バンドギャップの異なる厚膜層を交互に成長する場合、それらの材料の格子定数が合っていないとミスフィット転位などが発生してしまいます。ところが量子井戸層などのように極薄膜を交互に成長する場合には、井戸層と障壁層の格子定数が多少異なっていても、転位が発生せず、格子定数の違いは井戸層結晶のひずみとして吸収されてしまいます。
このようなひずみの導入により、ヘテロエピタキシャル成長における格子整合の条件がある程度緩和され、用いる材料の自由度が増えるとともに、ひずみによるバンド構造の変化のために、利得や屈折率変化、吸収変化などが大幅に向上します。
また導波路内を伝搬する偏波によって量子井戸内で生じる電界屈折率変化や吸収変化が異なりますが、このひずみによって、電界屈折率変化等を偏波無依存化することが可能となります。
われわれは歪量子井戸内の電界屈折率変化、吸収変化等の電気光学定数を理論的に解析し、偏波依存性の無いデバイス設計を行っています。