コラム　夜明け前（旧ゼミニュース掲載分ほか）　2002/9/26 更新

１９９４年　　１９９５年　　　１９９６年　　１９９７年　　１９９８年
 １９９９年　　２０００年　　　２００１年　　２００２年

※ここに掲載される内容については発信者個人の考えで、筆者の所属する大学、学科を代表するものではありません。

★２００２年
９月
大学も９月にはいり、学生はまだ夏休みが続くものの、学事は始まった。ことしは大学院の社会人入試をスタートさせたこともあり、上旬からフルスタート。生涯教育といった側面で大学（院）が社会により開かれる時代になったのはいいが、反面経済不況からあたかも失業対策、官庁の利害得失、はたまた再雇用をめざしたセイフティーネットの代役的な役割を負わせようとする政策には大きな疑問をもつ。専門大学院の拡充・推進にあたり、はじめから予備校ルートを確立させるような、いかにも政治性を帯びた出発は、既に大学環境の整備つくりに誤った道をひくことになりつつあるのではないか▼大学新聞からのインタビューを受ける。ときに大学新聞から自分が所属する大学情報を知ることが少なくなくなっているような傾向は、その存在意義をたたえるべきか、はたまた学内情報の貧困さをなげくべきか。それでも、永田町論理のように、大学新聞に書かれると神経質になるのはどこも同じか。にしても、「言論の自由」「表現の自由」がないキャンパスは、ある意味で学生の声を尊重していないわけで、大学環境の改革、向上が教員、職員、学生の三者の協力によって培われるという理念をみずから放棄しているようで情けない。とは言うものの、どの大学も横をみつつ、上を見てという態度は日本社会的体質を見事に体現しているようでもある▼大学院ゼミ合宿はことしも雨にたたられた。昨年は台風で帰京できず、さらに９・１１事件がおいうちをかけた。今年は小泉首相が北朝鮮へ国交正常化にために17日日帰り。2年続いてゼミ合宿が国際問題とかかわる（？）。こうなると来年は何がおきるのだろうか▼2日続いた懇親会の場では、中国、韓国、日本といった出身母国を反映した意見がかわされ、それぞれが出身国を見直す機会ともなり、学問能力を高めると同時に有意義なときを過ごせたと思う。こうした環境を大事にしたい。教えるということは学ぶことでもある。感謝▼最終週に2泊3日の学部ゼミ。総勢30名余り。今年はグリーンピア津南（越後湯沢）。冬ならスキーだが。とにかく２、３、４年の学年、個人発表の連続。途中フリータイムはあるものの、かなり内容の濃い時間を過ごす。全員プレゼンにPPTをこなすようになったが、それに内容が伴うかどうかは別。ところで現地でゼミ卒業生のS君夫妻に声をかけられビックリ。3歳のお子さんをつれての取材とのこと。S君はネクタイ姿で朝職場へとあわただしいときだったが、外国の地よりも国内でであった卒業生らが妙にまぶしかった。

あっといいう間に半年以上経ってしまった。以下手短に･･･
８月　２年ぶりにシドニーへ。まったくの家族旅行なので、仕事はしづらいが、合い間をぬって友人やブリスベンで勉強中のゼミ生にあう。外国の地で現役の留学生と出会うことは珍しい経験で、そう多くはない▼彼女の生活ぶりを聞くと、大変興味深かった。最初の数か月はトラブル続きだったが、いまは安定したようだ。いつもながらに思うが、身体への危害や犯罪に巻き込まれることを除いたトラブル、主にステイ先や住居に関するトラブルは社会生活を営むうえで、国内外問わず、起こるもの。初めてのひとり暮らしにはつきもの。そこで必死になって「英語」をつかい、自分の立場や考えを主張することが、一番の生きた英語を使う経験になるのではないだろうか。文部科学省的に言えば、生きる力、総合学習だろう。経験は宝だ▼そう言えば、現地でのガイドさんの日本語も、それぞれのバックグランドでずいぶん違う。いつもは全て自分で動くので、日本語ガイドさんと終日行動をともに経験することがないから、面白い発見が少なくなかった。オーストラリアの日本語学習度は世界でも高い部類だが、学校的日本語を話す人、社会人経験をした人、そして各人の出身母国の国民性（？）などが反映されているように思う▼韓国からのワーキングホリデーの若者がオーストラリアに進出して、日本人以上の活躍ぶりが知られるようになっったが―例えば、寿司チェーン―、中国人団体観光ツアーもよく見かけ、中国の観光パンフレットも用意されているのが目立った。日本人パックツアーも、大型バス移動から個別グループ行動になったようで、観光スタイルにも変化が見られる▼ところで、シドニーの中心街の最新ショッピング地に日本の大手書店が先月オープンした。これまでノースシドニーにあったのが移ったとのこと。ワンフロアーを占め、3分の１は日本語、中国語書籍・雑誌売り場だが、ほぼ地元書籍店―DYMOCKS、ANGUS & ROBERTSONなど―と競合する売り場面積をもつことら、かなりの脅威となるだろう。

７月　いつもは６月にある学会が７月上旬新潟で、１週間後には国際シンポジウムでソウルへとでかけた。学会は勉強もあるが、他大学の先生や大学院生と懇親できる場として活用できる。ソウルでは午前中のセッションの司会を務め、参加者も多く、企画コーディネーター役のひとりとしてホッとした。卒業生らが集まってくれた▼中旬に授業は終わったが、後半は会議と雑事が集中的。これで授業があったら、パニックだろうと思う。月末に行われたオープンキャンパスは、昼食もとれないくらいの大盛況。すきすきのブースよりはいいだろうが、聞かれることは同じ。大学教員と「お話できた」り、公開授業を体験できたりがいいのかも。ただ、編入希望の学生や社会人からの相談もあるから、少しづつ変わっていることは確か。そういえば、参加者から「大学は何をしてくれるのですか」といった質問が増えるのはいかがなものか。（偏差値で）選ぶ（選ばれる）大学から自分で選ぶ大学の時代になりつつあるとはいえ、あまり何をしたいかを決めすぎると、目標からの効率性のみで大学を選ぶ―（勝手に思い込みが激しいから）大学という存在を深く理解できない（しようとしない）失望度が高い―結局自分が何をしたいかわからなくなり、すぐにあきらめるが、批判だけはする―といった傾向が垣間見られはしないだろうか。物事を理解し、自分の知識や知恵として得るには時間がかかるもの▼ところで、大学教育関係では、相変わらず国立大学の独立法人化の記事は多いが、新しい問題として、入学辞退者が納めて入学金、授業料など不当性（新聞によっては「ぼったくり」なる言葉を用いているが、これらを主張する支援グループに乗じているようで、感心できない）が主張されている。確かに合格者から一定（入学金、授業料、施設費ほか）の金額を納めさせ、その後辞退したものに一切返却しないというのは、時代に沿わない過去の遺物かもしれない。それはそれで、改善されるべきだと思う。しかしながら、各紙が報じる内容は、そちらが「是（良）」で、大学側が「非（悪）」であるかのように映ってはいないだろうか。もともと消費者金融ローン（いわゆるサラ金）のためにつくられた法律論を持ち出してきたところは感心するが、辞退者確保のため補欠試験を行ったとしても光熱費、人件費は数万しかかからない、といった主張をそのまま伝えたり、きちんとした大学側の意見や主張、裏づけをとっているものとは思えない報道が散見する。私大の定員割れがいったいどういう意味合いになるのか。いまの私大の入学者確保がどういう背景でできあがっきたのか。そこにセンター試験と国立大学（国）の入試制度がどう絡んでいるのか、などなど。そのうち、旅行業の申し込みのように、キャンセル日により、％を乗じて返却、徴収とするシステムだといいとでもいうのだろうか―そういう大学があってもいいだろう。

