2023年度の講義概要
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一変数の場合を中心に、微分積分など数学に於ける解析的手法を扱う。
高校までの「等式の数学」で余り触れられない「不等式による評価」の話から始めて、
Taylor展開の理論を大きなテーマとし、
極限・収束・無限和・微分・積分・近似計算などを関連付けて講義する。
高校までで学んだ知識も活用する一方、それらのより確かな基礎付けも与える。
問題演習や多くの例を通じて理論的な事項を実感すると共に、
将来出会う様々な実例に馴染んでもらいたい。
この科目は、多変数の微積分(数学BII)・微分方程式・複素関数論・フーリエ解析など
引き続いて学ぶ数学の基礎としてだけでなく、
物理学・工学等の理工系のあらゆる科目の基礎として重要である。
主な参考書
- 三宅敏恒『入門微分積分』(培風館・ISBN: 978-4563002213)
- 足立恒雄『理工基礎 微分積分学I ―1変数の微積分―』(サイエンス社・ISBN: 978-4781909967)
- 中島匠一『なっとくする微積分』(講談社・ISBN: 978-4061545410)
- 小林昭七『微分積分読本』(裳華房・ISBN: 978-4785315214)
- 志村真帆呂『優しい微積分』(プレヤデス出版・ISBN: 978-4903814018)
- 金子晃[監修]/中島多加子・米山実希[著]『積分計算 そのまま使える答えの書き方』(講談社・ISBN: 978-4061539747)
- 高木貞治『解析概論(改訂第3版・軽装版)』(岩波書店・ISBN: 978-4000051712)
- その他「微分積分」「解析学」などと付く本はたくさん出版されているので、
書店・図書館などで自ら見比べて自分に合ったものを選んでもらいたい。
数学演習I(情報理工学科クラス)
「数学AI(線型代数)」と「数学BI(微分積分)」
の講義内容に対応する演習の授業である。
授業は「線型代数演習」と「微分積分演習」を交互に隔週で行なう。
数学分野において自分で実際に計算することは、諸科学の実験に相当する営みであり、
対象に馴染み理解を深めるために必要不可欠である。
この科目は引続いて学ぶ数学の基礎としてだけでなく、
物理学・工学等の理工系のあらゆる科目の基礎として重要である。
この中から、「微分積分演習」7回(隔週)を担当する。
ここで配布する演習問題も
数学BI(微分積分)(情報理工学科クラス)
の頁に掲載しておく予定。
本授業では、後に続く一連の幾何学系科目
「幾何学I(微分幾何)」「幾何学II(多様体論)」「幾何学III(位相不変量)」
に先立つ導入科目として、最初に上記の一連の科目で扱う観点を概観した後、
数学のあらゆる分野で用いられる言葉としての集合・写像の基礎事項について述べる。
続いてユークリッド空間における距離に触れて馴染んだ後、
近い/遠いという構造を持った集合としての
一般の距離空間・位相空間の基礎事項について講義する。
理工共通科目II群の他の数学系科目と同様に、
このさき進む方向に関わらず、身に付けておくことが重要な基礎的内容である。
主な参考書
- 小森洋平「集合と位相」(日本評論社・2016)
- 松坂和夫「集合・位相入門」(岩波書店・1968)
- 斎藤毅「集合と位相」(東京大学出版会・2009)
情報数理演習I
この授業は、
∀∃を用いた命題の記述・証明、公理に基づく一般的な線型空間論、
および複素数を使った解析学について演習を行い、
次のような内容の理解・習熟を目的とする:
- (実数を含む)複素数の数列や関数の収束発散を正確に論ずるためのいわゆるε-δ論法
- 抽象的な線型空間論、および線型写像の行列表示など
- 複素関数の微分と積分、および留数定理を利用した積分計算
この中から、「ε-δ論法演習」などの5回を担当する。
主な参考書
- 田島一郎「イプシロンーデルタ」(共立出版・1978)
- 矢ヶ部巌「数学での証明法」(共立出版・1979)
- 原惟行・松永秀章「イプシロン・デルタ論法完全攻略」(共立出版・2011)
「この問題は計算機でも計算できないなぁ」
「君は実に…計算が下手なんだなぁ」
「そうじゃなくて計算できないことが証明できるんだよ」
「え?どゆこと?」
「計算」とは何か、「計算できるか/できないか」というような問いに対して、
数学では、「計算機が行なうこと」を「計算」と考え、
計算機が行なえることを「計算モデル」として定式化することによって
「計算」を定義し、明確に答えることを可能にしてきた。
本講義では、代表的な計算モデルを取り上げながら、
計算の理論・アルゴリズムの概念・計算量の理論の初歩を紹介し、
計算の可能性・効率について論ずると共に、
具体的な例として幾つかの基礎的な数理アルゴリズムについて触れる。
主な参考書
- Micheal Sipser "Introduction to the Theory of Computation" (PWS Publishing Company, ISBN: 978-0534950972), 太田和夫・田中圭介・阿部正幸・植田広樹・藤岡淳・渡辺治(共訳)による和訳あり
