2007年度 演習(国際政治経済論1,2)説明

2007年度ゼミ(演習:国際政治経済論1、2)希望者へ
 ※秋学期からの受講は、留学等で継続履修の場合以外は原則として認めませんのでご注意ください。

演習(国際政治経済論)は、大学全体のカリキュラムがセメスター制に移行することから、形式上春学期の演習(国際政治経済論1)と秋学期の演習(国際政治経済論2)の半期ごとにわかれることに なりました。しかしながら、この演習2つは、原則として連続して受講するもの、つまり通年のゼミとして考えますのでご注意ください。このため、秋学期の演習(国際政治経済論2)の受講は、 春学期の演習(国際政治経済論1)をその年かそれ以前に受講したものに限る予定ですので、ご注意ください。なお、このようにこの演習を通年のゼミとして私がみなしたい理由は以下の 2点です。

@演習(国際政治経済論2)においては、学期末に卒業論文またはゼミ論文またはそれに準じるものを仕上げることを要求するのですが、夏休み前にテーマの相談をし、夏休み中にその準備をしない限り 良質なものを作ることは難しいと思います。
A大学生活の一つとして、そしてその後の生活のためにもゼミとその仲間を大切にしていただきたいと思いますし、できればコミュニティとなっていけたらと思います(これは私の大きな研究テーマである People's Processに通じるものです)。そのためには通年をかけて、互いの人間関係を深めていく必要があると考えています。

今年から外国語学部はコース制に移行することから、もしかしたらこのゼミへの参加希望者が多くなるかもしれません。しかしながら、ゼミとして成り立たせるためには経験上30人未満でないと 難しいと考えます。そのために、もし人数が多い場合には、全体で30人未満にするために選考をさせていただきたいと思います。そのため、下記の説明を読んで、まず自分のやりたいことと私のゼミ が合っているかどうかをよく考え、またゼミに応募されたい方は、必要であればそれなりの準備をしてゼミの初回に望んでください。
また、私は来年度(2008年度)はサバティカルの予定です。よって、特に3年生の方は、2008年度には私のゼミは無い予定ですのでご注意ください。

初回のクラス(4月12日)出席の際に、志望動機、現在の関心事(または研究したいテーマ;これは途中で変わっても良い)等を決められた下記の様式で準備しおくこと。
⇒様式はこちら(Word)

初回に出席した結果、このゼミを希望するものはそれを提出してもらう。なお30名を超える場合はこの志望動機書と下記の基準を元に選抜を行う(当然、初回欠席のもの、またこの志望動機書を提出しなかったものは、 優先順位が落ち、受講できない場合があるので注意すること)。

1)過去に私の授業を受講したものを優先する(私の授業の中の優先順位は以下のとおり:@国際政治経済論2、A国際政治経済論1、B国際経済学1及び2)。条件の同じ場合は、その際の成績 も考慮する(特に@、Aのレポート)。

2)国際政治経済論2を受講していない場合、優先順位が落ちることになるが、強く受講を望むものは、以下の文献のうち一つを読んで、3000字から4000字程度のブックレポート(要約と考察(場合によっては感想も)) を準備し、初回のゼミの日に提出すること。これがあれば、上記1)の@国際政治経済論2を受講した場合と同じ扱いをする。

<ブックレポートのための文献>

[1]穂坂光彦 (1994), 『アジアの街わたしの住まい』明石書店。
・居住問題が中心テーマであるが、アジア各国のスラムでの人々の生活・取組の実情がよくわかる。

[2]ホルヘ・アンソレーナ、伊従直子 (1992), 『スラムの環境・開発・生活誌』明石書店。
・入門書、また実際にスラムの活動を訪問したい時に役立つ(少し情報が古い。本当に訪問する際には、新しい情報は下川まで要相談)
[3]ホルへ.アンソレーナ/伊従直子/内田雄造/穂坂光彦 (1987), 『居住へのたたかい』明石書店。

[4]パウロ・フレイレ(小沢有作他共訳) (1979), 『被抑圧者の教育学』亜紀書房。
・古典的書物だが、途上国における教育支援、特に識字教育に関心がある人は是非読んで欲しい本。識字教育の原点はここ。

