Klongtoey Community Development Credit Unionの歴史


●informal からformalへの20年間のプロセス
(1996/8訪問(その後2000/3再訪):Dr. Sompornにインタビュー)

1)経緯

 クロントイのスラム(ラマW・テッパタンコミュニティ)。王室所有の農園。 住民は3代にわたる農園労働者。土地は賃貸契約だった。都市部の拡大により、 土地の価値が上昇し、民間デベロッパーがこの土地を商業開発地として利用し ようとする。王室もこれに合意し、農園労働者を解雇し、また、3代にわたっ た居住にもかかわらず、土地契約は突然の打ち切り。何の補償もなく強制立退 き、取壊しが行われる(1966年)。Dr.Sompornは、その隣りの病院の娘だった が、その家屋が間違って取壊されることによって、住民とともに運動に加わる。

2)土地分有(land sharing:注1)のしくみの始まり;1981年締結(土地へのアクセス)

 最初の土地分有の試み。これも住民のコミュニティーを作ることが前提。最終 的には、全体の23%に住民を再定住させ、残りの78%で商業開発を行う。商業開発 を行うdeveloperが、再定住地に850戸分の高層住宅を建て、2階までは、商業店舗 として利用、3階以上は、住宅。住宅は、彼らにとってreasonableな価格で、20 年間更新可能な借家契約で、3者が合意(王室、企業、住民;仲介は政府)した。 すべてのアクターが貧困層への住宅提供手段を生み出そうとする努力の蓄積と言える。

(注1)
 タイの土地分有制度については、内田雄造編著(1996)『東アジアにおけるスラムの 環境改善に関する研究』The International Center for Study of East Asian Developmentの (第二部、第二章タイの土地分有事業)参照。土地分有はスラム立退きの代替手段として 生まれた手法で、住宅の計画・供給のスステムをインフォーマルからフォーマル自己資金 運営によって変えていくプロセス。貯蓄グループの形成。住宅共同組合としての登録。開 発プロジェクト運営主体としての登録、etc。

3) credit union(クレジットへのアクセス

 上の過程において、自分達の貯蓄グループを作る。それまでは、インフォーマル金融 しかなかった。ヤクザのようなグループ(スラムの外と中)だけが儲ける。住民は、結 局いつも生存レベルぎりぎりの生活。自分達の貯蓄グループに対して、上記ヤクザから のいやがらせ。また政府を通しても、コミュニストと疑われ、圧迫を受ける。何らかの フォーマルな傘が欲しい。タイのクレジットユニオン(信用組合)の創始者の一人Paul Chamniernと 出会い、クレジットユニオンをつくる。

4) Day Care Center

 コミュニティ活動の初期において、男性は建設現場で働いても、ほとんど飲んでしまって、 妻や子供に金がほとんど残らない。女性が子供を育てなければならないので、働きに行けな い。もし、働きに行けたら、露天商、行商などで、男と同じぐらいの所得はあげれるはず。 と皆が言い出す。Day Care Centerを設立を試みる。はじめは、インフォーマルにおこなっ ていたが、いろいろなところから妨害がある。特に政府をとおして、資格要件を満たしてい ないとの妨害。結局、王様に直訴して、王様の後ろ盾によって、フォーマルに設立。

5)Market へのアクセス

 これは、スラムの人々の生活向上、また彼らが自信をもっていく大きな転換点(1986)となる。 このスラムコミュニティーの前に、"Klongtoey Market"という大きなマーケットがあった。住民 が、どうにかしてそのマーケットでものを売れないか。と考えるようになった。マーケットは政 府港湾局に属する。しかし、その時点で、実際の管理は、マフィアのような企業によって行われ ており、貧しい人達にとって参入不可能。しかし、1985年前後に、上納金が大きすぎてストライ キ多発し、また殺人事件も多発するようになり、混乱状態が生じる。その結果、半年間市場が閉 鎖される。港湾局も困っており、これを機会に、このCredit Unionが、市場の 1/3(300m x 100m, 400 店舗)を管理する権利を獲得する。
 これ以降、住民の生活は、以下の3点において変化する。

  1. credit Unionの安定化、拡大化。その市場のもともとの店舗がCredit Unionの メンバーとなったことによる。これは、住民が小規模事業を起こす際の、 Credit Unionの資産規模の限界から来る、資金借入制約をなくし、彼等の事業 活動の活性化につながる。また、コミュニティーの安定化をもたらす。
  2. 住民のあるものは、Credit Unionを通して、直接に市場にアクセスできるようになる。
  3. 人々は、自分達の組合がこの市場を管理していることから、自信をもつようになる。


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