▼６月　

▼５月　大学の新学期が始まって数回の講義でゴールデンウィークを迎えると、ちょっとウツになる。アイドリングからようやく始動に入るところで休みといった具合（曜日によっては２回休み、エンストする感じになる）だから。とくに1年生の場合は、どうなのだろう。どうせなら、１学期13回程度の半分あたりで･･･とは虫が良すぎるか▼連休中に歌舞伎など2件観劇。久しぶりに大衆の動きを観察できた。年のせいかもしれないが、道すがらあるいは観客をみながら、高齢者がどこへいっても高齢者が多い。

▼４月　

▼３月　予想はしていたが、学会の国際シンポジウム打ち合わせのため突然のソウル出張。同地で卒業生と懇談もできたから、よかったのだが、これでニュージーランドへの資料収集ゆきはキャンセル。大学教員（私立）に春休みはせいぜい２週間前後だろう。２月は入試、３月は年度末後片付けが終われば卒業式、新学期となる。

▼２月　毎年恒例の入試の季節が始まった。志願者数の減少は教員の負担は軽減されるものの、私学は受験料収入が減少することが大きな問題となる（教員給与にも？）。定員をわれば冷たい視線を浴びるし、多すぎると上のほうからお小言を頂戴する。何時の間にやら、ＡＯ入試も早期の定員確保といった流れに動いているようにも見える。しかも、人数が確保されるために、二次、三次までやるところも少なくない。

▼１月　ジャーナリズム史の授業評価を学生に行ってもらうのが時間がなくなり、2001年度のアップができず、反省。卒論発表はようやくＦＤ提出、ＨＰへのアップから当日配布資料の全文ＰＤＦ化を行えるようになった。学生一人一人がそこまでできるように、また自覚ができるようになるにはまだ遠い道のりかもしれない。学年、個人差がまだまだありすぎる。いやもっと違いがでてくるかも。「失われた10年」学部学生はようやくここまできたが、大学院生に関しては90年代初頭の状況。お寒い限り。

１月
あけましておめでとうございます。

★２００１年

１２月
オーストラリアゆきは例の9･11事件の余波でキャンセルとなり、札幌へ。久しぶりに卒業生らとあう。冬休みは卒論約20本の査読と修士論文、博士論文の執筆指導に明け暮れそう。依頼原稿も2本書かねば▼ようやく卒論が終わったが、72時間前完成としてから久しぶりに提出前日夜までなだれこんでしまい、少々お冠のS教授となった。1年前からの設定スケジュールも絵に描いた餅になる。これで卒業できる（させる）というのは甘すぎるのでは▼12月にはいり卒論の締め切りが近づき、連日ゼミ学生とのアポ。携帯がでてきてからのドタキャンが困りもの。指導教員とのアポをそんなに簡単にキャンセルしてしまう、遅刻、寝坊といった学生生態をどういおうか▼その合間をぬって、海外の大学への推薦状、なぜか一時帰国者のラッシュ。それでも、卒業生が研究室を訪れてくれるのはうれしい。某日アニメの海外進出の仕事をしているＴ嬢、海外の大学へ留学予定のＳ嬢をはじめ、同級生の話や、会社の様子などを話しを聞く▼あちらこちらから『大学生の常識』の反響メール（おおげさか）をいただく。中には、本当に先生ですか？という声も。Ｓ教授に言っておきましょうと答えている。卒業生から学生時代の告白もあって、なかなかおもしろい。まとめて次の材料にしたいくらい。

１１月
人生初の単行本を出版。自伝的大学論・大学教育論（論になっていない？）『Ｓ教授の非常識』といったような内容だが、出版タイトルは『大学生の常識』(新潮社刊、1,000円）。大学に勤めだして定年までのちょうど半分、折り返し点のようなところで、ひとつまとめるものを世に出した感がする。出版の労をとってくれた編集者、協力してくれた友人、ゼミ卒業生に感謝する次第である。載せられなかった部分もあるので、機会をみて、この後Webであげていきましょうか▼二つ目の人生初は、ようやく博士の学位（論文博士）授与が決定された。3月提出でほぼ1年近くかかった。いまさらながら、２０年前、いや10年前に出せたものをとも思うが、タイミングを逸すると、こうなるといういい反面教師になったのだろうか。現在の博士後期課程の学生が課程博士をとらずに中退していくことは残念でならない。

１０月
大学の後期が始まった。いつものあわただしさに、学会の記念シンポジウムのお助け人として貢献。あっという間に１か月が過ぎた。卒論執筆作業があまりに進んでいないのに、「切れそう」になったが、同僚の一言でわれにかえる。同窓会創立40周年の記念事業として会報の合本を出す作業が始まり、年内完成を目指す。

９月
このところゼミ卒業生と会う機会があった。３年前に卒業のＡさんには原稿関係のデータをお願いしたり、またリクルートや将来の相談を受けたりと、卒業後も元気な姿をみると、一安心する。こちらからのお願い事もあったりするが、みないやな顔せず応対してくれる。大学教授の貴重な財産である。そうした人的ネットワークが大切なことは誰しもいうが、それをまた彼ら彼女らに受け継がせていくことも大事なことだろう▼９－１０日の２泊３日、大学院ゼミの合宿で再び軽井沢へ。初日は学会の理事会と重なり、夕食後に10月に開かれる学会で報告する院生の発表練習。２日目の日曜日は午前中、ジャーナリズム研究会の研究報告、討議。昼食をはさんで院生後期の読書文献について討議。夕食は打ち上げをかねる。ところが３日目の月曜日台風15号の雨嵐に襲われ、ＪＲ新幹線がとまり、道路も全てアウトになり、孤立。５名は車で迂回帰京したが、私を含め５名がもう一日泊まる羽目になった▼夏休みに入っても、学会の記念誌編集作業の校正で１週に一度は編集会議を開く。４５０頁もの大著に皆の苦労がにじみ出ている▼その合間に、原稿を書き続け、ようやく２本を書き上げるなか、ずいぶん前に執筆した原稿のゲラ校正が舞い込む。秋に出版予定の本の原稿執筆に追われるが、企画からほぼ３年も経つので、編集者に申し訳ない気持ちでいっぱい。博士論文の手直しもまだで、これも製本のことを考えると早くしなければ。