[5]パウロ・フレイレ(里見実訳) (2001), 『希望の教育学』太郎次郎社。
・いまある状態が、すべてではない。ものごとを変える、変えることができる、という意志と希望を失ったそのときに、教育は、被教育者にた いする非人間化の、抑圧と馴化の行為の手段になっていく。いまある所与の状態を引き受け、それを直視しつつ、誠実かつ老獪に「可能な夢」を模 索する教育思想家フレイレの晩年の主著(「BOOK」データベースより)

[6]内田雄造編著 (2006), 『まちづくりとコミュティワーク』解放出版社。
・(第U部第3章)山本義彦「「陸の孤島」からの街づくりー大阪・浅香すとーりー」
・(第V部第1章)全泓奎「韓国におけるまちづくりとコミュニティワーク」
・(第V部第2章)下川雅嗣「アジアにおける貧困層のあゆみとコミュニティ・ビジネス」
※これをブックレポートに用いるときは、上記3つのみか中心に書くように。

内容

・国際政治経済諸問題をより深く理解する能力を育てる。前期は毎週テーマを設定し、それについてのグループワークを行う。なお事前にそのテーマに関して必読文献を指定するので各自はそれを読んでゼミに参加することが要求される。 後期は各自テーマを決め,研究結果を発表し討論する予定。ゼミ受講者は国際経済学1,2または国際政治経済論1・2(下川雅嗣担当)を併せて受講することが勧められる。
・私自身の今の関心事はこのHPの全体を参照のこと。
・2003.2004,2005,2006年度のゼミでやった詳しい内容については、HPの下川ゼミの2003年度の説明2004年度の説明2005年度の説明2006年度の説明を参照のこと。
・2003,2004,2005,2006年度のゼミ生の卒論・ゼミ論の要旨については、HPの下川ゼミの2003年度のゼミ論・卒論要旨2004年度のゼミ論・卒論要旨2005年度ゼミ論・卒論要旨(大部分はタイトルのみ)2006年度ゼミ論・卒論要旨(大部分はタイトルのみ一部要旨と全文)を参照のこと。
・ゼミ論においては、個人研究だけでなく共同研究・執筆を可とし、また最終成果も論文の形にこだわらず共同で何らかの実践を行い、その軌跡のレポートという形も最終成果として認めようと思っている。詳しくは初回のクラスの時に話し合う予定。
2007年度「アンソレーナさんと"開発"を語ろう― "貧困者のエネルギーと創造的活動を生かして"」セミナーは、本ゼミと内容的に近いので強くお勧めです。なお、アンソレーナ師は私の4人の師匠の一人です。


前期グループワークを行う際のテーマ

※日程はとりあえずの目安です。途中で順序が入れ替わったり、別なものが入ることもあるので、ゼミ生は休んだ場合等常にMLを注意したり、他のゼミ生に確認してください。 また、(必修)の文献は、事前に必ず読んでかつ、当日のディスカッションで分かち合うポイント(重要だと思うこと、印象に残ったこと、問題だと思うこと等)を簡潔にまとめておいてください。 なお、このまとめは箇条書きでよいですが、当日のゼミ後に提出してもらいます。また(推奨)とあるものも、そのテーマに関心のある人はディスカッションを豊かにするためには是非読んでおいてもらえればよいかと思います。 特に指定した論文が、一般論と違う場合もあり、その場合には、できるだけ推奨のところで一般論や違った考えを提示したいと思ってます。両論を読んだ上でディスカッションをしてもらえればと思います。 なお、推奨文献は短いものだけでなく一冊の本等もあります。よってそれぞれのテーマで自分の関心が強いテーマ等があってより深く勉強したい方は、事前に図書館で借りたり購入したりして 読んでおけばよいのではないかと思います。また少なくとも1冊くらいは私の研究室にあるので、先着順で2週間ほどはお貸しすることが出来ると思います。

1) 4/12 イントロダクション

2)4/19 貧困・開発・発展 
 (必修)1:下川『貧困者の現実、彼らの歩みとオルタナティブな発展―アジアの都市部の事例を中心にー』
    (英訳:"People's Reality, People's Process and Alternative Developments in Urban Asia")
     2:下川 『Japanese Seed』
  (推奨)1:下川の国際政治経済論2の授業を思い出しながら
     2:James Ferguson (Stanford University) "Decomposing Modernity: History and Hierarchy after Development" 
     3:世界開発報告や人間開発報告書で記述されている一般的な貧困および開発のイメージ

