Research
Research Theme
天然物化学は、自然界に存在する生物活性有機化合物(天然有機化合物)に関する学問領域です。天然有機化合物は地球誕生以来、自然淘汰の末に勝ち残ってきた物質であるため、一般的にその化学構造や生物活性は多岐に渡ります。有機合成化学的に挑戦的な複雑な構造をもつ化合物の全合成研究や、驚異的で多彩な活性をもつ未知化合物の探索・生合成研究など、天然有機化合物は多くの科学者の興味を惹きつけてきました。
このような天然物化学の先進的研究は、天然有機化合物が啓示する神秘に満ちた現象の科学的究明に繋がるだけでなく、人類や社会に役立つ新しい医薬品、農薬、香料、化粧品、化学工業製品等の開拓や創製に大きく寄与しています。
当研究室では、天然物化学や全合成研究、ケミカルバイオロジー、細胞外マトリックスに関連する種々の研究プロジェクトを展開しています。そして、基礎研究を基盤として、広く社会貢献につながる研究を推進しています。
- COPDバイオマーカー/エラスチン架橋アミノ酸desmosine類のケミカルメディシン研究 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は別名「たばこ病」とも呼ばれている肺の生活習慣病です。WHO(世界保健機関)によると、現在全世界の死亡原因の第3位を占めているものの、有効な治療薬の開発が遅れており、未だバイオマーカーも見つかっていません。当研究室ではCOPDの早期発見のため、バイオマーカーによる診断法の開発を目指して、肺胞の構成成分の一つである弾性線維エラスチンの架橋アミノ酸desmosine類の化学合成と、それに基づくLC-MS/MS定量分析に成功しました。さらには、これまで長い間、謎に包まれているエラスチンの架橋部位を中心とした三次元構造の解明を推進しています。
- イオン液体/深共晶溶媒による天然有機化合物の革新的抽出・単離法の開発 イオン液体および深共晶溶媒を利用して、植物に含まれる有効な生物活性天然有機化合物の効率的な抽出法の確立してきました。これまでに、イチョウ葉からインフルエンザ治療薬タミフルの工業的出発物質であるshikimic acidを、従来の有機溶媒による抽出法よりも2倍以上効率的に抽出できる手法を開発しました。その他、サツマイモ葉からポリフェノールcaffeoylquinic acidsや、レモンマートルから精油成分citral、サントリソウからセスキテルペンラクトンcnicin、ポンカンからフラボノイドnobiletinをそれぞれ効率的に抽出・単離することに成功しました。
- HAT(アフリカ睡眠病)治療候補薬セスキテルペンラクトンcynaropicrinの全合成および構造活性相関 HAT(アフリカ睡眠病)は、アフリカ大陸で古くから知られる風土病です。その原因である寄生虫Trypanosoma bruceiは、ツェツェバエを媒介として人や家畜に感染が広がり、放置すると確実に死に至る深刻な疾患です。最近、このT. bruceiに対して殺傷作用のある植物系天然有機化合物が相次いで発見されています。当研究室では、アフリカ睡眠病治療薬の提供を目指して、化粧品材料としても期待されているアーティチョーク有効成分であるcynaropicrinの世界初の全合成を達成し、作用機序解明のための構造活性相関研究を展開しています。
- 上記のほか、アロマ植物由来の香料に関する研究も遂行しています。
- 当研究室の卒業・修了生の主な進路: 博士後期課程修了:アメリカ・ノースウエスタン大学 コンゴ・ロヨラ大学 博士前期課程修了【技術総合職】:デュポン 凸版印刷 宇部興産 ENEOS マルホ 出光興産 日産化学 JNC 花王 東レ ライオン 高砂香料 富士フィルム AGC コスモビューティー ADEKA 伊藤園 日本製紙 スリーエム 日東電工 東洋インキ 日本食研 セントラル硝子 小川香料 日産自動車 ニチアスコーセー 北興化学 三菱ガス化学 ミヨシ油脂 資生堂 三栄源FFI エア・リキード 東洋濾紙 日東紡 千代田化工 東洋エンジニアリング 住友化学 長谷川香料 三菱ケミカル 博士後期課程進学 学部卒:デンソー 曽田香料 日立情報システムズ 野村證券 豊田通商 資生堂 他大学院進学
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