８月
７月31日から８月２日までゼミ合宿（学部）で、軽井沢へ。確かに東京より涼しいが、ヴァンクーバーほどではなく、蒸し暑い気さえした。２泊３日、学生のPC能力の進展に驚く。３年生はほぼ全員パワーポイントで卒論の仮テーマを発表した。内容の問題はあるにしても、２年生にはいい目標となるだろう。▼行きかえりの車中、この夏休みに原稿３本ほかを片付けなければならないと思うとゆっくり本も読めないか。実際夏休みもかつての２か月から1.5か月と短縮傾向にあり、さらにこの中に2度の合宿が入ると実質1か月程度である。大学教授が休みが多いなどととかつての夢物語であろう▼学生たちは相変わらず海外にでる計画でびっしりのようだ。いい経験になるだろうが、事故だけには気をつけて欲しい▼このところHPの表紙に小笠原在住のかたが時折送ってくれる写真を掲げるようになって３回目。月１回程度の更新をしているが、そろそろ表紙全体を更新しようかとも思っている。これまでの表紙写真はこちら▼７月末に刊行した同窓会の会報の発送作業を行う。平成年度の卒業生でも８００人近くを一気にだした。院生らに協力してもらうが、発行作業が毎回悩みのタネ。

７月
猛暑が続く毎日。暑中お見舞い申し上げます。
▼アサイメント、レポートの採点をしていると珍答がみつかる―「ヨーロッパで発行されている新聞を読んで」で、いきなり「メジャーなタイムズ紙･･･」から『ニューヨーク・タイムズ』をとりあげたり、新聞の価格が35ポンド（35ｐ＝35ペンスの間違い）、「大衆新聞なのでタイムズは･･･」＝もっともこのところその感がなくもないが、ときたりする▼最終週、ヴァンクーバーで1週間避暑（？）にでかける。毎日23℃、東京と比べて10℃、体感温度では15℃くらいの差があり、猛暑の東京都はうってかわって、涼しさをとおりこして肌寒いほど。ウィスラーで初めて乗馬をしたり、ビクトリアでは水上飛行機の乗ったりと、楽しい日々を送った。昨年は毎日図書館通いだった。今年の夏休みはこれで終わりか。

６月
▼前月に限ることではないが、土曜日は大学が「休業＝仕事をしてはいけないとい意味らしい）」したのはどこかの話のようで、研究会や学会理事会などで休むわけにはいかない。大学図書館、コンピュータセンターも午後にはしまってしまうから、学生のみならず、勉強意欲はあがらなくなる。授業を入れていない研究日（勝手に称している）でも、月―木ではできなかった雑務、夕方の院ゼミなどで１か月に一度くらいしか在宅で研究時間に当てられない。いったいみなどこで研究しているのか、不思議なくらいだ▼最終週は講演会のコーディネート、自身の論文博士号の学位申請の公開審査と続き、落ち着かなかった。前者は企業が講演会を開催するときの気配りなど、様々なことを学ぶ。かつてはそうだった自分を反省する機会にもなった。組織、システムというところだろうが、大学人は自営業で、ひとりで小間使いから社長までしないと何も動かないところで、助けてくれる学生や同僚がいると本当に助かる。何事もひとりではできず、多くの人に手伝っていただき、成功させることはどこも同じ。いつも手足となり助けてくれる方々に感謝。とくに大学院学生諸君

５月
▼韓国の学会と日本の所属する学会共催で両国で交互に開催される国際シンポのホスト校になり、上旬は連休明け１週間は毎日ほぼ徹夜。さらに当日の報告までおおせつかったので、１年分の仕事をしてしまったと思うぐらい。幸いその余波＝授業時間の休講など＝がなかったとおもったら、それまでとめていた様々なアポや仕事が一気に噴出し、シンポが終わっても結局、６月上旬の２週連続学会で京都行きとも重なり、約１か月は走りっぱなしであった▼そのため、携帯を常時「オン」にしておくと、やたらに鳴る。いつもは発信専用だが、印刷や会場手配などわずか１,２週間で本来なら１年かけてやることをやったので仕方ないにしても、授業中に「オフ」する勇気もいることに気づいた▼

４月
▼あっという間に春休みも終わり、新学期が始まった。２年生のゼミは２年続けて10名を超え、新歓コンパも熱気溢れる状況。院生や今年卒業したフレッシュな社会人も参加してくれて、感謝。
▼今年ぐらい「暗い」新学期を向かえたのは初めて、というぐらい仕事が立て込んでいる。いつもは12月に向かって「明るいクリスマス」「明るいお正月」というのが口癖だったが、昨年度後半はサバスあけで１年分を半年でこなし、３月に少し休養かと思いきや、予期しない出来事が続き、博士論文提出もありで、そのまま４月に突入と並行して、あれやこれやと舞い込む仕事。もう楽しみは今年の後期はすこしは余裕がもてるか、となってしまった。
▼そう言えば、2001年度からマルチメディア教材の開発促進で新たなサイトを作ったが、それまでの経緯をまとめたものがあったので、掲げておく。90年代以降の話とはいえ、どこかで役立つかも。