3)4/26 グローバリゼーションと新自由主義:その可能性と問題性
※各自がそれぞれ適当な本を探して準備し、また自分の体験やこれまでの知識からグローバリゼーションの可能性や問題点等を考えてきてグループワークを行います。一応、共通の出発点として 幾つかの新聞記事を読んで置いてください。またこのまとめの模造紙は保存し7月12日の会にそれをもとにもう一度グループワークをしたら半年の勉強の効果がわかるかも?
 (必修)1:グローバリゼーションに関する記事(朝日:2007/4/14:グローバル化と雇用:4/19に配布します)
     2:日本、フランス、他国のおける若者雇用の不安定性の比較に関する記事(朝日:2006/4/17)
 (推奨)1:下川(2007)「経済学から見たグローバリゼーション」『コスモポリス』、第1号、近刊予定。
       ←ただし国際政治経済論1の授業を受けてない人は難しいと思われるので避けた方がよい
     2:グローバリゼーション関連のお勧め本のいずれか
     3:その他自由に

4)5/10 水道事業の民営化
 (必修)1: 添ノ澤温子『途上国における水道事業民営化の現実と可能性ーアルゼンチンを事例にー』2006年度修士論文
 (推奨)1:岡本美恵子『水道事業の民営化〜地域住民にとって望ましい水管理のあり方とは〜』2003年度卒業論文
     2:世界開発報告(2004年版)−貧困層向けにサービスを機能させるー(特に第9章)英語版はここで全文がダウンロードできる
     ←民営化を強く推進している
     3:人間開発報告書(2006年版)―水危機神話を越えて:水資源をめぐる権力闘争と貧困、グローバルな課題―(英文全文はこちら)

5)5/17 麻疹のため休講
 
6)5/24 グローバリゼーションとオルタナティブな労働・生産形態『労働者協同組合』
 (必修)1:菅野正純「「民衆のグローバリゼーション」と「協同労働の協働組合」」『社会正義』23, pp23-41.
 (推奨)1:湯浅誠『仕事づくり、空間づくり、関係づくりー自らの仕事起こしー』(数ページです)
     2:ホセ・アスルメンディ 『アリスメンディアリエタの協同組合哲学―スペイン・モンドラゴン協同組合の創設思想』
     3:協同総合研究所のHPは参考になります

7)5/31 新自由主義に対するラテンアメリカの人々の対応・運動
 (必修)1: 藤井枝里『アルゼンチンにおけるERT:労働者による会社・工場回復運動〜雇い主のいない労働を求めて〜』2006年度ゼミ論
      ⇒現地レポート1現地レポート2
     2:田辺洋太『土地を持たない農村部の働き手達による活動@Brasil〜 MSTの紹介 〜』2004年度ゼミ論
     3:下川(2004)『はじめれのラテンアメリカ訪問』(後にMSTのインタビュー資料あり)
 
8)6/7 貧困と教育:学校教育、ノンフォーマル教育、識字教育、意識化教育(パウロフレイレ)
 (必修)1:糟谷有紀子『教育は貧困者の可能性を拡大できるか』2004年度卒業論文
      2:氏原由実 (2007)『パウロ・フレイレの教育学と日本社会の意識化への可能性』2006年度セミ論
 (参考)1:AshAのHPめぐこのHP(一般的イメージ?)
      2:パウロ・フレイレ(小沢有作他共訳) (1979), 『被抑圧者の教育学』亜紀書房。
      3:パウロ・フレイレ(里見実訳) (2001), 『希望の教育学』太郎次郎社。

