News from London
2000/7/15日号
発行人 鈴木雄雅


 4年ぶりのロンドン。涼しきやと思ったら、暑い、暑いと思いきや、一転して涼しくなり、ロンドンの気まぐれな天候にはいつも泣かされます。 

 PCのアクセスに泣 イギリスの学生はdot.comよりシティーを好む
 テレビの多チャンネル化が生む弊害 JSTV  消えたもの目新しいもの
 ミュージカルよりさだまさし 新刊紹介 UKメディア最前線

 

STOP PRESS
 6月20日のNHK国際放送で、フランスの Vivendi がカナダの Seagram 社を買収のニュースが流れたが、ロンドンではその数日前からFTをはじめ、巨大メディアの誕生か、との報道があった。Vivendi は系列の Canal Plus と組み、英−仏−加の巨大メディア連合体の誕生となった。もちろん Vivendiの狙いは、シーグラムがもつUniversal Music Group とUniversal Picturesといった音楽、映画ソフトである。スティング、U2、「グラディエーター」などなど。
 続いて、ドイツの新興勢力Kirchグループが、老舗の最大手Springer Verlagと放送部門で新会社設立を発表するなど、デジタルへの移行が現実なったメディア産業の変化が著しい。
 Kirch,、 Springer、Vivendiについては1月発表論文「マス・メディアの国際化を考える」と こちら
 

PCのアクセスに泣く イギリスがこうだとは思わなかったが、列を作って待つ社会と思えば、まあ仕方がないか。
 ことの発端は、外線扱いの接続が全くウンともスンとも言わないことに始まった。シドニー、オークランド、バンクーバーといずれもアパートやホテルからの外線扱いで、市内番号必要なしのところもあれば、必要というところなどがあったにせよ、いずれもクリアーできたのが、ここイギリスではなす術がない状況であった。
 しかし、ダイレクトラインではOK、問題なしだから不思議。「土曜日の午後だから交換機が混んでいるのだろう」から始まり、電話番号が違うのでは、どこにでもインターネットカフェがあるからそこでやれば、とまあいい加減というか、サービス精神のひとかけらもない態度に怒りまくった。
 で、結局の解決策は何かというと、外線発信をして、うまいタイミング(早くてもダメ)で受話器をとり、例の「ガー、ピー」が聞こえるまでまひたすら待ち、聞こえたら受話器をおろすと、うまくつながることを発見した。考えてみたら、これ初期に通信で持ち歩いた音響カプラ−なるもの(正式名は忘れた)の応用で、分かりやすいのは電話・FAX兼用電話機のファックス受信のときと同じである。
 この古典的な方法、気がつきませんでしたね。ここまで、いったい、いくらの授業料を払ったのだろうか。でも、これが基本と言えば、基本。便利さ、自動で何でもできるようになると、大事なことを忘れてしまうのかも。
 基本的には通信回線のインフラの高級化と、ホテルなどのPBXなどの機器を最新にすることだろう。もっともあちらこちらにあるインターネットカフェ(easyEverythingなど)がはやるのも無理はないが、ホテルのビジネスセンターの使用料をちゃっかりとり、できるということで入った部屋がPC接続ができないなど、いささか問題なのではありませんかね、英国政府観光庁(BTA)ほかの皆さん−このことをきちんと宣伝パンフに書きましょうよ― 「イギリスのホテルなど宿泊施設では外線扱いでPC接続ができないことが多いことにご注意ください。ホテルのスタッフも十分な知識を持ち合わせていませんので、その点十分にご用意してください」とか。
 電話料金の低価格競争はここでも盛んだが、時々回線がおかしくなるのは昔からあった。その辺りをもっと改善して欲しいですね。欧州でインターネットオ接続料金が一番安いと言っても、インフラが…。

イギリスの学生はdot.comよりシティーを好む 大学生の就職先には、実はインターネット会社などよりは、12時間働いても投資会社などの方を好む、という結果がでているのは意外だ。また学士、修士といった学位がよい職業を保証するとは限らないと思っており、給与はいいに決まっているが、7割の学生は高級より自分の時下をもててレジャーにいそしめる労働環境を好むといったところは、何やら若者に共通するようだ。
 ちなみに、この調査はFT社が24大学の学生を対象にしたものだが、97%がインターネットを日常的に使っているという。                                 (以上、
Sunday Business 18/6/2000 から)

テレビの多チャンネル化が生む弊害 一躍有名になった地下鉄内のフリーペーパー『Metro』から 過去2年間、テレビへの苦情(Broadcasting Standards Commission)は急増し、3,559件から5,138件と44%も増加した。ヌード、セックス描写がその第1の原因で、確かに深夜のC4、C5あたりは日本のお茶の間からもビックリの番組さえある。またBBC1、2もアメリカ映画を放映しており、数年後にはエンターテイメント・チャンネルになりそうな気配。まあ、以前と比べて格段に「おもしろくなった」と思うのは私だけでしょうか。

話題のフリーペーパーMetro(左)
右は有名なピカデリーサーカス Fosterの看板がなくなってしまった

 