- 「計算理論の基礎 [原著第2版] 1.オートマトンと言語」(共立出版・ISBN: 978-4320122079)
- 「計算理論の基礎 [原著第2版] 2.計算可能性の理論」(共立出版・ISBN: 978-4320122086)
- 「計算理論の基礎 [原著第2版] 3.複雑さの理論」(共立出版・ISBN: 978-4320122093)
- 川添愛「白と黒のとびら:オートマトンと形式言語をめぐる冒険」(東京大学出版局・ISBN: 978-4130633574)
- 川添愛「精霊の箱(上・下):チューリングマシンをめぐる冒険」(東京大学出版局・ISBN: 978-4130633635, 978-4130633642)
GreenScience&Engeneering(Mathematics)
This class consists of three topics in mathematics provided three lecturers.
- Euclidean algorithm is the greatest discovery of humanity,
which makes various computation effective.
In this lecture, basics of Euclidean algorithm and its application
to mathematics and information technology will be introduced.
- The whole set of continuous functions on real numbers
naturally has the structure of a vector space.
The vector space formed by the whole set of functions with a certain property
is called a function space,
and is an important research subject in modern analysis.
In this lecture, we will study the basic properties of function spaces.
- Symmetry is one of the most important themes
in most areas of modern mathematics.
Group theory is considered the study of symmetry.
We will study the basic concept of group theory
through symmetry of plane figures.
Among these, I will give the lectures on Euclidean algorithm (2 weeks).
小学校の算数以来馴染みの深い「数」、とりわけ「整数」の振舞いについて、
様々な奥深い現象を紹介する。
剰余と合同式、ユークリッドの互除法による最大公約数の計算法、
連分数展開、方程式の解法理論の歴史、素数の概念の意義と見直しなどの話題に加え、
暗号など近年の情報化社会における応用などを通じて、
数理現象の探求が数理技術として活用されている様子にも触れる。
高校の「数学II・数学B」程度の予備知識を想定する。
主な参考書
- 和田秀男「数の世界」(岩波書店, ISBN: 978-4000055000)
- 高木貞治「初等整数論講義(第2版)」(共立出版, ISBN: 978-4320010017)
- その他「数」「数論」などに関する本はたくさん出版されているので、
書店・図書館などで自ら手に取って興味を持ったものを積極的に読んでもらいたい。
「0.999…って大体1だよね。」
「大体ってなんだよ。ちょうど1だよ。」
「え?そうなの?」
実数全体の集合Rは多くの数学的現象の基本的な場であり、
ただ数が集まった集合であるだけでなく、
四則演算が出来るという代数構造、
大きい/小さいという順序構造、
近い/遠い・収束・極限という距離・位相構造を備えていることが重要である。
本講義の前半では、
より基本的な数である自然数から実数を構成する道筋を辿ることで
実数の基礎付けを行ない、
後半では、実数の基本的な構造の中でも特に距離・位相構造に焦点を当てて、
幾何学・解析学が展開する場としての実数の基本性質を講義する。
集合・写像・同値関係などの用語を用いるので、
「現代数学A」(或いはそれに準じる科目)を学んでいることが望ましい。
主な参考書
- 小森洋平「集合と位相」(日本評論社・日評ベーシックシリーズ, ISBN: 978-4535806337)
- 斎藤毅「集合と位相」(東京大学出版会・大学数学の入門8, ISBN: 978-4130629584)
- 田島一郎「イプシロンーデルタ」(共立出版・数学ワンポイント双書20, ISBN: 978-4320012400)
- その他「数・実数」「収束・極限」「位相」などに関する本はたくさん出版されているので、
書店・図書館などで自ら手に取って興味を持ったものを積極的に読んでもらいたい。