３月
▼３月末に一昨年以来の、二度目の台北訪問。同級生、卒業生の歓待を受ける。今回はまったくの休暇なのでリラックスできた。早速HP表紙が淡水のお城に。
▼一方、学生諸君（３年生）はいまや就職活動（就活）真っ盛り。ますます早まる職活と、なんと３年卒業を打ち出す文部科学省。自説の、短大が４年制大学移行が完了すると、４年生大学が短大化する予想が見事に的中か。これで、実質４年制大学の２年間しかまともに勉強できない（しなくてもいい？）状況がでてくるだろう。卒業単位（１３６）の軽減化（１２４）にいっせいになびく大学側もまともじゃないが、国家の教育が何か誤った方向に進みつつある今日、「何でもあり」が浸透すれば、倫理観などを持たせることよりも、規則ばかりの方向に動くのが目に見えているのではないだろうか。
▼ようやく学科サイトと関連の大学院サイトの仮運用を始めた。これをプラットフォームとして学科、専攻授業の開発を進めたいと考えている▼卒業式を終え、今年も10人ほどの学生がゼミから巣立っていった。3年間の集大成もオンラインでのゼミニュース発行までたどりついた。それを読みながら、彼らがいうほど、私のゼミは十分に学生の能力を開発できているのか、と落ち込んでしまう。10年後の彼らが楽しみである。学生時代に経験させたHPつくりをこれからどのような形で開花させていくかも、新しい観察対象としたい。
▼いよいよ博士論文を提出することになった。思えば15年。出すときに出さないとこうなる悪例か。Ａ４判サイズで総頁280頁余り。図表など50頁あまりがさらに付録としてつく。この間ワープロ機をいくつ買い換えただろうか。現在バイオの最新モバイルを予約中。これは4月からの授業に備えての移動用にする予定である。
▼某日、優良免許（５年）の更新に出かけた折、遅い昼食をとりながら、持参した書（井上安正『検証！事件報道』宝島新書､2000年）を読んでいると、ゼミ卒業生のＹ・Ｈ君の名が登場している。社会部警視庁担当で、ある事件の聞き込みの様子がリアルに伝わってきた。彼には以前、後輩たちに支局勤務の様子を話してもらったことがある。平成も十年以上たち、十年選手となった卒業生が社会のなかで後輩たちをリードする立場にもなったのか、と感慨深いものがあった
▼昨年に続き、研究会の成果を学科紀要に掲載することと並行して、学科卒業生の同窓会会報45号の編集も行う。論文はpdfファイルのソフトで作って掲げてみたが、すでに今年の卒業論文をpdf.を使って掲げたゼミ生がいるので、一歩リードされた感じである。学生にもpptだけでなく、グレードアップした目標を設定させるつもりである。
▼大学学部と大学院時代にお世話になった恩師、小糸忠吾・元教授（89歳）の訃報（3/6）
▼ゼミ卒業生のＭ・ＹくんのＨＰがおもしろい。十年の詳細が日記風に語られている。笑い話ですむことは、本人当時は冷や汗ものだっただろう。
▼ようやく、授業評価（2000年度ジャーナリズム史）ができあがり、アップした。「わかりづらい」授業を反省しなければならないかな。

１－２月
　今年は修士論文指導が１名だったので、昨年度の３名に比べて楽だったが、学部の卒業論文審査のために２０冊近く、修士も数冊は読まなければならないことには変わりはない。しかも学年末でレポート、試験問題作成、採点、評価に加えて、入試の出題、監督、採点、面接と続き、大学院もあるから、あっという間に２月が終わった。毎年この時期春休みを迎える学生諸君がうらやましい。
▼4月からの演習（ゼミ）の募集をかねたプレゼンテーションを二度行う。正式には4月に入ってからだが、12名ほど参加してくれた。合意では一教員10名ほどだが、年によって差がある。試験をするとか、強制的な配分といった方法もなくはないが、学生が教員を選ぶ（教員が学生を選ぶのではなく）伝統が続いている▼３月末の原稿依頼（書評）が１月執筆予定者の都合がつかなくなったとかで、急遽引き受けてしまった。何とかなるとは思ったが、いわゆる寝かせて億時間がなかったので出来栄えがきになる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
★２０００年
１２月
　いよいよ卒論の締め切り（１２―１５日）。数日前に完成するものもいれば、、添付メールで校正を届けたり、何年も前から最後はファックス頼りとなる学生もいる。おかげでとぐろをまくファックスからカッター式に買い換えたりもした。ゼミで３年も付き合っていると、どの学生がどういう性格か分かっているにしても、経験から７２時間前にはプリントアウト状態にするよう指導している。何せ、パソコンを使ってのご時世だから、１分後には正常でないこと、そしてその対処処方を心得ていないと、大変なことになる。毎年学生に限らず、ドキドキする▼20世紀も終わり、メディアがさまざまな特集をしている。この中から入試問題がでるとは、受験生は予想しているのだろうか▼『信濃毎日新聞』から田中新知事への電子メールとマルチメディア社会についてコメントを求められた。全文はこちら

11月
　後期のヤマは何と言っても卒論の執筆、提出。サバスのこともあって、3年生後期から遠隔教育を実験するとの名目で、月一回、各人のＨＰ上に進捗状況をアップするようにした。結果は最後までついて来たものは8割近いが、最初から2割はドロップアウトしている▼それにしても徐々に学生が（卒業）論文執筆ができなくなっていることに、もっと危機感をもつべきだろう。確かに就職活動（就活）の早期化はあるにしても、書けないから卒論をなくす、就活で授業に出てこないから、授業をやめるという発言が飛び出ることが少なくない。それと引き換えに単位を稼げる（最終的にはそうだろう）科目を代替案としてだすところまでいくと、もう大学は何であるかを問う気力もうせる▼所属する学会の紀要（学会誌）の編集委員をしているが、時期をあけて幾度か目であるので、このところ気になることがある。それは院生や若手研究者から投稿論文の審査で、同一論文を複数の学会に提出して、うまくいったほう（結果が早いほう）で載せてもらう、あるいは報告や投稿の必要条件である会員になっても、事が終わる（目的を達成する）と、さっさと退会するというような者がいることだ。事実、違う学会でも審査をしていると、どうしても同一論文から生れたものを見かける。指導教授がそうしたことを奨励しているようにも聞くが（もっとも研究領域においてはまったくダメとは言いいにくいから、始末に困る）、点数主義がますます蔓延り、若いうちに基礎固めの、地道な研究能力と精神を育まないと、将来が懸念される。

10月
　後期が始まった。1年間のサバスあけだから、各講義週２回行い、1年分を受け持つ。学部授業はこの方がいいかも知れないが、大学院は教員、学生ともども週２回はややきつい。アサイメントをこなす時間的余裕がないからだ。それでも英文テキストは４月から出しておいたので、昨年ほどではないようである▼後期はパソコンを授業に取り入れて、ＰＰＴ（パワーポイント）だけでなく、各自のＨＰにアサイメントを掲げることや、新聞製作も１枚の版下をワードでつくり、写真などを取り込み、さらにスキャナを使ってＨＰへイメージアップするようにした（プラスα）。結果がお楽しみ。

９月
▼サバティカル最終月とはいえ、中旬に大学院、下旬に学部ゼミ夏季合宿（２泊３日）を軽井沢で行う。合宿、４年生卒論のためのＨＰをたちあげる。切り替えモードに入った▼学生からＨＰが多すぎて一覧が分からないとの苦情あり。一応そういうサイト（その他）はあるのだが▼自宅でＣＡＴＶから128Kbsでの専用回線（1カ月5,900円）に接続して、電話回線、料金を気にせずインターネットができるようになったものの、ニフティ・マネージャー、アドレスブックは捨てがたく、また海外での使用もあるため、結局複数のＩＳＰ料金を今後も払いつづけることになりそう。でもＭＳＮはなくなるとか▼上述した双眼鏡の紛失は、結局エアラインが賠償してくれることになった。メデタシ、メデタシ。

