2001統計力学II Q&A-7 (12/07回収分)
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注)読みやすいように文体を多少改変・統一してあります。
良問(?)には苗字を公開してありますが、困る人は申し出て下さい。
また、苦情や不満についてのコメントを公開する場合は必ず匿名としますので、
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*できるだけ具体的に書いていただけると対応・補足できます。
例:「よくわからなかった」⇒「二重和の取り方で、なぜ束縛条件が外れるのかわからなかった」
Q's
- 前回の復習で、磁化M〜磁場の方向を向いている数×磁気モーメントの大きさ
と書いてありましたが、(磁場の方向を向いている数−逆を向いている数)では?(梶田) <<<TOP
- 「理想気体=相互作用の無い粒子系」ということが何回か出てきたが、そもそも
相互作用とはどういうものなのか。(三宅) <<<TOP
- 一つのレポートに数日かかるので、統計力学のレポートだけに追われてしまい
他の勉強が出来ません。 <<<TOP
- 光子の自由度のところで、m=0であるあから一つ自由度が減る、
というところがわかりにくかったです。 (藤田) <<<TOP
縦波は質量ゼロだと発生し得ないということが印象に残った。(赤坂) <<<TOP
- ボースアインシュタイン凝縮の臨界点とは、有限エネルギー(e
>0)の全占有数Nfを
一定に保てなくなる点、と伺いましたが、Nf
(m)がゼロになる温度と考えて良いの
ですか。(富沢) <<<TOP
- ボース粒子系では、低温(b
→∞)で、exp(b
(e i
-m ))=∞となって、
粒子数の和は全部ゼロになるはずなのに、どうして、初項exp(b
(e 0
-m ))
だけがどんどん大きくなれるのかわからない(中村)
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- ボースアインシュタイン凝縮の臨界温度以下での凝縮粒子数の温度変化
の式の導出がわかりにくい。(松井)
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- ボソンの場合、m<0
ということは、前に出てきたたとえで言うと、「授業の
つまらなさ」がとても小さいから、粒子は、とてもおとなしい状態となるの
でしょうか?(大久保)
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- 光子だと化学ポテンシャルmが一定=0という理由がわからなかった。(松浦)
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- ボソンの場合、有限温度における有限エネルギー状態の占有数を求めるとき、
D(e=0)=0
として良いのかわからない。(野村)
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- ボソンの場合、有限温度における、有限エネルギーの占有数Nfを
計算するとき、
として、厳密には、積分範囲にゼロは含まれないがD(e=0)=0
なので単純に0〜∞の積分として良いということですか?(梅田)
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- ボソンとフェルミオンの場合で、m
と、eの関係、そしてそれぞれの温度
依存性を整理して欲しい。(野村)
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- ボソンのmの説明で下図が示されたが、負のエネルギーにも
粒子が存在しているのですか?(長田)
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- ボースアインシュタイン凝縮はフェルミ粒子だと起きないのですか?
(斎藤)
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- (来週の内容予告で出た、固体の比熱で)振動を粒子と見る意味が
よくわかりません。(石川)
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- 4Heや3Heが、それぞれフェルミオンだとかボソンだというのは
どこから判るのでしょうか(浅原)
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電子、陽子、光子などの素粒子が、フェルミオンかボソンかというのは
わかりましたが、一般的な気体分子である水素やヘリウムはどうなのでしょうか?(田中)
- ボースアインシュタイン凝縮による面白い物理現象はあるのでしょうか(加藤)
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- 「ボソン」と「ボース粒子」は同じものを指すのですか?
