Media  from UK

6月22日
仏ヴィヴンディ(Vivendi)、カナダ・シーグラム(Seagram)を買収―世界第2位のメディア企業が誕生。買収額は340億j(220億ポンド)といわれる。第3社として欧州有料TV市場のトップ、カナル・プリュス(Canal Plus)が加わるが、同社は既にヴィヴェンディの傘下にある。
【解説】Jean-Marie Messier率いるヴィヴェンディ社は、もともとは水道、エネルギー、産業廃棄物処理関係から出発した企業で、運輸・通信・出版・AV関係は全体の4分の1強に過ぎないものの、近年この分野で急成長をとげ、フランス・メディア界の注目の的になっていた。Messier会長は「J6M」としてフランスで知られているように、Jean-Marie Messir," moimême,maître du monde"(myself,master of the world)の頭文字をとったもので、彼のコントロールが強い企業という印象である。。醸造メーカーのイメージが強いシーグラム社との合併は、「水がとりもつ縁」とも評されている。
 他方シーグラム社はBronfman家の一族所有形態で、専務取締役Edgar Bronfman Jr.が前面にでている。実際には「Chivas Regal」といったシーグラム・ブランドで有名な酒・ワインなどが4割強を占めるものの、映画部門が4分の1、世界最大のユニバーサル・ミュージックを抱える音楽部門3割といった売上の企業である(1999年度)。映画、音楽のエンターテイメント部門から6割近い収入があるエンターテイメント・メディア産業である。 


Edgar Bronfman, Jr.
ちなみに代表的なレコード会社、歌手、映画は次のとおり。
 Universal Music Group: Decca,MCA,Island,Polydor,Deutsche Grammophon
Artist: Abba,Sheryl Crow, U2, Boyzone, Elton John
Universal Stuido Group: Jurassic Park 3, Gladiator
 この買収でハリウッド映画にフランス系が入りこむことになるが、ヨーロッパへのアメリカ大衆文化の侵攻に90年代議論が出始めたこととは裏腹に、現実は一方的な流れ込みがますます加速するであろう。
 ヴィヴェンディはこのほか、カナル・プリュスをとおしてマードックのBskyBの株を半分近くまでに伸ばす計画がある。

6月28日
ドイツ・メディア、キルヒ・グループとシュプリンガーがテレビ分野で合併、新企業ProSiebenSat.1 誕生
Leo KirchとAxel Springer Verlag があらた作るProSiebenSAT1は£60億(57億j)の資本金で、販売高はDM20億(£11.2億)が予想されている。


Leo Kirch
 ProSieben,Kabel1,N24,SAT1などの放送が傘下に入り、キルヒが52.5%、シュプリンガーが11.48%を所有する。両社の合体は、シナジー効果としておよそ2億DMを生じるとの予測がある。ドイツの放送業界の広告収入からみると、新会社が48%、CLT-Ufaが40%、残りが公共放送が握るとされ、二大グループ誕生は明らかに寡占市場の問題が生じるである。
 なお、FT紙によれば、「ドイツTV放送市場は長くアメリカに次ぐ世界第二位の市場」との記述されているのは、いかにもヨーロッパ的視野に基づくものと容易に推測されないだろうか。
 日本やアジアは彼らの眼からは外れている。


6月29日
Pearson CLT-Ufaの合併
 今年初め発表されたPearson社CLT-Ufaのテレビ部門の合併に欧州委員会が認可を発表した。FTを旗艦紙とするピアソン・グループはルクセンブルグを基盤とし、ベルテルスマン、Audiofinaの一グループであるCLT-Ufa(11か国、22チャンネル、フランスではM6、イギリスではChannel5をもつ)と組み、ヨーロッパ最大のTVグループが誕生する。また、IT業界へ積極的な方針をもつピアソンは、アメリカのインターネット教育グループのFamily Education Network(AOLが10%所有、昨年度売上高1,000万j)を1億2,900万ドル(£8,500万)で、87%株を買収することを決めた。同時にAOLとの協定により、向こう3年間AOLのポータルサイトに「調査・学習チャンネル」を提供する。9月から始動するこの教育サイトLearning Networkには、子供、学生、ITスキル、経営能力改善のためのプロフェッショナルをターゲットにして運営されるという。
 また7月に入り、ピアソンはアジアの風雲児Richard Li (李嘉誠の息子)と組み、Pacific Century Cyber Works(PCCW)という新会社(出資比率は1:1)を興し、アジアでの同盟を発表した。すなわち、上述の教育サイトをつかって、アジアでも英語教育、IT、ビジネス教育を開発しようとするねらいである。これにより、AOL(米)−ピアソン(英・欧州)−李(アジア)という大きなフレームが構築されることになるだろう。さらに、ピアソンは子会社のFT Knowledge(ビジネス教育)をとおして、アメリカの経営トレーニング社The Forum Companyを9千万j(£6千万)の買収も発表した。高等スキル、企業教育、経営開発などの需要が高まっているとの戦略方針である。