８月その３
▼旅も終わりに近づき、民主党全国大会で緊張したロサンゼルスからサンフランシスコへむかう時に、事件は起きたチェッイン後の出発１時間前に搭乗券をもらった飛行機がスケジュール・キャンセルで飛ばなくなったのである。が、何のアナウンスもなしで、出発案内表示から消えていることを発見。シャトル便だからすぐその後の便にしてくれるかと思ったら、サンノゼ経由でバスでサンフランシスコ空港（ＳＦＯ）へいく方法しかないという、今回最大のトラブルが発生▼これで２時間以上のロスは覚悟したものの、今日中にゆけるのはそれだけしかない、あとの直行便は全て満席といわれれば、仕方がない。お詫びは＄？の食事券。で、サンフランシスコ空港へは２時間遅れの陸路でついたことは着いたが、まだ話は続く▼サンノゼでの乗り換えも、急遽キャンセルされた便の搭乗者へのアナウンスや掲示もなし。なんとなくそれらしき乗客が次から次へと空港地乗員に同じことを聞き始めたり、乗るバスの場所の掲示やアナウンスもない。日常茶飯事といわれればそうなのだろうが、あまりに不親切。そして、ＳＦＯではどのようにして運ばれたか分からない荷物のひとつが、カギをかけたにもかかわらず無残に空いて、中身が飛び出す形でビニール袋に包まれ、置かれていたのである▼よほど上の方からから投げ下ろしたのだろう。カギはかかった状況で口がぱっくり。慌てて中身をチェックする。とくにＰＣのバッテリーコードなどが袋から飛び出しおり、どうやらラッゲジの片面が散乱したものを押しこんだようで、ＣＤなどはいれていなかくて良かったなどと一安心してピックアップしたが、結局それは後で苦い思いをすることになる。というのは、ＰＣ関係の備品損失は免れたものの（これはなくなっても賠償補償のの免責事項に入っているようで）、さて、このあとどうしたかというと…▼アメリカでのＰＣ接続のよさに感激したが、ＮＹの隣りバッファローではあまりうまくゆかずとの話を聞くといつでも、どこでももまだまだか▼１０月開館予定の日本新聞博物館（横浜）にちなみ、横浜、日本の新聞について座談会に招かれる。

８月その２
▼ＮＹで目についたのはおまわりさん。新市長のもと秩序と安全の促進で、「怖ＮＹのイメージ」を払拭するかのように、街角におまわりさんが目立った。地下鉄もトークンだけでなく、メトロカードを取り入れて乗降の便ばかりでなく、バスや電車を割引で使えるメリットもある▼ただ、街のお店のつり銭はかなりいい加減なところは、カナダだけでなくちょっと気になる。まあ、店と人によるのだろうが、概してきちんとレシートを出すスーパーやドラッグ店などはペニー硬貨までつり銭に間違い無いが、その他では結構いい加減さがめについたのは、私だけであろうか

▼ラスベガスは３年前が日本人旅行者のピークだったようで（ＪＴＢ現地情報）、ちょうどお盆シーズンの前のせいかやや日本人旅行者は少なく見えた。それでも夜昼なしのギャンブルの街に変わりはなく、各ホテルで毎日開く無料のショーには始まる前から人だかりができる。グランドキャニオンはやはり一度は見てみる価値がある。

８月
▼7月２７日から３週間ＮＹ、ワシントン、ラスベガス、ロサンゼルス、サンフランシスコへ8年ぶりにでかける。ＮＹでは「シカゴ」をみつつ、卒業生が勤める日経ＢＰや日本経済新聞米州総局、フジテレビＦＩＣなどを見学。卒業生の活躍ぶりに感激。コロンビア大学の日本関係図書室には春原名誉教授、武市教授らのジャーナリズム関係書籍があった▼ＮＹの美術館、博物館もさることながらワシントンのスミソニアン協会が主催する博物館、美術館にはいつもながら圧倒された。また新聞博物館（ニュージアム）にもようやく行くことができたが、展示や案内陳列のよさや日本語解説など、今秋開館の新聞博物館の状況考えてしまった。そういえば、ロンドンのポートレート美術館では肖像化されている人物のＣＤＲＯＭ化が進められており、ジャーナリストや新聞発行者のＣＤが近く出版されるそうだが、ここミュージアムでもそうはならないだろうか。

７月その２
▼14日（金）に帰国後イギリス便りＨＰのアップ、翌日の学会編集委員会をはじめとして、４年生の卒論指導、大学院ゼミ、前期納会と連続で行い、合間をぬってアポがはいったり、終日自宅にいたのは数日で、そのままアメリカゆきとなる。前期不在中にもかかわらず、ゼミが滞り無く終えたのも、ＴＡとして活躍してくれた院生Ａ君の実力と尽力だが、大学がＴＡについていまひとつ理解不足なのが気になる▼卒業生のＬ君や同期のＭさんが、ソウルやＮＹから暑いなか表敬訪問にきてくださり、感謝。ゼミの教え子のひとりがＨＰをアップし、10年前の新聞学科生の様子が「赤裸々」に出ている▼このところＹ君からの週刊ニュースをおもしろく読ませていただく。

７月
▼６月26日オーストラリアのブリスベン北（Childers）で起きたバックパッカーの被災の報道は死亡15名中、10名近くがイギリス人であったこともあり、The Timesはトップさらに４、５面を使ってに大きく扱っている。BBCニュース（Worldを含む）の扱いも大きい。さらに数日後のSundayTimesも再び大きく扱っていた▼ところが、経済紙のＦＴはわずか10行程度。ほとんど見逃してしまうような、いわゆるベタ記事である。しかし、日本人は１名を含む焼死者の内訳など５Ｗ１Ｈはきちんと分かる記事で、他紙は報道なし）この差はどこから来るのか。▼またＦＴを読んでいる限り、ユーロ2000は存在しないと言っていいだろう。だが、BBCはじめ、ケーブル、衛星チャンネルはいつ、どこを見てもまず、このニュース、話題が途切れることはないし、町のパブの入り口には　「See Here Euro 2000」といったサインがあちこちに見うけられる。

６月
　ロンドンへでかけるため７月上旬約束の原稿「カナダの新聞史」をしあげ、先日出した原稿「オーストラリア・ニュージーランドの新聞概況」の校正を数日で行う。6‐７行増やしてくれという編集者の頼みだが、結構これがきつい▼そう言えば以前は毎月1、２回学生に作らせていたゼミニュースに２つのコラムを書いていた。ひとつは「Ｓ教授のいまこれを読め　ジャーナリズム入門」、そして「夜明け前」と題したもの。ゼミニュースもいまやオンラインになり、ゼミ新入生でさえ、ペーパーレスでゼミニュースを発行する。もっともこれは送信、受信側の問題も多く、まだ印刷のほうが読みやすく、また分かりやすい。ＨＰでのゼミニュースも氏名、写真などでも問題が多いから、やはり当分は印刷しなければならないだろう▼ＨＰのコラムに追加、新たに「夜明け前」の頁を作成。アップは帰国後の７月中旬になる▼ロンドンでのニフティアクセスがうまくゆかない。最初の宿泊先ホテルから外線でまるでダメ。シドニー、オークランド、ヴァンクーバーといずれも外線扱いでできたものの、ここロンドンでは全くアウト。ビジネスセンターに朝晩ＰＣをもって直接接続でできたが、それでもうまく接続できないことが多い。時間帯のせいもあろうが、どうも回線、アクセスポイント側にも問題ありか。ＭＳＮも接続できたり、拒否されたりと、困った、困った。

