2010年度 演習(国際政治経済論1,2)説明

2010年度ゼミ(演習:国際政治経済論1、2)希望者へ
 ※秋学期からの受講は、留学等で継続履修の場合以外は原則として認めませんのでご注意ください。

演習(国際政治経済論)は、大学全体のカリキュラムがセメスター制に移行ということで、形式上春学期の演習(国際政治経済論1)と秋学期の演習(国際政治経済論2)の半期ごとにわかれています。 しかしながら、この演習2つは、原則として連続して受講するもの、つまり通年のゼミとして考えますのでご注意ください。このため、秋学期の演習(国際政治経済論2)の受講は、 春学期の演習(国際政治経済論1)をその年かそれ以前に受講したものに限る予定ですので、ご注意ください。なお、このようにこの演習を通年のゼミとして私がみなしたい理由は以下の 2点です。

@演習(国際政治経済論2)においては、学期末に卒業論文またはゼミ論文またはそれに準じるものを仕上げることを要求するのですが、夏休み前にテーマの相談をし、夏休み中にその準備をしない限り 良質なものを作ることは難しいと思います。
A特に、今年度は春学期・秋学期の一年を通して同じグループで共同研究を仕上げることを中心に考えています。
B大学生活の一つとして、そしてその後の生活のためにもゼミとその仲間を大切にしていただきたいと思いますし、できればゼミ全体がコミュニティとなっていけたらと思います(これは私の大きな研究テーマである People's Processに通じるものです)。そのためには通年をかけて、互いの人間関係を深めていく必要があると考えています。

なお、ゼミとして成り立たせるためには経験上30人未満でないと難しいと考えます。そのために、もし人数が多い場合には、全体で30人未満にするために選考をさせていただきたいと思います。 そのため、下記の説明を読んで、まず自分のやりたいことと私のゼミが合っているかどうかをよく考えてください。その上で、ゼミに応募されたい方は、ゼミ志望書を下記の様式で準備し、初回のクラス(4月16日)に臨んでください。
⇒様式はこちら(Word)(PDF)

初回に出席して様子をみた結果、このゼミを希望するものはこれを提出してください。なお万一希望者(初回のゼミ出席者)が30名を超える場合はこの志望書と下記の基準を基に選抜を行います(当然、初回欠席のもの、またこの志望動機書を提出しなかったものは、 優先順位が落ち、受講できない場合があるので注意すること)。

1)過去に私の授業を受講したものを優先する(私の授業の中の優先順位は以下のとおり:@国際政治経済論1、2、A国際経済学1、2)。条件の同じ場合は、その際の成績 も考慮する(特に@のレポート)。

2)国際政治経済論1、2を受講していない場合、優先順位が落ちることになるが、強く受講を望むものは、以下の文献のうち一つを読んで、3000字から4000字程度のブックレポート(要約と考察(場合によっては感想も)) を準備し、初回のゼミの日に提出すること。これがあれば、上記1)の@国際政治経済論1、2を受講した場合に近い扱いをする。



<ブックレポートのための文献>

[1]ホルヘ・アンソレーナ、伊従直子 (1992), 『スラムの環境・開発・生活誌』明石書店。

[2]パウロ・フレイレ(小沢有作他共訳) (1979), 『被抑圧者の教育学』亜紀書房。
・古典的書物だが、途上国における教育支援、特に識字教育に関心がある人は是非読んで欲しい本。識字教育の原点はここ。

[3]幡谷則子、下川雅嗣 [編著](2008)『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』(地域立脚型グローバルスタディーズ叢書第3巻) 上智大学出版会。

[4]穂坂光彦 (1994), 『アジアの街わたしの住まい』明石書店。
・居住問題が中心テーマであるが、アジア各国のスラムでの人々の生活・取組の実情がよくわかる。

[5]ホルへ.アンソレーナ/伊従直子/内田雄造/穂坂光彦 (1987), 『居住へのたたかい』明石書店。

[6]パウロ・フレイレ(里見実訳) (2001), 『希望の教育学』太郎次郎社。
・いまある状態が、すべてではない。ものごとを変える、変えることができる、という意志と希望を失ったそのときに、教育は、被教育者にた いする非人間化の、抑圧と馴化の行為の手段になっていく。いまある所与の状態を引き受け、それを直視しつつ、誠実かつ老獪に「可能な夢」を模 索する教育思想家フレイレの晩年の主著(「BOOK」データベースより)

[7]内田雄造編著 (2006), 『まちづくりとコミュティワーク』解放出版社。
・(第U部第3章)山本義彦「「陸の孤島」からの街づくりー大阪・浅香すとーりー」
・(第V部第1章)全泓奎「韓国におけるまちづくりとコミュニティワーク」
・(第V部第2章)下川雅嗣「アジアにおける貧困層のあゆみとコミュニティ・ビジネス」
※これをブックレポートに用いるときは、上記3つのみか3つを中心に書くように。

