AWG(Arrayed Waveguide
Grating)は各アレイ導波路の位相差を付けるために、導波路長を変えた設計を行っている。このとき波長間隔が狭くなると、行路長差を大きく取る必要があり、多チャンネルにする程、素子寸法が大きくなってしまう。一方、我々は導波路間の位相差を変えるために各アレイ導波路の屈折率があらかじめ変化しているアレイ導波路を設計した。各アレイ導波路の屈折率差を大きくすることによって位相差を大きくすることができ、素子長の短縮化や多チャンネル化が可能となる。そしてそれぞれの導波路の屈折率を電界印加など動的に変化することによって光偏向を行う1×N型空間光スイッチへの応用や、また波長多重された光信号を波長ごとに動的に出力ポートを切り換える波長分割型光スイッチが可能となる。
各アレイ導波路の屈折率があらかじめ変化したアレイ導波路を作製するために、有機金属気相成長法による選択成長を用いている。図のようなアレイ導波路の片端に広い幅を持つ非対称形のマスクに選択成長を行うと、広マスク上に到達した原料のマイグレーションと広マスク上部の気相原料の勾配によってアレイ導波路内での成長速度に差が生ずる。導波路コアとして量子井戸構造を作製すると、各アレイ導波路内で井戸層厚が異なり、そのため異なるバンド端(屈折率)を持つアレイ導波路が作製可能となる。図は広マスク幅Wwを0~120mmと変化させた場合の各アレイ導波路のPLピーク波長の変化を示したものであり、直線は最小二乗法近似を行ったものである。この図より広マスクより離れるに従いアレイ導波路のPL波長がほぼ線形に変化していることがわかる。またアレイ導波路の両端での波長差は広マスク幅の大きさにより変化していることがわかる。この実験結果よりアレイ導波路の屈折率差が広マスク幅の大きさにより任意に設定可能であることがわかる。