上智大学法科大学院と環境法
2004年4月に開校する上智大学法科大学院の特徴のひとつは、環境法科目の重視です。公害対策からはじまった日本の環境法は、まちづくり、生物多様性保護、物質循環など、多くの領域にまたがる学問分野となりました。被害者救済の必要性はかわることなく存在していますが、現在では、それだけではなく、将来世代に継承すべきよりよい環境の創造のための法システムの探究も重要な課題となっています。企業活動においても、受け身的ではなくて、より積極的に環境法をとらえて、コンプライアンスの大きな要素としているところが増えています。環境NGOは、ますます大きな役割を果たすことでしょう。そうした時代状況を考えると、法科大学院における環境法教育は、現代社会にとって重要な意義を持っているといえます。上智大学法科大学院が環境法を重視するのは、こうした理由からなのです。
法科大学院授業
環境法政策
環境法とは、現在および将来の環境質の状態に影響を与える関係主体の意思決定を社会的に望ましい方向に向けさせるためのアプローチ、および、環境損害の調整・救済に関する法である。本講義では、環境法の基本的考え方、環境法システムのメカニズムを概観したあと、法律・裁判例・行政実例にみられる法解釈的論点・法政策的論点について、主要環境法を素材にして検討する。さらに、「分権時代の環境法」という観点から、法律と条例の関係、そして、自治体現場における法政策および法執行の実態にも、適宜論及する。
- 北村喜宣『環境法〔第3版〕』(弘文堂、2015年)
- 淡路剛久ほか(編)『六訂ベーシック環境六法』(第一法規、2014年)
環境法実務演習(越智敏裕教授と共同担当)
本演習では、基本的法律科目に関する基礎的知識を受講者が有していることを前提にして、環境法紛争と環境法適用について、実践的な検討をする。 実定環境法の理解を深めることは、環境法学習の大きな目的であるが、たんに法律の条文知識だけでは不十分である。条文の文言から、具体的にはどのような場面を想定できるのか。どのようなタイミングで誰がどのような訴訟を提起する可能性があるのか。それに対してどのような反論が可能なのか。どのような条件が満たされれば規制が具体的に適用されることになるのか。それはどのような条文操作によって説明できるのか。現行法制度のどこが不合理でどのような法政策対応が考えられるか。このような作業をすることにより、環境法をより深くかつ広く学ぶことができる。
- 北村喜宣『環境法〔第3版〕』(弘文堂、2013年)
- 越智敏裕『環境訴訟法』(日本評論社、2015年)
- 淡路剛久ほか(編)『六訂ベーシック環境六法』(第一法規、2014年)