注意

本ゼミは、木曜日5限となっているが、7時過ぎまで長引くことが多いのでその旨最初から留意しておくこと。また、クラス、クラスの準備、日々の研究、さ らには学生どうしの交流等、かなり積極的に参加する学生を望むのでその覚悟で臨んで欲しい。なお下記にある最終合宿は全員参加です。 また、以下の「内容」にあるように今年度のゼミでははじめての挑戦として、グループワーク、グループ研究を基本とするので共同作業、共同研究 を大事にしてみたいと思う学生を期待する。

内容

・国際政治経済諸問題をより深く理解する能力を育てる。春学期は2週に一つくらいの割合でテーマを設定し、それについてのグループワークを行う。なお事前にそのテーマに関して必読 文献を指定するので各自はそれを読んでゼミに参加することが要求される。また毎回のグループワークと同時並行で、下にあるグループ研究のテーマごとにグループをつくり通年でグループ研究 を行う。秋学期はその途中経過報告、研究結果を発表し討論することが中心となる予定。またゼミ受講者は国際経済学1,2または国際政治経済論1・2(下川雅嗣担当)を既に履修済み か、併せて受講することが勧められる。
・私自身の今の関心事はこのHPの全体を参照のこと。
・過去のゼミでやった詳しい内容については、私のHPのゼミ(演習)の各年度の説明を参照のこと。
・過去のゼミ生の卒論・ゼミ論の要旨については、私のHPのゼミ(演習)の各年度のゼミ論・卒論要旨等(全文が掲載されているのもある)を参照のこと(2009年度の卒論・ゼミ論要旨は 近日中に掲載します)。
・今年度は、卒業論文執筆予定者以外は、幾つかのグループで共同研究・共同執筆を行うことを原則とします。また最終成果も論文の形にこだわらず様々なものを最終成果として認めようと 思っています。その他、卒業論文執筆予定者及び交換留学予定者と共同研究グループとの関係など詳しくは、初回のクラスの時に話し合う予定。
2010年度「アンソレーナさんと"開発"を語ろう― "途上国における居住改善プ ロジェクトの進展"」セミナーは、本ゼミ及び下川の関心に内容的に近いので強くお勧めです。 なお、アンソレーナさんは私の師匠でもあり、私も体調が許す限り参加します。


前期グループワークを行う際のテーマ

※日程はとりあえずの目安です。途中で順序が入れ替わったり、別なものが入る(秋学期にずれこむ)こともあるので、ゼミ生は休んだ場合等常にMLを注意したり、他のゼミ生に確認してください。 また、(必読)の文献は、事前に必ず読んでかつ、当日のディスカッションで分かち合うポイント(重要だと思うこと、印象に残ったこと、問題だと思うこと等)を簡潔にまとめておいてください。 なお、このまとめは箇条書きでよいですが、当日のゼミ後に提出してもらいます(なお同一テーマ二回目はそれぞれ一回目のグループ内で各自が何を調べておくか決めます)。推奨・参考文献も ディスカッションを深めるために、特にその分野に関心がある方は読んでおいてください。なお、推奨・参考文献は短いものだけでなく一冊の本等もあります。よってそれぞれのテーマの中で自分 の関心が強いテーマがあってより深く勉強したい方は、事前に図書館で借りたり購入したりして 読んでおけばよいのではないかと思います。また少なくとも1冊くらいは私の研究室にあるので、先着順で2週間ほどはお貸しすることが出来ると思います。 ただし、Joseph Stiglitz (2006), Making Globalization WorkW.W.Norton & Company, Inc. ((邦訳:楡井浩一訳 (2006) 『世界に格差をバラ撒いたグローバリ ズムを正す』徳間書店:以下《スティグリッツ》と記す)は、しばしばり幾つかのテーマの必読文献となっているので、各自が用意しておくこと(邦訳でなく原書でもよい)。

1) 4/15:イントロダクション

2) 4/22:グループ研究のグループ分けと最初の議論

3) 5/6、天然資源と多国籍企業に関する問題(特にアフリカの貧困と発展にとって)
 (必読)1:三谷真紀子 『アフリカ開発戦略と地域統合−「アフリカ独自の発展」を再考する−』 2005年度修士論文
      2:《スティグリッツ》5章「天然資源の収奪者たち」
 (参考)1:岡本美恵子『多国籍企業は途上国の発展に寄与しうるのか〜在アジア日系企業を中心に〜』2002年度ゼミ論文
       ⇒本文を読みたい方は研究室まで。
      2:《スティグリッツ》7章「多国籍企業の貪欲(グローバルな独占を阻止する)」

4) 5/13:続き

5) 5/20:累積債務問題
 (必読)1:《スティグリッツ》8章「債務危機への道すじー借りすぎか?貸しすぎか?」
      2:エリック・トゥーサン「グローバル化経済とそのゆくえーIMF/世界銀行を締め出した中南米に吹く新しい風」」『社会正義』27, pp53−65.
      ⇒社会正義研究所に行けば抜き刷りをもらえます。
 (参考)1:今村夏子 『債務の利子と第3世界の貧困の関係 』2003年度ゼミ論文
       ⇒本文を読みたい方は研究室まで。

