2009年度 演習(国際政治経済論1,2)説明

2009年度ゼミ(演習:国際政治経済論1、2)希望者へ
 ※秋学期からの受講は、留学等で継続履修の場合以外は原則として認めませんのでご注意ください。

演習(国際政治経済論)は、大学全体のカリキュラムがセメスター制に移行ということで、形式上春学期の演習(国際政治経済論1)と秋学期の演習(国際政治経済論2)の半期ごとにわかれています。 しかしながら、この演習2つは、原則として連続して受講するもの、つまり通年のゼミとして考えますのでご注意ください。このため、秋学期の演習(国際政治経済論2)の受講は、 春学期の演習(国際政治経済論1)をその年かそれ以前に受講したものに限る予定ですので、ご注意ください。なお、このようにこの演習を通年のゼミとして私がみなしたい理由は以下の 2点です。

@演習(国際政治経済論2)においては、学期末に卒業論文またはゼミ論文またはそれに準じるものを仕上げることを要求するのですが、夏休み前にテーマの相談をし、夏休み中にその準備をしない限り 良質なものを作ることは難しいと思います。
A大学生活の一つとして、そしてその後の生活のためにもゼミとその仲間を大切にしていただきたいと思いますし、できればコミュニティとなっていけたらと思います(これは私の大きな研究テーマである People's Processに通じるものです)。そのためには通年をかけて、互いの人間関係を深めていく必要があると考えています。

なお、ゼミとして成り立たせるためには経験上30人未満でないと難しいと考えます。そのために、もし人数が多い場合には、全体で30人未満にするために選考をさせていただきたいと思います(ただ、昨 年度サバティカルで一年不在だったので、今年はこのゼミの希望者はそんなに多くないかもしれませんが・・・)。そのため、下記の説明を読んで、まず自分のやりたいことと私のゼミ が合っているかどうかをよく考えてください。その上で、ゼミに応募されたい方は、志望動機、現在の関心事(または研究したいテーマ;これは途中で変わっても良い)等を決められた下記の様式で準備し、初回のクラス(4月16日)に臨んでください。
⇒様式はこちら(Word)

初回に出席して様子をみた結果、このゼミを希望するものはこれを提出してください。なお万一希望者(初回のゼミ出席者)が30名を超える場合はこの志望動機書を基に選抜を行います(当然、初回欠席のもの、またこの志望動機書を提出しなかったものは、 優先順位が落ち、受講できない場合があるので注意すること)。また選抜が行われる際には、下記の点も考慮します。

1)過去に私の授業を受講したものは優先されます(@国際政治経済論1,2、A国際経済学1、2)。
⇒ただし昨年度はサバティカルで授業が開講されていなかったので、授業の既履修者はほとんどいないと思われます。

2)もし、以下の文献のうち一つを読んで、3000字から4000字程度のブックレポート(要約と考察(場合によっては感想も)) を準備し、初回のゼミの日に提出してくだされば、その方は優先されます(ゼミ受講の必要条件ではありません)。

(注:副専攻ガイダンスのときには、国際経済学1、2の授業の説明に時間を大きく割いてしまったので、経済学ができないと(またはやるつもりでないと)ゼミは難しいという印象をもたれた方もおられるかもしれませんが、決して経済学的基礎がないと無理ということはありません。これは国際政治経済論1、2も同じで 国際経済学を履修してなくても、国際政治経済論1,2を履修してくださってほとんど問題ありませんし、内容に関心がある人なら歓迎します。⇒この注は数日で消します)。

<ブックレポートのための文献>

[1]穂坂光彦 (1994), 『アジアの街わたしの住まい』明石書店。
・居住問題が中心テーマであるが、アジア各国のスラムでの人々の生活・取組の実情がよくわかる。

[2]ホルヘ・アンソレーナ、伊従直子 (1992), 『スラムの環境・開発・生活誌』明石書店。
・入門書、また実際にスラムの活動を訪問したい時に役立つ(少し情報が古い。本当に訪問する際には、新しい情報は下川まで要相談)
[3]ホルへ.アンソレーナ/伊従直子/内田雄造/穂坂光彦 (1987), 『居住へのたたかい』明石書店。

[4]パウロ・フレイレ(小沢有作他共訳) (1979), 『被抑圧者の教育学』亜紀書房。
・古典的書物だが、途上国における教育支援、特に識字教育に関心がある人は是非読んで欲しい本。識字教育の原点はここ。