  FT 付録 Connectis

CBSの「英国は犯罪問題を抱え、悪化している」とのレポートに、英・内務省かみつく
 FT紙(6/29付け)によれば、6月27日ダン・ラザーがアンカーマンをつとめ、何百万という視聴者がいるCBSの看板番組で「今年の夏、何千人ものアメリカ人が文明の島を期待してイギリスを訪れるであろうが、イギリスもアメリカ同様の犯罪問題を抱え、殺人事件を除いても、悪化している」とコメントしたことに、英国政府・内務省が、それらは「単純かつその誤った引用に基づくもの」と反発、非難した。
 「1998年の殺人事件発生率は、ロンドンでは10万人につき2.9 人、ワシントンは49人、ニューヨークは8.6人で、平均的アメリカ人は英国市民の7倍事件に巻き込まれており、射殺される率は60倍である」という。この英国レポートはCBSがロンドンにおくヨーロッパ総局が取材、編集したもので、1998年米商務省発行の比較調査(実際には1981‐95の数値)や日曜紙からの引用と釈明しているが、来月発行される内務省の犯罪に関する報告書でも、平均19%犯罪発生率が高まっているのも事実だ。
 フーリガン(fooligangs)がこれほど騒がせている現状から、CBSレポートは、英国は怖い国というイメージが定着してもおかしくないだろう。毎年400万人のアメリカ人が英国を訪れるそうだから、こうしたセンセーショナルな記事のごとく思ってしまったら、確かに深刻な悩みになりそうである。
 このイギリスの噛み付きは、CBSレポートの事実内容がはっきりしていないため、英国側の反発非難だけでは、あまりフェアな記事とは言えず、英国人読者も誤った事実(アメリカレポートが一方的にイギリスの姿を誤って伝えている)解釈をしてしまう恐れもある。にもかかわらず、それらを強化する背景、つまりユーロサッカーでのイングランド応援者の乱暴ぶりが世界に流れ、欧州はじめとして大問題(これがおかしくて、毎年の季節もの、風物話題になってはいまいか。この時期を過ぎると、よほどのことが無い限りニュースにならない)になっている事実があることを考えなければならないだろう。それらの要因がミクスチャーして、今後のイギリス観が変わることもありうることだ。
 本当にこの国は、"ジェントルマンの社会"だと思っている人がいるのだろうか。


7月2日
Watersotne'sも変わる Collin'sが、そしてDaxのSimsonsまでもWatersotne'sに衣替えし、一方でBordersもここロンドンに店舗を構える。「ロンドンの紀伊國屋」と私が呼ぶ 老舗Foylesは残っているものの、ロンドンの書店状況は様変わりした。
 そのWaterstone's(1998年度売上高£3億9,000万)は、1982年前年に書籍出版の取次ぎ大手WH Smithを辞めたTim Waterstone氏が起こし、アカデミシャン好みのフォイルズ、ペーパーバックや雑誌、新聞を取り扱うWHSmithの中間層を狙って、書籍を大量におく戦術を取ってのし上がってきた。しかし、十分な市場拡大に伴わずに資金繰りが悪化し、結果的にWH Smithが救済にはいり、さらに1998年には音楽産業の大手HMVメディアが買い取った。
 6月末には、ドイツのベルテルスマン、Books etc.を既に傘下に収めているアメリカ系大型書店BordersがこのWaterstone'sの買収に乗り出したようである。(The Times 7/2/2000)

地方紙の買収続く 昨年アメリカ系メディアの大手、ガネット・グループが英国上陸の橋頭堡としてニューズクエスト社(Newsquest)を買収したが、それに対抗するかのように地方紙Trinityグループと全国紙のミラーグループが合併し、一躍英国最大の新聞グループが誕生した。そのTrinity Mirror社が、Yorkshire Postなどをもつ地方紙の大手Regional Independent Media(RIM,Candoverというベンチャーグループが所有)の獲得に乗り出したのである。RIMは同紙を旗艦紙として、シェフィールドのスター、ランカシャー・イブニング・ポストなど101紙をもつ。
 英国では発行部数が5万部以上の超える新聞社の買収については、メディア所有法から商務省(Department of Trade and Industry)の裁定、認可を受けなければならない。
 ガネットはことし5月、£4億以上を費やし、『サザンプトン・デーリー・エコー』などを発行するNews Communications & Media(Newscom)をめぐり、Trinity+Johnston Pressに競り勝ち、買収獲得に成功している。そして、6月にはいり再びガネット、Johnston Press(エジンバラ、180紙以上)そしてトリニティ・ミラーが三つ巴でRIMの買収を争うことになり、まさに戦国模様を呈している。ところが、7月5日、トリニティは突然、この買収競争から抜けることを表明している。 


7月6日
BSkyB、グラナダをターゲットに メディア規制法の改正いかんによって、マードックのBSkyBが次のターゲットにグラナダ・メディアに焦点を絞り始めた。現行の規制法では、全国紙市場で20%を超える発行部数をもつ企業は放送分野でも20%以上の所有はできない。既にカールトンとユナティッド・ニューズ社から£80億でITVの買収計画が発表されているから、新たな第3社の介入で、イギリスのTVメディア市場の変化が続くだろう。
 なお、グラナダは今年初めオーストラリアのチャンネル7(セブンネットワークのキー局、シドニー)の経営に参加し始めたばかりである。


■番外 1.フォーブスの長者番付2000年  メディア編
      2.2000年上半期10大M&A    メディア編

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