2021年度の講義概要




数学BI(微分積分)(情報理工学科クラス)

一変数の場合を中心に、微分積分など数学に於ける解析的手法を扱う。 高校までの「等式の数学」で余り触れられない「不等式による評価」の話から始めて、 Taylor展開の理論を大きなテーマとし、 極限・収束・無限和・微分・積分・近似計算などを関連付けて講義する。 高校までで学んだ知識も活用する一方、それらのより確かな基礎付けも与える。 問題演習や多くの例を通じて理論的な事項を実感すると共に、 将来出会う様々な実例に馴染んでもらいたい。 この科目は、多変数の微積分(数学BII)・微分方程式・複素関数論・フーリエ解析など 引き続いて学ぶ数学の基礎としてだけでなく、 物理学・工学等の理工系のあらゆる科目の基礎として重要である。

主な参考書

数学演習I(情報理工学科クラス)

「数学AI(線型代数)」と「数学BI(微分積分)」の講義内容に対応する演習の授業であり、 授業は主に 「線型代数演習」と「微分積分演習」を交互に(隔週で)行なう他、 線型代数・微分積分の双方が関連する演習も行ない、今後の学修に繋げる。 数学分野において自分で実際に計算することは、諸科学の実験に相当する営みであり、 対象に馴染み理解を深めるために必要不可欠である。 引続いて学ぶ数学の基礎としてだけでなく、 物理学・工学等の理工系のあらゆる科目の基礎として重要である。

この中から、「微分積分演習」6回(隔週)・「融合演習」2回を担当する。 ここで配布する演習問題も 数学BI(微分積分)(情報理工学科クラス) の頁に掲載しておく予定。

情報数理演習I

この授業では、 ∀∃を用いた命題の記述・証明、および複素数を使った解析学について演習を行う。 特に、 (実数を含む)複素数の数列や関数の収束発散を正確に論ずるための いわゆるε-δ論法に習熟し、 複素関数の微分と積分を学び、留数定理を利用した積分計算に習熟する。

この中から、「ε-δ論法演習」の7回(隔週)を担当する。

計算機数学

「この問題は計算機でも計算できないなぁ」 「君は実に…計算が下手なんだなぁ」 「そうじゃなくて計算できないことが証明できるんだよ」 「え?どゆこと?」

「計算」とは何か、「計算できるか/できないか」というような問いに対して、 数学では、「計算機が行なうこと」を「計算」と考え、 計算機が行なえることを「計算モデル」として定式化することによって 「計算」を定義し、明確に答えることを可能にしてきた。 本講義では、代表的な計算モデルを取り上げながら、 計算の理論・アルゴリズムの概念・計算量の理論の初歩を紹介し、 計算の可能性・効率について論ずると共に、 具体的な例として幾つかの基礎的な数理アルゴリズムについて触れる。

主な参考書

数の世界

小学校の算数以来馴染みの深い「数」、とりわけ「整数」の振舞いについて、 様々な奥深い現象を紹介する。 剰余と合同式、ユークリッドの互除法による最大公約数の計算法、 連分数展開、方程式の解法理論の歴史、素数の概念の意義と見直しなどの話題に加え、 暗号など近年の情報化社会における応用などを通じて、 数理現象の探求が数理技術として活用されている様子にも触れる。 高校の「数学II・数学B」程度の予備知識を想定する。

主な参考書

現代数学B

「0.999…って大体1だよね。」 「大体ってなんだよ。ちょうど1だよ。」 「え?そうなの?」

実数全体の集合Rは多くの数学的現象の基本的な場であり、 ただ数が集まった集合であるだけでなく、 四則演算が出来るという代数構造、 大きい/小さいという順序構造、 近い/遠い・収束・極限という距離・位相構造を備えていることが重要である。 本講義の前半では、 より基本的な数である自然数から実数を構成する道筋を辿ることで 実数の基礎付けを行ない、 後半では、実数の基本的な構造の中でも特に距離・位相構造に焦点を当てて、 幾何学・解析学が展開する場としての実数の基本性質を講義する。 集合・写像・同値関係などの用語を用いるので、 「現代数学A」(或いはそれに準じる科目)を学んでいることが望ましい。

主な参考書

社会の中の数学

現在の社会では、日常的に接している商品やサービスの裏側で数学が応用されており、 また報道されているニュースの意味を正しく理解するためにも 基礎的な数学的な知識が必要である。 これらの内容は高校や大学の通常講義で学ぶ数学と深く関係しているものの、 より実用的であり幅広い内容に渡っている。 この講義では、現代社会に生きる人間が、 この様なさまざまな場面で必要となる数学的知識について、 専門的な内容に深入りせずに解説し、社会に出たときに有用となる数学的教養を学ぶ。

この中から、2回を担当し、 現代の情報化社会での安全な情報通信を支える数理技術の例として、 誤り訂正符号・公開鍵暗号などについて、 その基本的な仕組み・活用・裏付けとなる基礎数理を、実習を交えて紹介する。