４‐5月
　4月はゼミ卒業生の結婚披露宴に出席した翌日、カナダヘ。バンクーバーの様子をＨＰへアップする▼ことしは恒例の卒業生へのフェアウエルランチョンができなかったため、連休ではあったが、5月に３月卒業生に集まってもらった。全員とまでいかなかったが、社会人1か月の様々なことを聞くことができた。心配していた３年間のゼミ総括の４年生特集号がようやくできた．彼らなりの自覚は芽生えたようで、ホッとした▼現段階では、大学時代のＰＣ強制のゼミをひととおりこなせば、かなりの「ＰＣリテラシー」の評価を受けるようだ。しかし、これも十年前の「記者ならキーボードくらいは打てないと」の発想は、現場ではそれから10年経ったいま、ようやくであるから、いまのレベルが社会人の最低条件とみなされるのは、早くとも５年先かもしれな▼ことしのゼミ新入生はＰＣに関してまたレベルが高くなっている。前期に集中のＰＣ実習は後期になるが、ＨＰ作成、ＰＰＴから一気にはじめてもいいだろう▼「豪州メディア最新状況」執筆。

１－３月
　シドニー便りほかをご覧ください▼昨年12月から一時帰国を含めてシドニー、オークランドと出かけた。前回のサバティカルのときに発行していた「･･･便り」を添付ファイルとＨＰで送るようになった。この７年の技術の進歩は素晴らしい。そしてわれわれにとって、より高いレベルでのメディアリテラシーを取得することが必要になったのも事実である▼ぺりかん社から刊行していた『明治初期新聞全集』（１９８６年から全６４巻、補完２巻）の総まとめの『索引･年表・解題集』が出版された。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
★１９９９年
１２月
　シドニーへでかけるあわただしさのなかで原稿を1本仕上げる。

★１９９８年
１９９８年３月
　卒業おめでとう　1994年に入学したゼミ生７名が晴れて卒業式を迎えます。一月に発行された四年生責任編集のゼミニュース『すばらしいＹ・Ｕ・Ｇ・Ａ・』を読み、彼らが過ごした三年間のゼミの様子を振り返ることができました。
　たった三年間ですが、各人それぞれの思い出ができたようです。
　軽井沢、ソウル、水上（宝台樹）での合宿は学習面の効果はあまり期待できなかったにせよ、「人間」観察にはもってこいの場を作ってくれました。ゼミに直接かかわる出来事であっても、そうでなくとも、少なくとも大学四年間から得たものであれば、何かを問わずとも、これから、いつか役立つことであれば十分ではないでしょうか。
　卒業生から贈る言葉を頼まれ今年は昨年と同じく、「職業に貴賤はないと思うけど、人の生き方には貴賤がありますねェ」と書きました。多くの人が四月から社会人として新しいスタートをきるわけです。ある職業に就くことによって、自分の生き方が変わる人もいれば、そうでない人もいます。これからも今までどおり「順調」に時を過ごす人もいるでしょうし、波乱の人生を歩む人も現れるかも知れ　
ません（内心、そうしたゼミ生がいるのでは、と期待しているところもありますが）。　
それほど大袈裟に言うこともないのですが、ちょっと自分の生き方に悩んだとき、上司とぶつかった時、そうでないときでもと気が向いたら、また四ッ谷の研究室に寄ってください。
　「何度倒れたかは問題ではない。大切なのは何度立ち上がったかだ」（男子高飛び込みで92年五輪金に輝いた後、再起してアトランタで銅メダルを獲得した選手のコーチの言葉）

Ｓ教授　大いに怒る　９７年度ゼミ生の悪行
第一位＝Ｈ教授の退任に際し、最終講義ならびに囲む会に在学生があまりにも出席しなかったことに怒る。　　
第二位＝いきなりのゼミニュース発行の遅れと、ズルズルと出遅れたことに怒る。いまだに発行日や編集グループを明示せずに発行するとは、基本ができていない、基本が…。
第三位＝自己チェックができておらず、あわや卒業できない不心得者が複数いた。
第四位＝研究室の蔵書を借りっ放しの学生が続出。おかげで依頼原稿に遅れが出て、編集者への信用なくす。
第五位＝ゼミの名前が「雄雅ゼミ」「優雅ゼミ」となり、ついに「雅雄ゼミ」まで飛び出した
どうなってるの、コレ。
　ということで、書き出せば切りがないほどありました。９８年度はそうしたことがないようゼミ生の自主性を重んじつつ、各人の向上性に期待したいところです。

１９９８年６月
　◎Ｓ教授の二年ゼミ講評
　演習（ゼミ）がスタートしてはや三か月がたち、各自関心のあるテーマの発表、続くディスカッションも二回り目に入った。毎回最後に講評したものに改めて付け加え、ここにまとめておく。
　雄雅ゼミは学生の自主性を尊重し、各人関心のあるテーマを報告してもらい、討論を行う。狙いは、自由さとそれに伴う責任の在り方を学び、かつ一般授業に比べて少人数のゼミは互いに啓発しあい、豊かな個性の育成の場であると考えるからだ。
　まず、年度初めの日程編成については合格点を与える。今年は人数がやや多いにもかかわらず、手際よく、運営主体ならびにテーマ選択、スケジュールを決めることができた。ここまで順調に進行していることは、各人がその責任を自覚し、遅滞なくことを進めているからであろう。（ただし、それは数人のチームとしての報告結果からであり、結果に至るまでに学生間で様々な自己葛藤や軋轢が生じていることは想像に難くない）　今後は微調整を加えながら、一年間持続して各自の持ち味を発揮し、「記憶」と「記録」に残るゼミ活動にしてもらいたい。
　「記憶」はさておき、第二の重要点は活動の「記録」をとどめておくこと。すなわち、ジャーナリズムのイロハのイ。これも、各回レジュメの提出、報告・ディスカッション内容のレポートも分担制で遅滞なく提出、メール配信が行われており、合格点を与えられる。　しかしながら、問題点がないわけではない。第一にレジュメの作成については水準以上であることは認めるものの、図表の配置や出所の明示などは適切だろうか。第二に発表報告の下準備を十分にしているだろうか。絞り込んだ問題提起により、ディスカッションの密度は高くなる。
　アドバイスをいかに生かすか、今後が楽しみである。ゼミ活動のますますの充実を祈るばかりである

