※(復習)インフォーマルセクターに対する2つの見方。インフォーマルセクターにおける 小規模事業発展の3つの大きな障害(@土地・住宅AクレジットBマーケット)
近年、多くの途上国インフォーマルセクターにおいて、クレジットへのアクセス 改善のための「マイクロクレジット」(小規模信用貸付)が、貧困解消の効果的 手段として注目されているが、その大きなきっかけとなったのは、バングラディッ シュのグラミン銀行の成功と言えよう。ユヌス教授は、自営業で竹製の椅子を作っ ていたインフォーマルセクターにおける小規模事業家(女性)が、その椅子の購 入者である仲介業者から借金(すなわちインターリンケージ取引)をして材料を 仕入れていたために、その完成品をただ同然の手間賃で買い取られているのを見 たのである。そして、その女性にわずかなクレジットを貸付することによって、 インターリンケージ取引を解消しさえすれば、市場で自由にもっと高い値段で椅 子を売ることができるのではないか。それによって死ぬまで続くと思われる生存 レベルぎりぎりの生活からの解放が可能になるのではないかと考えたのである(参 考文献:Yunus, M. and Jolis, A (1999), Banker to the Poor : Micro-Lending and the Battle Against World Poverty, Public Affairs Published. 邦訳は猪熊弘子『ムハマド・ユヌス自伝:貧困なき世界をめ ざす銀行家』(第1章)早川書房)
@5人一組のグループを自分たちで作る。返済はグループとして責任を持つ。
A融資対象者は、土地無し農民の貧困者(0.5エーカー未満)のみ。特に女性に力を。
Bルールや規律の説明、訓練が1週間行われ、それに合格したもののみ。
C融資は、5人のうちに彼等が選んだ2人にまず行われ、6週間の間返済がきちんと出来る 様だったら、他のメンバーも融資を受けることが出来る。
D利子率は年利にすると16%程度。
E6つのグループごとの集会が毎週開かれ、融資の返済はその際に毎週行われる。
Fグラミンバンクでは、人々を支店に来させるのではなく、上記集会に行員が出向く。
Gその他危険回避のための様々な工夫。
- 意識化よりもクレジットにアクセス出来るようになることが重要と考えた。 クレジットへのアクセスは人権だ。
- 彼等は企業家としての可能性を持っている。その可能性に注目。
- 女性に注目。男女差別の問題。女性の地位向上。
- さらに女性の方が忍耐力、将来への希望が強い(子供を産む為か)。自暴自棄にならない。
- 自分たちが自分たちのお金を動かす。参加の喜びを味わいながら、共同体を持続。 (これも女性の方が得意)<参考:普通男性は目的志向型で行動。女性はプロセス を味わい、楽しむことが出来る>
- コミュニティーの力。励まし合いと助け合い、そして選択肢の拡大。
(まず説明あとでスライド)
※以下の項目は要点のみであるが、 詳しくはこちらにエッセイ(覚書程度)があるので読んでみてください。
●この事例は、国の経済開発のための方策として、主に外国資本の誘致によってなされる
フォーマルセクター中心の開発だけでなく、インフォーマルセクターを支援することによっ
て、インフォーマルセクターの自立的発展を促し、結果的に国全体の経済発展を実現する
道を模索しているといえる。(1996/8訪問(2000/3再訪):スムスク局長にインタビュー
及び資料を中心にまとめる)
※以下は要約のみであるが、詳しくはこちらに説明があるので読んでみてください。
(要約)
UCDOは、もともとインフォーマルセクターの人々の土地・住宅へのフォーマルな アクセスと、creditへのフォーマルなアクセスを支援することを目的に1992年設立 された。主な事業は、都市スラムコミュニティーで組織された住民信用貯蓄グループ (例えば、その当時バンコクのスラムコミュニティー約1200のうち約850のコミュニ ティーに何らかの住民信用貯蓄グループがある)に対する回転資金の融資し、貯蓄 グループの安定化、発展によって彼らの生活環境(住居・仕事)向上を狙うもので ある。しかしながら、現在、これを通してインフォーマルセクターの小規模事業の 活性化に取り組むに従って、新たな課題、に直面している。それは、market へのアクセスである。UCDOは、貧しい人々が、公平に流通システムにアク セスできるように、既存の市場構造を変革することが、貧しい人々にとって、また 経済発展にとって重要なことであると考えるようになってきた(市場の自由化 だが、一般に言われる自由化とは方向性が逆であることに注意)。
これらの一連の取組は、実際に貧困者の生活レベルの改善を目指したもの。しかし本当の ねらいは、コミュニティーづくりかもしれない。コミュニティーを基礎として開発が重要。 すべての試みはコミュニティーを作っていくための手段。すべての問題は、コミュニティー を開発していくのに役に立つ。コミュニティーの発展こそが真の発展ではないか。そして コミュニティーどうしの様々なレベル・領域でのネットワークは、貧困者にとって大きな 力となり、真の発展につながる。
私『何か日本人としての私がやれることはありませんか。』
スラムのリーダー『何もしないで下さい。それよりあなたたちの国の方が問題です。まず、 あなたたちの国の中で、一人一人が大切にされるように社会を変えていってください。そ うでないと、私たちの国は、その非人間的な部分のしわ寄せを受けて苦しんでいるのです。』
→そして彼らから学んで、特に日本の社会を変えることも重要。
"We are like a boat to development, and all the agencies, all the professionals and NGOs are trying to jump on board. What NGOs and others impose on us, what they are trying to do, we need time to tolerate it, to understand it in our own way of working. They think it's easy to transform. There are always minor tensions among ourselves. We need time to work out. For us, this isn't a project, it is our life." (Patricia Matolengwe, South African Homeless People's Federation)
『私たちはまるで"開発"のボートに乗せられているようです。すべての政府機関、国際機関、 専門家達そして市民団体の人々は、私たちをそのボートに積み込もうとしています。市民団体や 他の人々が私たちにやらせようとすることが何か、彼らが何をやりたいのか、それに忍耐しなけ ればならないのでしょうか。また私たちのやり方でそれを理解するのには、時間が必要です。 彼らは変革が簡単だと思ってます。しかし私たちの中にはいつもそれに対して緊張があります。 私たちにとって、これはプロジェクトではなく、私たちの生活そのものだからです。 』