたが、ちょうど、方位磁石が、北の方を向来たがるのと同じです。
- パウリ磁化の計算で、状態密度が、原点から↑と↓の両方とも右にずれて
いるが、原点の周りで対称的に左右にずれるのではないか?(梶田)
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おっしゃるとおりでございます。横軸の原点を適当にずらしたと思って下さい。
(縦軸の軸が立っているところがe =0ではないと思って下さい)。
- 磁場が大きい場合のm(H)の計算方法を教えて欲しい。(乙黒)
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注意深く計算を確かめたわけではないので、ちょっと自信は無いのですが、、、
まず状態密度を二次までテイラー展開して、
粒子数の積分に代入すると、二回微分の項だけ残り、
となるので第二項にゾンマーフェルトの近似を適用すると、
となります。
ここで、右辺のN(H)は粒子数で、ホントの定数です。左辺のN(H=0)ですが、
ここに、磁場が無い場合の粒子数の表式を代入して、化学ポテンシャル
について解けばOKです。第二項の、状態密度の微分や三次微分の式
に入っているmは、=eF
としてOKです(ずれは高次の項となるため)。
続きは自分やって見て下さい。 <<<TOP
- ツェータ関数の任意の引数に対する値、例えばζ(3/4)などを解析的に
求められますか?(石川) <<<TOP
残念ながら求められないと思います。
計算できるのは、せいぜい、偶数の場合の値(2でπ2/6、4で、π4/90など)です。
ただ、いろいろな性質や数値計算による結果は、かなり詳しい調べられているので、
知りたければ、とりあえず、岩波の数学公式集III(第二章ツェータ関数)などを見て下さい。
- 化学ポテンシャルを言葉で簡単に説明すると何ですか。(久保)
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その状態への「居やすさ」とでも言っておきましょうか。
講義では、「講義の面白くなさ」だと言う説明をしたのですがいかがでしたでしょうか?
(面白くないということはmが高くて、粒子数(学生数)が減る)。
- 以前の話ですが、有限温度でのフェルミ分布関数の説明で、下図で、AとBの
面積の差が化学ポテンシャルのずれということでしたがはなぜですか?
粒子数が変わってしまうのですか?<<<TOP
いいえ違います。私の描いた絵は、下図のように、フェルミエネルギーを
中心にしています(一般の温度での化学ポテンシャルを中心にしているのでは
ありません)。よって、温度が変わると、AとBにずれが生じてしまうので、粒子数
を一定にするために、化学ポテンシャルが、eFからずれるのです。
- ニ準位系の問題は、局在電子スピンに磁場をかけた時の振る舞いと同じですか
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同じです。だから二準位系の話は応用範囲が広くで非常に大事なのです。
一見、適用できないと思われる対象(たとえば調和振動子)でも、温度が非常に
低い場合は、近似的に適用できるのです。
- ゾンマーフェルトの公式が未だによく理解できない。<<<TOP
Diracのデルタ関数の公式で、
を思い出して下さい。このデルタ関数が、少しぼやけたもの
(実際、
f '
(x)
を描いてみればすぐにわかるように、デルタ関数が少しぼやけたような
山型になっています)
になったとき、どうなるか、というのが、ゾンマーフェルトの公式です。
- ヘルムホルツの自由エネルギーでスピンが1/2だと、状態eiが二つずつ
あると習いましたがなぜですか?<<<TOP
スピンの大きさ | S | が1/2の場合、状態は、SZ=+1/2とSZ=
-1/2の二つあるからです。
- レポートの提出状況を教えて欲しい。今からでも間に合いますか?<<<TOP
期末テストで頑張ります。
期末と中間の配分比を教えて欲しい。
レポートの先着制の取りやめについては既に大分前にwebでアナウンスされています。
期末とか中間とか、まるで高校生や中学生みたいなのですが、、、、。
基本的に、成績は年明けの期末テストで採点されます。合格点に達しなかった
人のみ、中間テストと、レポート、出席、ノートテーク等が考慮されます。
これは講義でもwebでも、既に「何回も」説明しています。
ですから、中間テストで不安になった人は、レポート、出席(有意なコメントを
書いていないと意味がありませんので悪しからず)、ノートテークに心配り
して下さい。断言しても良いですが、中間テストが出来なかった人は、絶対に
期末テストの問題は出来ないと思います。