１９９８年９月２７日
　二か月の夏休みはどうでしたか。就職活動に、サークル・部活にあるいは旅に、青春を謳歌したでしょうか▼冒頭に掲げた二つの話はいまの日本の病んでいる状態を見事に表している。その根源は短期間に成長した資本主義社会において高度に管理された組織がこれまた急速にうまく作用しなくなったからではないか▼それを形成したのは、とくに「お上がしてくれる。お上に任せておけばいい」という考えが根強く残る日本社会では、調和が大事にされ、「個」を育てることが間違って理解され、世は植木等のスーダラ節ではないが、「無責任」社会になりつつある。他者への思いやりが余計なことと思われるような風潮には共生、共存の発想はない

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
★１９９７年
１９９７年１０月
　台湾合宿が中止のために急きょ行き先を国内にかえ宝台樹ヒュッテの２泊３日の夏季合宿も無事終え、後期が始まりました。▼それぞれ思い出のある夏休みだったことでしょう。合宿ではいろいろな発見がありました。暖炉の火を絶やさないよう気遣う人。２泊分の食事を作ったり、手伝ってくれた諸君。皆の送り迎えをしてくれたドライバー君。黙々と後片付けや掃除をしてくれた学生。なかには寝て食べるお喋りにいそしむ方もいましたが、各人が各人なりの役割を果たしていたようです。普段のゼミでは決して見ることのできない姿でした▼歌手ジョン・デンバーさんが飛行機事故で亡くなりました。遥か彼方に続く「・カントリーロード」とともに合掌。

★１９９６年
１９９６年９月
　台風をものともせず、19人の学生を引き連れ三泊四日のソウル・ゼミ合宿にでかけた▼全員が初めて韓国を訪ずれたという割には、皆旅慣れており、寝坊や遅刻を除けば、テレビ局や新聞社を訪問し、韓国食の味を楽しみ、まあまあの初期の目的を達成できたと思う。後日配布する別冊「韓国レポート」をお読みいただきたい▼それも、事前のレクチャーを留学生が引き受けてくれ、また現地で通訳兼案内役をこなしてくれた卒業生らに負うところが多い。記して感謝したい▼ひとつ気付いたこと。英会話の時、とくに「イクスキューズミー」「プリーズ」「サンキュー」の三語を使うよう心掛けると和やかになる▼さて、四年生諸君の卒業論文の進展状況はいかがかな。三年生もそろそろ自分の進路を真剣に考える時期が来たようですね。

１９９６年１２月
　先週卒業論文の提出が終わり、４年生はホッとしているところだろうが、一、二苦言を呈する▼提出期間はおよそ十か月前に知らされているのだから、何もギリギリに出すようなことはしないで欲しい。ワープロ／パソコンなどのトラブルは遅れた理由にならない。いずれにしても最低72時間前にプリントアウトまで行き着けば、その後のアクシデントに対処できる。指導する立場から言えば、もう少し自分の能力判断と自己管理に気をつけてほしい▼というわけで、研究室ではこれからなお一層提出物の締切り重視が続くことになり、別掲のように来年度卒論を提出する予定の学生は、各自の提出期限を設定する。そのつもりでいて欲しい▼さて、今年も残すところわずか。学生によっては、いくつも提出レポートを抱えていたり、スキーや海外へでかける人もいるだろう。有意義な休暇を過ごしてほしい
９６年研究室三大ニュース＝①夏季ゼミ合宿韓国へ②院生活躍③Ｅメール本格始動。で、番外はと言うと、教授昇任（？）　それでは、メリークリスマス！

★１９９５年
１９９５年５月
　新学期を迎えて学生諸君の意気込みも高いようだ。ゼミの新入生諸君が２回にわたり議論して決めたテーマはなかなかのもの。時事的な問題も含めて、今後の展開を見守りたい▼３年生には初めて他学科生が加わった。刺激的な示唆と複数での議論による、新しい物の見方が生まれることを期待する▼今年も厳しいそうな就職戦線（よく考えると、物騒な言葉だ）に対峙する４年生。卒論のファーストラウンド以後、２回戦に進んだ者はいまだなし。今年は６月までに「登録」「許可」という学科指導が行われる。とりあえず目標はそこか▼ようやくできた「ゼミ名簿」を今号に付録としてつけた。『上智新聞』５月号にはこうした学生名簿とプライバシーの件が記事になっている。毎年出される学科名簿などは学生諸君には役立つはずだが、取り扱いに注意こそすれ、それらから計り知れない情報が入手できる。それを考えれば、安易に別の目的に使うなど絶対にしないことは当たり前。懸念して非公開にするのはいかがなものか。

１９９５年５月
　「大海に勇気をもって船出しよう」と言ったのは、細川元首相。無論知ってのとおり。上智大学の出身。テレビタレントのＡＣやキャスターのＡＹ、女性雑誌に一時期よく登場したＡＫさん（俳優ＯＥの奥方）も上智出身だ▼時々気になるのが彼女らの「国際学部卒」という略歴。残念ながら、国際学部という名称の学部は、上智の歴史の中に存在しない。正式には国際部が正しいようだが、これも大学ではなく、いわゆるかつての専門学校に属するものだから、大学とは別に考えた方がいい▼ところが、そう正しく書いてあることは滅多にお目にかからない。こうして事実でないことがまかりとおる。いつしかそれが正しいことになってしまう恐ろしさが身近にあるということを知っておいてもらいたい▼ついでに言うと、大学の同窓会名簿に載っている人がすべて大学卒業者とは限らないことがしばしばある。人物記事には略歴は欠かせないが、本人が言ってもウラをとることも時に必要だ。それで職を失う議員がいるくらいだ。

