Freshwater Fish World
魚図鑑ホーム >
タツノオトシゴ図鑑
タツノオトシゴ属魚種は46種が知られています。これらは成魚でも体長が2センチほどのピグミーシーホース(9種)と、体長が3センチ以上の「大型の種」(37種)に分かれています。
このうち約3種のピグミーシーホースと9種の「大型の種」が日本近海に生息しています。タツノオトシゴの図鑑スタンプはこちら 。日本近海に生息する「大型の種」の分類表です。
分類表
日本に生息するタツノオトシゴ類
タツノオトシゴ Hippocampus coronatus
タツノオトシゴ
タツノオトシゴ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長13 cm(通常は6 cm程度)。日本固有種。長崎から東京湾にかけて生息。
主に藻場に生息する。成魚では頂冠が高く後ろに曲がり、背鰭の基部から平らな棘が横方向に伸びているのが特徴。
体色は明るい赤褐色から濃い赤茶色までさまざまで、多くの場合、白っぽい細い縞模様や黒い小さな斑点が見られる。
妊娠中のオスの育児嚢には、白と黒の細かい斑点がよく見られる。
産卵期は春~夏。
IUCNデータ不足(DD)。
ヒメタツ Hippocampus haema
ヒメタツ
ヒメタツ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長11 cm。日本と韓国に生息。
主に藻場に生息する。タツノオトシゴ(H. coronatus )とよく似ており、同一種とされていたが、頂冠がタツノオトシゴよりも低く、尾部輪がタツノオトシゴよりも少ない(ヒメタツでは35~38本に対し、タツノオトシゴでは37~40本)ことから、別種として2017年に記載された。
ハナタツ Hippocampus sindonis
ハナタツ
ハナタツ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長10 cm。
北西太平洋(日本南部や朝鮮半島南部)に分布。
背鰭の基部に翼端の棘がない(⇔タツノオトシゴでは背鰭の基部から平らな棘が横方向に伸びている)。
体色は鮮やかな赤や黄色など非常に多様で、頭部や躯幹部に肉質の皮弁がある。
頂冠は高い。メスでは眼や頂冠の上に肉質の皮弁が伸びていることが多いが、オスでは頂冠がなめらかなことが多い。
藻場や砂底などで見られる。
IUCN低危険種(LC)。
イバラタツ Hippocampus histrix
イバラタツ
イバラタツ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長17 cm。西太平洋、主に日本からインドネシアに分布。日本では伊豆半島、和歌山県などで見られる。
水深15~40 m程度で、軟体サンゴやカイメンがいる砂底や藻類がいる岩礁域で見られる。
生息環境に合わせて明るい黄色や茶色から赤色、または緑色まで体色が非常に多様。
体に棘状突起が多くあり、吻がとても長いのが特徴。
IUCN危急種(VU)。
サンゴタツ Hippocampus mohnikei
サンゴタツ
サンゴタツ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長8 cm(通常5 cm程度)の小型のタツノオトシゴ類。九州地方から本州西部、伊豆半島にかけての日本海南部などに分布。
主にアマモ場にみられる。
体色は多様で、明るい茶色から濃い茶色または黒色で、白っぽい斑点が点在する。
しばしば細かい短い糸状の藻類で覆われてコケのようにも見え、生息環境にうまくカモフラージュしており、見つかりにくい。
成魚では頭頂部の頂冠は低く、吻は短く、尾部が細長いのが特徴。
産卵期は春~秋。
IUCN危急種(VU)。
タカクラタツ Hippocampus trimaculatus
タカクラタツ
タカクラタツ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長22 cm。日本を含むアジア各地(インド、カンボジア、中国、香港、台湾、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなど)で見られ、日本では青森県以南に分布。
沿岸の浅い岩礁域の藻場や砂泥~砂礫底に生息。
眼の上と鰓蓋の後下方にそれぞれ1対の後ろ向きの棘がある。
体色は灰色から濃い茶色または黒色まで様々で、背側面に3個の黒色点をもつ。ただし不明瞭なことも多い。
幼魚では頂冠は比較的大きいが、成魚になると頂冠は目立たなくなる。
産卵期は5~6月。
IUCN危急種(VU)。
オオウミウマ Hippocampus kelloggi
オオウミウマ
オオウミウマ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長28 cm。亜温帯から亜熱帯の日本南部からシナ海やフィリピンに分布。
躯幹が長く、吻先は広がっている。
体色は茶色から黒色で、細い白い線や小さな斑点が見られる。幼魚やメスではクリーム色や黄色のものもいる。