9) 6/14 マイクロクレジットの功罪(+貯蓄グループ)
 (必修)1:日下部 (2007) 『NGOと住民:バングラディッシュ・ハティア島におけるNGOの軌跡』2006年度修士論文
        ※この論文全体は、NGOを 論じると同時に、その地域を論じたものです。よって全体が今回のテーマに沿っているわけではありません。このうち、以下の章 はバングラデシュNGOの外部依存体質や、NGOとマイクロクレジットの関係を中心に書 いてあります。よって、その部分は必ず読んでおいてください。なお、この論文に対しての本人コメントとして、「本文(3章)ではマイクロクレジットやNGOの活動を分析することによって、これらが必ずしも地域住民のために 行われているわけではないと否定的に捉えました。しかし、そうであってもマイクロクレジットなしでDUSが活動を続けていくことための 提言が何もできず、DUSがなくなると地域住民にとって現時点ではどうしようも ないことから(長い目で見たときにはDUSの存在が地域住民に良いものかどうかは疑問)、結果的に肯定的な言い方にならざるを得ませんでした。中途半端で残念です。」とのことです。
         ⇒はじめに、第T章第4節、第V章第1節・第2節・第3節・第4節・第5節、第W章冒頭・第1節・第2節・第3節
      2:Somsook Boonyabancha, "Savings and loans; drawing lessons from some experiences in Asia,"
       Environment and Urbanization 13 (2), 9-21.
       ←少なくとも大学のパソコンからは無料でダウンロードできるはず。
 (参考)1:ムハマド・ユヌス著、猪熊弘子訳 (1998),『ムハマド・ユヌス自伝:貧困なき世界をめざす銀行家』早川書房
     2:岡本・粟野・吉田編著 (1999) 『マイクロファイナンス読本』明石書店
     3:下川 (1999)「インフォーマルセクター生産財市場の競争政策:小規模事業家の市場アクセスの改善」『アジア経済』 40 (2), 2-18.
       ←読むのは「はじめに」と「おわりに」だけで良いでしょう。   

10) 6/ 21 貧困者の歩みのグローバルな発展
 (必修)1:下川「貧困者の歩みの発展:新たな発展(開発)モデルを求めて:パキスタン、タイの事例から(未定稿)」幡谷則子、下川雅嗣編著『グローバル・ローカル相互作用:社会・経済』(仮題)、上智大学AGLOS叢書第3巻、上智大学出版会(8月出版予定)
      2:下川「アジアにおける貧困者のあゆみとコミュニティ・ビジネス」内田雄造編著『まちづくりとコミュニティネットワーク』解放出版社, 159−185, 2006年。



11,12) 6/28, 7/5 先進国(場合によっては日本が中心)における貧困問題:ワーキングプアー・野宿者他
 (必修)1:『知っていますか?野宿者のこと』上智大学学内共同研究「貧困と差別」野宿者問題連続講座班(現在出版作業中です。出来次第全員にお配りします)
 (参考)1:Working Poor (NHKのテレビ?)
      2:Working Poor 2 (NHKのテレビ?)

13) 7/12 グローバリゼーションと新自由主義:その可能性と問題性
 ※4月26日のグループワークをベースにこれまで学んだことをもとに考察しなおす。

14) 7/19 卒論・ゼミ論・共同研究/プロジェクト等のテーマ発表

      

注意

本ゼミは、木曜日5限となっているが、7時過ぎまで長引くことが多いのでその旨最初から留意しておくこと。また、クラス、クラスの準備、日々の研究、さらには学生どうしの交流等、かなり積極的に参加する学生を望むのでその覚悟で臨んで欲しい。なお下記にある最終合宿は全員参加。

卒論執筆者・ゼミ論執筆者の日程目安

<前期:演習(国際政治経済論1)>
・5月下旬:できれば研究テーマ案の分かち合い及びテーマの調整
・5/31:国際関係副専攻卒論登録締切(これ以前にテーマをある程度絞っておかないとこのときでは遅い)
・7月最後のゼミ(7/19)に卒論、ゼミ論、グループ研究の研究テーマ・途中経過についての簡単な報告をしたい。

<後期:演習(国際政治経済論2)>
・後期は順に中間発表
・12月10−14日:卒論提出期間
・12月末及び1月はじめ:卒論最終発表(ゼミの時間中)
・1月はじめ(場合によっては1月末):ゼミ論(卒論残り)最終報告合宿(原則全員参加)
・ゼミ論締切りは最終合宿の2日前か1月20−25日あたりにしたいと考えている。

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