<はじめに>

 2011年度、私たちの「ドイツ社会研究」は3.11福島原発事故の発生を受けて、春学期のテーマとしても秋学期のテーマとしても、3.11に関連した主題を取り扱ってきました。春学期は、原子力発電に関する問題や課題を社会的観点から研究し、秋学期には現在の日本社会が抱える問題を念頭に置いて、主に東ドイツに関する文献を読み、考察を重ねてきました。

 春学期、私たちが「ドイツ社会研究」の中で原子力発電を始めとするエネルギー問題をテーマに挙げた理由は、福島原発事故の発生を受け、日本に対する海外の注目が集まり、特にドイツでは事故後、原子力発電の存在意義が問われるほど国を揺るがす議題となったからです。ドイツの動きは、ひるがえって日本でも大きく取り上げられました。こうした状況を受け、原子力に焦点を当てて、日本とドイツにおける考え方から政策の違いまで、様々な観点から過去・現在・未来に分類しながら議論を続けました。

 そして秋学期、私たちが「(旧)東ドイツ」(現在のドイツでの一般的な言い方では「新連邦州」)の事例を研究してきたのは、「東ドイツで問題になってきた事柄と、現在日本で取り沙汰されつつある問題に相通じるものがある」印象を受けたからでした。

 旧東ドイツ地域は現在、さまざまな課題を抱えています。高い失業率、人口減少、都市計画、地域活性化、環境問題、隣国との関係改善、外国人の受け入れ、少数民族と多数派の関係などなど。これらの、多かれ少なかれ日本にとっても無縁ではない課題が、旧東ドイツ地域においては集中的に表れていると考えることもできます。

 その意味で、日本の一足先を行くかのようにもみえる東ドイツ。「東ドイツ地域をみることによって、困難ななかでどこに希望や活路がみいだされうるのかを考えていくことは、日本の現状や未来を考える視点にもなるにちがいない。」という思いをもとに議論を続けてきました。

 そういった資料を取り扱っていく中で、個々人が興味を抱いたテーマを一つとりあげ、調べあげたその結果をさまざまな形で発信していくことが、このゼミでの慣習となりつつあります。このウェブサイトが皆様の興味、関心のきっかけ、3.11後の問題を考えるうえでの一つの情報となれば幸いです。