10 cm以下の幼魚では体が細長く、成長とともに頭部付近から小さな白い斑点が現れてくる。
水深20 m以上で、強い流れにさらされた斜面でよく見られる。
水深120 mの比較的深い海域でも見られる。
IUCN危急種(VU)。
クロウミウマ Hippocampus kuda
クロウミウマ
クロウミウマ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長18 cm。インドー太平洋に広く分布(モルディブ、スリランカ、アンダマン海、シンガポール、インドネシア西部からバリ島まで)。日本では琉球列島に分布する。
体色はくすんだ赤褐色から黒色。オスでは体全体に多数の黒い斑点があり、メスでは明るい黄色もしくは濃い黒褐色の斑点がある。
幼魚では吻が短いが、成長とともに長くなる。
河口の汽水域でも見られる。
IUCN危急種(VU)。
ピグミーシーホースは、ニューカレドニアで水族館の展示用として採集された八方サンゴ類にくっついていたことで偶然見つかった超小型のタツノオトシゴ類である。
ピグミーシーホースはタツノオトシゴ属に分類されているが、オスの育児嚢は腹腔内にあること(他のタツノオトシゴ類では尾部にある) や、鰓孔が1つしかないこと(他のタツノオトシゴ類では2つ)などの形態的な特徴から、ピグミーシーホースは他のタツノオトシゴ類とは進化の過程で初期に分岐したと考えられている。
ハチジョウタツ Hippocampus japapigu
ハチジョウタツ
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長1.6 cmのピグミーシーホースの仲間。
八丈島、伊豆諸島、小笠原諸島に分布。
軟体サンゴ(サボテングサ属Halimeda sp.)や岩礁壁などでみられる。
2018年に記載された。
ピグミーシーホース Hippocampus bargibanti
ピグミーシーホース
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長2.4 cm。
インド西太平洋(日本、インドネシア、オーストラリア、バヌアツなど)に分布。
うちわ状に枝が広がる八方サンゴ類にすみ、その姿はサンゴそっくりにカモフラージュしている。
体色は2パターン知られている。ピンク色または赤色の円形小突起のある淡い灰色または紫色の個体は、Muricella plectana にいる。
オレンジ色の円形小突起のある黄色の個体は、Muricella paraplectana にいる。
幼魚は様々な宿主につくが、繁殖には通常20 mを超える深さで成長する赤いポリプを好むようだ。
IUCNデータ不足(DD)。
オセアニアに生息するタツノオトシゴ類
ポットベリーシーホース Hippocampus abdominalis
ポットベリーシーホース
ポットベリーシーホース
ヨウジウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属。
最大全長35 cm(通常は18 cm程度)。成熟個体は8.7 cmから見られる。
オーストラリアやニュージーランドに分布。
メスでは体幅が広いのに対し、オスは細いが成長とともに広くなる。
吻の長さはまちまちだが、通常は鰓蓋の長さとほぼ同じである。
体色は生息している深度や環境によって変わり、白っぽいものから濃い茶色、黄色、オレンジ色までいる。黒い斑点が目立つ個体もいる。
尾にはさまざまな幅の暗色と淡色の縞模様が交互にみられる。
背びれには多数の小さな斑点がある。
水深100 mまでの藻場やカイメン層などに生息する。
IUCN低危険種(LC)。
引用文献
Kuiter RH (2009) Seahorses and their relatives. Aquatic Photographics, Seaford, Australia.
Short G, Smith R, Motomura H, Harasti D, Hamilton H (2018) Hippocampus japapigu, a new species of pygmy seahorse from Japan, with a redescription of H. pontohi (Teleostei, Syngnathidae). ZooKeys 779: 27-49.
Han SY, Kim JK, Kai Y, Senou H (2017) Seahorses of the Hippocampus coronatus complex: taxonomic revision, and description of Hippocampus haema, a new species from Korea and Japan (Teleostei, Syngnathidae). ZooKeys, 712: 113–139.
Copyright © Freshwater Fish World, All Rights Reserved.