★１９９４年
１９９４年１月３１日
　明けましておめでとう。４年生は卒論を提出してホッとしているところ、３年生・２年生諸君はレポートの執筆と学期末試験の準備でおおわらといったところでしょうか。クリスマスをロンドンや香港で楽しんだ人もいるようです。皆さんはどう過ごされましたか。
　今年の目標　昨年は毎月発行してくれたゼミ通信は、今年が復刊２年目になる。そこで、今年の目標は月２回の発行を試みてはどうだろうか。当然、掲載する記事もこれまでのニュースバリューでは通用しなくなることもある。また、もう少しレイアウトを考えたり、新聞社発行の用字用語辞典を手元に置いて誤字誤植のない、読みやすい紙面作りにトライする。これは決して苦言ではなく、１年目の成果を踏まえての、２年目のチャレンジなのである。発行部数も60部、印刷は学内印刷所を使う予定だから、紙面は確実にグレードアップ。したがって内容もそれに伴伴うことが要求される。
　不安と未来
　ところで、先日朝日新聞の「声」欄に「不況のなかで就職を考える」という女子大生の投書が目に入りました。３年生の彼女は、学内の就職ガイダンスに出たがさっぱり実感がわかず、出るのはタメ息ばかり。いままでの３年間就職のために何かしておけばよかったと後悔したが、もう遅い。自分はとうしたらよいか分からない。企業はどんな人材をこの不況の中で求めているのか、自分なりに追及しよう、と言っている。この学生の考えを、皆さんはどう思いますか。
　基本的に彼女の考え方には、少なくとも２つの問題があります。一つは大学は就職のためにあるのではないこと。もうひとつは、企業に求められる人材になることを追及しようとしていること。
　前者については、本来の学業と並行して、いわゆるダブルスクール族となっても、それなりに自分が何をしたいのか、そのためには何が必要なのかがわかっていれば、何をしててもいいのかも知れない。ただ、何かの資格取得があるからといって、就職ができるほど世の中甘くない。
　後者はまったくナンセンスだ。彼女は「不況の中で…」という前文を使っているのも、気になった。つい数年前のバブル時代の企業求人のやり方と昨年あたりを見れば、その落差は一目瞭然。それならば、むしろ企業の求める人材になるというのは、常識をもって物事の判断ができる人間になることぐらいではないだろうか。でなければ、自分が世の中にどのような貢献ができるかを考えてみるのもいい。
　先が見えない、漠然とした不安感は、誰にもある。「…のために」ということではなく、「…ができるのか」のを、自分自身にもう一度、問い直してもらいたい。「大海に出る勇気」をもとう。
　今年も多くの学生・卒業生から、暖かいクリスマス・カードや年賀状をいただいた。うれしい限り。多くの卒業生が社会で活躍している。支局で走り回っている、バリバリの記者もいれば、連日遅くまでスタジオで番組制作にたずさわる人。飽き足らずに大学院へ戻って勉強している者もいれば、留学する人や留学から帰って現場に復帰している者もいる。
　未来に向かって、輝いて欲しい。

１９９４年９月１０日
残暑お見舞い申しあげます
　今年の夏は近年にない異常な暑さに見舞われ、ゼミ生諸君はいかがお過ごしでしょうか。
　就職戦線が終了した４年生はリラックスしつつも、卒業論文の作成に汗を流し２、３年生は海外に出ている人や読書、アルバイトに励む人と、各人の「94年夏を体験しているのでしょうか。
　７号館研究棟が冷房施設の設置工事で夏期休暇中クローズドされているため、学生諸君も何かと不都合を感じているように、わたくし自身も大学での居場所がなく、その反面最近になく暑いながらも寓居で過ごす時間が多いと喜んでいますもっとも、６月末沖縄、七月にはソウルと飛び回っており、少しは骨休めができるいい時間になりました。　そのせいかどうかは別として、涼を求めてナイアガラの滝、バンフ、コロンビア大氷原、バンクーバーへ行ってきたり、軽井沢で読書三味の日々を過ごしたりと、体重が増えました。
　さて、そのなかで、二、三冊おもしろかった本を紹介しよう。小林信彦『怪物がめざめる夜』（新潮社、一九九三年）は、ラジオ・メディアが舞台の小説。やり手の主人公＝ラジオ台本作家＝らが作り出した架空のコラムニスト〈ミスターＪ〉が人気を呼ぶ。マスコミの執拗な追及をかわすために、無名の芸人を彼に仕立て上げるが、その男はやがて自分が〈ミスターＪ〉自身であると言い出し、それまでの虚から教祖的な人気を得てしまう。　ところが、その途端に彼は自分を生み出してくれた主人公らを徐々に排除していく。人形が自分の意思をもったように。その過程で人気タレントを奪い合うメディア、タレントを盲目的に教祖に祭りあげてしまう
オーディエンスらがストーリーをもりあげる。そして最後は〈ミスターＪ〉自身が刺殺されるのだが……。著者は一九八〇年に既に構想があったというから、驚きである。
　佐々木譲は昨年夏の終戦特集にＮＨＫが放映した番組の原作者（『エトロフ発緊急電』＝山本周五郎賞など受賞）だ。軽井沢の古本屋で出会った『ベルリン飛行指令』（新潮文庫さ－21－１）でも、三国同盟のなか、日本の零戦をドイツにおくるという離れ業をみせるパイロットの生き様を描く。実在の人物らを登場させた物語である。『エトロフ発…』にも登場する人々が出ているから、両書を読んだ方がおもしろいだろう
　ところで、興味深いのはまず、前書で人々の目前で殺されたはずの〈ミスターＪ〉がその後生きているような噂が人々の間で流れるという描写に代表されるように、まさに「虚」が実になっていく様。そして、連絡に使っていたファックスから彼のサインが流れるというミステリアスさが、現代のメディアの生み出す不可思議な影響を連想させる。
　一方、後書では、劇中の登場人物のその後が書かれていながらも、主人公、安藤大尉については、なぜか書かれていない。前書はフィクションだから、どう想像しても構わないだろうが後者は実と虚が混在しているのかと思ってしまう。この曖昧さは何を言おうとしているのか、考えてしまった。
　それが作者の狙いなのだろうか、と。

１９９４年１０月
　いつもなら【Ｓ助教授のジャーナリズム入門編】いまこれを読め！があるところだが、今回はお休み▼恒例となるはずの新年特別号もなかったので、まずは「明けましておめでとう」神様が万人に与えたもののひとつ、そう、誰もが確実に年をひとつとりましたね▼ゼミのニュースレターも復刊されて今回で15回目を数えた。いつまで続くかはこれから代々のゼミ生に受け継がれるかどうかにかかっている▼二年目の昨年は、相変わらず毎回活字が変わり号ごとに新ソフトの導入といった目新しさもあった。とはいうものの、余裕の紙面作りとはいかず、発行が遅れたこともあり（誰だ？）そして誤字あるいは通常の用事用語とは異なった文が散見した▼苦言はともかく一回でも多く、多彩な内容でこれからも続くことを期待している。▼「戦後50年」「アジアの中の日本」といわれる昨今だが、そのきっかけとなる一八九四年の日清戦争、一九〇四年の日露戦争を始める過程まで遡って、現代社会を見る目をもって欲しい。
　
１９９４年１１月
　長い夏休みも終わり、本号に掲載されているように軽井沢合宿も、今年は大学院生も加わって実りあるものだったろう。もっとも、いくつかの反省点を残したが▼このところ気になることがある。それはちょうど新聞週間を迎えたこともあるが、新聞学科生はもちろん、学生諸君が常日頃きちんと新聞を「読む」ことをしているのだろうかということ。本当のところ、「読む」ではなく見ているに過ぎないのではないか。テレビや映画も同じような態度で接触して、見てそして終わり▼マス・メディアからますますジャーナリズム性が失われつつある今日、新しいメディアの登場はそれに拍車をかける。しかし、果たしてそれでいいのだろうか。権力を監視する機能を本来もつべき姿としてあるマス・メディアが、いましなければならないこと、人々に伝えなければならないことを本当に伝えているだろうか▼「新聞は歴史の検証　未来の指標」－いささか戦後五十年を意識した感がなくもないが、記録を次世代に残すためにも、誤った検証だけはしてほしくない。