地下鉄ノーザンラインのColindaleにある新聞図書館/1997年に新しくなった大英図書館(Euston と Kings Crossのちょうど中間地にある)  

JSTV 92年から有料チャンネルとなった日本語放送は朝から夜までの放送となっている。主にNHK、TBS,フジの番組が同時または数か月遅れのドラマ放送などが見られる。ちょうど1―3月に日本にいなかったときのドラマが放送され、しかもCMぬきだから、まるでレンタルビデオを見ている感じだ。
 皇太后陛下逝去、選挙のときは特別番組が組まれ、日本と同時中継された。時差が8時間(夏)だから夜11時に翌日の朝のニュース、また午前11時に同日夕方6時のニュース、日曜日にはNHKのスポーツニュースが流されるから、ホント便利なもの。ちょうど選挙時に重なったので、日曜午後には午前中の各党党首の座談会や立候補者の政見放送も流されるので、在外選挙権の問題も自然とでてくるのも当たり前となる。
 日系新聞はシドニーなどに比べれば、入手しやすい。あちらこちらで日経、読売、朝日の衛星版が購入できる。一部売り£2.7、1.2、1.7。電話料金は高くはないが、市内一律ではないのでインターネット接続は加重されるため、接続しっぱなしで、ラジオや日本語新聞放送を聞くのは割高にはなるところが、ちょっと気になった。


消えたも目新しいもの 92年に半年暮らしたロンドンから消えたものは、その年オープンした「そごう」と「ヤオハン」。後者は、いまやオリエンタルシティーなどと名前をかえて営業しているが、二つとも日本系でありそれが消えたというのはバブル日本の象徴だったかも。
 ところでロンドンで、新聞学科生必見の、サウスバンクにあった映像博物館MOMI(Museum of Moving and Image)は昨年から休館となっている。再開館は4年ぐらいあとらしい。
 よく分からないミレニアム建造物はともかく、ロンドン名物の地下鉄 Underground に新車両が増えて、わりときれいになったこと。また車内アナウンスが頻繁にはいり、「××駅でただいますりが発生しました。乗客の皆様身の回りにご注意ください」とか、Green Park駅では、日本語で案内する人もいる。
大型チェーン書店の Waterstones が前にも増して、あちらこちらにあり、Simpsonsまでも消えて、ピカデリーの名物が変わってしまった。そしてそこにWaterstones が。さらにDillon’sまでも。
 ここロンドンでもStarbucksの勢いがすごい。もっとも紅茶はグッドだが、コーヒーに関してはアメリカと同じで、うまいとは言えなかったから、まあいいか。書店内にカフェをつくっての流行は、ロンドンも同じ。
アメリカのBordersがロンドンでも2軒は進出している。

ミュージカルよりさだまさし? 

 6月22日にロイヤル・アルバート・ホールでさだまさしさんのロンドン・コンサートが行われるというので、一番高いボックス席〈£40)で楽しみました。
 2階のボックス席がどういうものかも見てみたかった。確かにリッチな気分を味わえるが、その前に吉本がここで公演したそうで、どちらかというとそれを見たかったような。公演中は撮影禁止のため、ホールの様子だけをご覧ください。
 ゼミ卒業生のSさんがここロンドンで勉強中。数回お会いして、ロンドン事情を異文化の話を交換しました。大学院に進まれるそうです。またNHKロンドン支局勤務Iさん(大学院修了)とも卒業以来初めてお会いしました。Iさんは7月上旬には帰国し、シドニー五輪をはじめとしてスポーツを担当されるそうです。

新刊紹介
J.Curran and Myung-Jin Park, ed., DE-WESTERNIZING MEDIA STUDIES. London]Routledge, 2000. £16.99 世界の27人にマスコミ研究者が、中国、、南米、中近東、ロシア、メキシコ、韓国、台湾、マレーシア、ジンバブエ、エジプト、日本、アメリカ、オーストラリア、スウェーデン、イタリア、南アフリカ、フランスといった国々や地域を対象に、旧来の「自由に関する四理論」を超えて多面的な分析を
試みている。「日本におけるメディアと権力」の章は、杉山光信・東大教授が執筆。
・Timothy Marjoribanks, NEWS CORPORATION, TECHNOLOGY AND THE WORKPLACE: Global Strategiesm Local Change. Cambridge University Press, 2000. £12.95 タイトルのとおり、マードックのニュースコーポレーションを本の中心に据えてはいるものの、技術、経営面で21世紀のメディア産業を行く末を考える本である。
・Shelton A Gunaratne, ed., HANDBOOK OF THE MEDIA IN ASIA
. Dehli: Sage, 2000. £49.
おそらく、A.J.Lent ed., Newspapers n Asia
(1982)以来の、アジアのマス・メディアを包括的に扱った書であろう。南アジア、東南アジア、東アジアの三部25か国のマス・メディアを紹介する。資料も1999年までを扱っているので、新しい。日本は東京女子大・斎藤真一郎助教授が執筆している。





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