それとも使い分けがあるのですか?(同様にフェルミオンとフェルミ粒子)
(佐藤)
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- 超越方程式の意味がわからないです(橋本)
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超越方程式は解析的に解くとどうなるのですか?(濱崎)
- ツェータ関数ってわかりません。(加藤) <<<TOP
ツェータ関数はどういう性質を持っているのですか?(柳沢、久保、三宅)
ツェータ関数を導入すると何か便利なことでもあるのですか?(乙黒)
A's
- 前回の復習で、磁化M〜磁場の方向を向いている数×磁気モーメントの大きさ
と書いてありましたが、(磁場の方向を向いている数−逆を向いている数)では?(梶田) <<<TOP
そのとおりでした。いつも厳しいチェックをありがとうございます。
- 「理想気体=相互作用の無い粒子系」ということが何回か出てきたが、そもそも
相互作用とはどういうものなのか。(三宅) <<<TOP
相互作用とは、粒子同士や、ポテンシャルが粒子に及ぼす力のことです。
既に知っている例としては、
・クーロン相互作用
・磁気双極子−双極子作用
・重力
・剛体球の衝突(半径×2以内には絶対に近づけない)
があるでしょう。量子力学的な相互作用としては、
・交換相互作用
というものがあります。これはスピンの方向に依存したクーロン相互作用で、
みかけは磁気双極子−双極子相互作用に似ていますが、圧倒的に大きな
ものです。
- 一つのレポートに数日かかるので、統計力学のレポートだけに追われてしまい
他の勉強が出来ません。 <<<TOP
全てのレポートを一つあたり、数日で出来たのであれば、かなり優秀なのでは
ないでしょうか。レポートには、難問は一つもありませんが、計算に時間がかか
るものが多いです。
統計力学は、必修科目で、かつ、量子力学と並んで物理の中心の科目なので、
「統計力学や量子力学に追われている状況」は、正しい状況である、と私は思
うのですが、、、、。
- 光子の自由度のところで、m=0であるあから一つ自由度が減る、
というところがわかりにくかったです。 (藤田) <<<TOP
縦波は質量ゼロだと発生し得ないということが印象に残った。(赤坂) <<<TOP
二つ目のコメントが、一つ目の質問の古典的な説明になっているのですが、
厳密に、量子力学的に光を粒子として扱うには、場の量子論と相対論が必要
になりますので、本講義では古典的な説明で満足して貰うほかありません。
標準的な量子力学の教科書(シッフとかメシアとか、猪木とか)の下巻の最後の
方に、「電磁場の量子化」の章がありますので見て下さい。
- ボースアインシュタイン凝縮の臨界点とは、有限エネルギー(e
>0)の全占有数Nfを
一定に保てなくなる点、と伺いましたが、Nf
(m)がゼロになる温度と考えて良いの
ですか。(富沢) <<<TOP
慌てて質問文を書き間違えているような気がします。可能性として、
1) mがゼロになる温度と考えて良いのですか
ならば、OKです。
2)Nf ( T )がゼロになる温度と考えて良いのですか
ならば、違います。Nfが完全にゼロになるのは絶対零度です。
(臨界温度は、Nfが減り始める温度です)
- ボース粒子系では、低温(b
→∞)で、exp(b
(e i
-m ))=∞となって、
粒子数の和は全部ゼロになるはずなのに、どうして、初項exp(b
(e 0
-m ))
だけがどんどん大きくなれるのかわからない(中村)
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b →∞で、m →0
となるからです。
そうすれば、初項だけは、
exp(b (e
0 -m
))=exp(b
(0
-m ))=exp(-mb
)=exp(-0×∞
)〜大体1程度
となれるのです。
- ボースアインシュタイン凝縮の臨界温度以下での凝縮粒子数の温度変化
の式の導出がわかりにくい。(松井)
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臨界温度TCまではN=Nf
になるのですから、一旦、T
をくくり出してやるのです。
あとでもう少し詳しく記します。
- ボソンの場合、m<0
ということは、前に出てきたたとえで言うと、「授業の
つまらなさ」がとても小さいから、粒子は、とてもおとなしい状態となるの
でしょうか?(大久保)
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どこまでたとえを押し通して良いのか、ちょとわかりませんが、
大体それでよいと思います。
- 光子だと化学ポテンシャルmが一定=0という理由がわからなかった。(松浦)
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講義でも言ったように、歴史的には、分配関数の計算で、大分配関数と同じように
全ての粒子数について和を取ると、m=0
としたボース分布関数が出ることに
インドのボースが気がつき、光子をボース粒子をして扱ってよいことがわかった
ということです。
- ボソンの場合、有限温度における占有数でどうしてD(e=0)=0となるのか
わからない。(野村)
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自由粒子の状態密度は、D(e)∝√e
だからです。
- ボソンの場合、有限温度における、有限エネルギーの占有数Nfを
計算するとき、
として、厳密には、積分範囲にゼロは含まれないがD(e=0)=0
なので単純に0〜∞の積分として良いということですか?(梅田)
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そのとおりです。
- ボソンとフェルミオンの場合で、m
と、eの関係、そしてそれぞれの温度
依存性を整理して欲しい。(野村)
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いずれやりましょう。あるいは、レポートとして自主的に整理して貰っても
すばらしいと思います。
- ボソンのmの説明で下図が示されたが、負のエネルギーにも
粒子が存在しているのですか?(長田)
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ボース分布関数がどこで発散しているか見やすいように、負の領域まで
描いたのです。もちろん、粒子が存在し得るのは正のエネルギーの部分です。
- ボースアインシュタイン凝縮はフェルミ粒子だと起きないのですか?