6) 5/27:続き

7) 6/3:アグリビジネス(緑の革命、遺伝子組替穀物を含む)と発展途上国(知的所有権の問題を含む)
 (必読)1:吉田真子"The Reinforcement of External Seed Dependency" 2004年度卒業論文(英文)
      2: ブックレット「生命特許」(←天笠 啓祐編著『生命特許は許されるか』緑風出版より一部をコピーして作られたもの)
 (推奨)1.(天笠 啓祐編著『生命特許は許されるか』緑風出版(他の推奨文献と違って本一冊なのでよっぽど関心のある人だけ)
      2. 下川 『Japanese Seed』(若干関係します。のちに必読文献として使うのでここで読んでおいてください)

8)6/10:続き

9) 6/17:卒論・グループ研究テーマの分かち合いと調整

10) 6/24 :貧困・開発・発展
 (必読)1:下川「貧困者の現実、彼らの歩みとオルタナティブな発展―アジアの都市部の事例を中心にー」
    (完成版は村井吉敬、安野正士、David Wank [編著](2007)『グローバル社会のダイナミズム:理論と展望』(地域立脚型グローバルスタディーズ叢書第1巻)上智大学出版会、183-206。)
    (英訳:"People's Reality, People's Process and Alternative Developments in Urban Asia")
     2:下川 『Japanese Seed』
     3:北村さやか『女性とDevelopment:「発展」と「開発」の視点から』2009年度修士論文(少なくともはじめにと第一章は必ず読むこと。できれば2章も。関心の高いものはもちろん全文)
 (推奨)1:James Ferguson (Stanford University) "Decomposing Modernity: History and Hierarchy after Development" 
     (日本語訳完成版:「近代の神話の解体―進歩主義以後の時代における歴史と階層序列」は『グローバル社会のダイナミズム:理論と展望』(地域立脚型グローバルスタディーズ叢書第1巻)に収録)
     
11) 7/1:貧困と教育(学校教育、ノンフォーマル教育、識字教育、意識化教育(パウロフレイレ))
 (必読)1:糟谷有紀子『教育は貧困者の可能性を拡大できるか』2004年度卒業論文
      2:氏原由実 (2007)『パウロ・フレイレの教育学と日本社会の意識化への可能性』2006年度セミ論
 (参考)1:パウロ・フレイレ(小沢有作他共訳) (1979), 『被抑圧者の教育学』亜紀書房。
      2:パウロ・フレイレ(里見実訳) (2001), 『希望の教育学』太郎次郎社。

12) 7/8 :People's Processとオルタナティブな発展
 (必読)1:下川「貧困者の歩みの発展:新たな発展(開発)モデルを求めて:パキスタン、タイの事例から(未定稿)」
     (完成版は、幡谷則子、下川雅嗣編著:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』「貧困者の歩み(People's Process)の発展―パキスタン、タイの事例から」
     2:下川「アジアにおける貧困者のあゆみとコミュニティ・ビジネス」(完成版は、内田雄造編著『まちづくりとコミュニティワーク』解放出版社, 159−185, 2006年。
     3:下川『水平交流』 

13) 7/15:グローバル化に対抗する運動とその可能性
 (必読)1:「グローバル化に対抗する運動とその可能性〜いかに繋がり、いかに変えるか〜」 (社会正義研究所第29回国際シンポジウム, 2009)
      ⇒7月ごろにどうにか手に入るようにします。
 (推奨)1:「グローバル化と先進国における貧困と社会的排除:野宿者、フリーター、移住労働者の現場から」(第27回国際シンポジウム, 2007)
      ⇒取得の仕方を近日中にアップします。

14) 7/22 卒論・ゼミ論・共同研究/プロジェクト等のテーマ・途中経過発表

他に取り扱いたいテーマ(秋学期の余裕があるときにできれば行いたい)
・環境問題と排出権取引
   (必読)1.《スティグリッツ》5章「汚染大国アメリカと地球温暖化」
      2.The Story of CAP & TRADE  

グループ研究のテーマ(案)

@累積債務問題
Aアグリビジネスと発展途上国
B天然資源の問題とアフリカの貧困と発展(場合によっては2つのテーマに別れる可能性有)
C貧困と教育
D世界の貧困及びスラムに関すること
E国内の貧困・格差について(野宿者に関することを含む)
Fその他参加者の提案によるもの:⇒ただし3人以上の賛同者がいる場合にテーマとして成立する。

卒論執筆者・ゼミ論執筆者の日程目安

<前期:演習(国際政治経済論1)>
・5/31:国際関係副専攻卒論登録締切(これ以前にテーマをある程度絞っておかないとこのときでは遅い)
・7/22に 卒論・ゼミ論・共同研究/プロジェクト等のテーマ・途中経過発表

<後期:演習(国際政治経済論2)>
・後期は順に中間発表
・12月9−15日:卒論提出期間
・12月末及び1月:卒論最終発表(ゼミの時間中)
・1月8、9、10、のどこか1泊2日(場合によっては1月末):ゼミ論(グループ研究)最終報告合宿(原則全員参加)
・ゼミ論(グループ研究のプロダクト)の締切りは最終合宿の前のゼミの日(たぶん1月6日)にしたいと考えている(ただし修正指示があった場合の最終締め切りを1月20−25日あたり)と考えている。

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