(斎藤)
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おきません。そもそも同じ状態に複数の粒子が入れないのですから。
- (来週の内容予告で出た、固体の比熱で)振動を粒子と見る意味が
よくわかりません。(石川)
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振動している状態=粒子もどきが居る
止まっている状態=粒子もどきが居ない
と考えるのです。一旦粒子として扱えると、統計力学のテクニックが
いろいろ応用・適用できるので、便利なのです。
- 4Heや3Heが、それぞれフェルミオンだとかボソンだというのは
どこから判るのでしょうか(浅原)
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電子、陽子、光子などの素粒子が、フェルミオンかボソンかというのは
わかりましたが、一般的な気体分子である水素やヘリウムはどうなのでしょうか?(田中)
電子と原子核のスピンを合成して考えます。
まず、電子については、どちらも閉殻ですのでスピン=0です。
つまり、1s軌道に↓と↑の電子が2つ入っているのです。
次に原子核ですが、結果(現実)は、
4ヘリウム=陽子二つと中性子二つのスピンが合成されてゼロ
3ヘリウム=陽子二つと中性子一つのスピンが合成されて1/2
となっています。どの角運動量が安定(基底状態)であるかは、基本的には、
量子力学でやった角運動量の合成則(CG係数)を使って、固有状態を求めて
行くのですが、原子核のスピンの場合は、単純な交換相互作用だけでなく、
テンソル力も働いているので、実は相当面倒な計算が必要になります。
詳しくは、「核・素粒子特論」の講義で。
- ボースアインシュタイン凝縮による面白い物理現象はあるのでしょうか(加藤)
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超流動現象などです。これが起こると、粘性がゼロになり、どんな狭い空間も
液体がするりと通り抜けたり、容器の壁面を液体が重力に逆らって上って言ったり、
熱が音波として伝わったり(第二音波)、想像を超えた振る舞いが沢山現れます。
注)ボースアインシュタイン凝縮と超流動現象は、必ずしも等価ではありません。
超流動が起こるためには、位相速度と群速度が一致する点が必要です。
液体ヘリウムの場合は原点付近でe ∝k
となっているので、まず原点で一致し、
もう一箇所、ロトンと呼ばれる場所(分散がへこむところがある)でも一致します。
しかし、箱の中の自由粒子ではe∝k
2なので、位相速度と群速度が一致する
場所は絶対に無いのでたとえボースアインシュタイン凝縮が起こっても
超流動は起こりません。
- ボソンとボース粒子は同じものを指すのですか?
それとも使い分けがあるのですか?(同様にフェルミオンとフェルミ粒子)
(佐藤)
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同じものを指します。使い分けは無いと思います。
- 超越方程式の意味がわからないです(橋本)
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超越方程式は解析的に解くとどうなるのですか?(濱崎)
xのべきだけでなく、expとかsinとかlogとかが入った方程式を超越方程式と
言います。解析的には解けません(難しいと言ったのは、解けない、という意味です)。
もちろん、全ての超越方程式が解けないわけではありません。exp(x)=1などは
もちろん、解けます。
- ツェータ関数ってわかりません。(加藤) <<<TOP
ツェータ関数はどういう性質を持っているのですか?(柳沢、久保、三宅)
ツェータ関数を導入すると何か便利なことでもあるのですか?(乙黒)
ツェータ関数の性質の主なものは、例えば、
z(1)=発散(1位の極),
z(2)=p2/6,
z(4)=p4/90,
のほか、
などという公式があります。詳しくは、岩波の数学公式集IIIを参考にして下さい。
この本は、必携だと思います。
それから、ツェータ関数を導入しても、それだけでは新たに何かを計算実行で
きるわけではないし、直接便利なことはあまりありません。
ただ、昔から詳しく調べられていて、いろいろな性質がわかっている
(値とか、式変形とか、他の関数との関係だとか、、、、)ので、扱いやすい
というだけです。
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