[5]パウロ・フレイレ(里見実訳) (2001), 『希望の教育学』太郎次郎社。
・いまある状態が、すべてではない。ものごとを変える、変えることができる、という意志と希望を失ったそのときに、教育は、被教育者にた いする非人間化の、抑圧と馴化の行為の手段になっていく。いまある所与の状態を引き受け、それを直視しつつ、誠実かつ老獪に「可能な夢」を模 索する教育思想家フレイレの晩年の主著(「BOOK」データベースより)

[6]内田雄造編著 (2006), 『まちづくりとコミュティワーク』解放出版社。
・(第U部第3章)山本義彦「「陸の孤島」からの街づくりー大阪・浅香すとーりー」
・(第V部第1章)全泓奎「韓国におけるまちづくりとコミュニティワーク」
・(第V部第2章)下川雅嗣「アジアにおける貧困層のあゆみとコミュニティ・ビジネス」
※これをブックレポートに用いるときは、上記3つのみか中心に書くように。

注意

本ゼミは、木曜日5限となっているが、7時過ぎまで長引くことが多いのでその旨最初から留意しておくこと。また、クラス、クラスの準備、日々の研究、さらには学生どうしの交流等、かなり積極的に参加する学生を望むのでその覚悟で臨んで欲しい。なお下記にある最終合宿は全員参加です。

内容

・国際政治経済諸問題をより深く理解する能力を育てる。春学期は毎週テーマを設定し、それについてのグループワークを行う。なお事前にそのテーマに関して必読文献を指定するので各自はそれを読んでゼミに参加することが要求される。 秋学期は各自テーマを決め,研究結果を発表し討論する予定。またゼミ受講者は国際経済学1,2または国際政治経済論1・2(下川雅嗣担当)を既に履修済みか、併せて受講することが勧められる。
・私自身の今の関心事はこのHPの全体を参照のこと。
・2003.2004,2005,2006、2007年度のゼミでやった詳しい内容については、HPの下川ゼミの2003年度の説明2004年度の説明2005年度の説明2006年度の説明2007年度の説明を参照のこと。
・2003,2004,2005,2006,2007年度のゼミ生の卒論・ゼミ論の要旨については、HPの下川ゼミの2003年度のゼミ論・卒論要旨2004年度のゼミ論・卒論要旨2005年度ゼミ論・卒論要旨(大部分はタイトルのみ)2006年度ゼミ論・卒論要旨(大部分はタイトルのみ一部要旨と 全文)2007年度のゼミ論・卒論要旨を参照のこと。
・ゼミ論においては、個人研究だけでなく共同研究・執筆を可とし、また最終成果も論文の形にこだわらず共同で何らかの実践を行い、その軌跡のレポートという形も最終成果として認めようと思っている。詳しくは初回のクラスの時に話し合う予定。
2009年度「アンソレーナさんと"開発"を語ろう― "貧困者と支援者による居住運動30年の歩み"」セミナーは、本ゼミと内容的に近いので強くお勧めです。 なお、アンソレーナさんは私の師匠でもあり、私も必ず参加します。またセミナー後アンソレーナさんを囲んで食事もご一緒にどうぞ。


前期グループワークを行う際のテーマ

※日程はとりあえずの目安です。途中で順序が入れ替わったり、別なものが入ることもあるので、ゼミ生は休んだ場合等常にMLを注意したり、他のゼミ生に確認してください。 また、(必修)の文献は、事前に必ず読んでかつ、当日のディスカッションで分かち合うポイント(重要だと思うこと、印象に残ったこと、問題だと思うこと等)を簡潔にまとめておいてください。 なお、このまとめは箇条書きでよいですが、当日のゼミ後に提出してもらいます。また(推奨)とあるものも、そのテーマに関心のある人はディスカッションを豊かにするためには是非読んでおいてもらえればよいかと思います。 特に指定した論文が、一般論と違う場合もあり、その場合には、できるだけ推奨のところで一般論や違った考えを提示したいと思ってます。両論を読んだ上でディスカッションをしてもらえればと思います。 なお、推奨文献は短いものだけでなく一冊の本等もあります。よってそれぞれのテーマで自分の関心が強いテーマ等があってより深く勉強したい方は、事前に図書館で借りたり購入したりして 読んでおけばよいのではないかと思います。また少なくとも1冊くらいは私の研究室にあるので、先着順で2週間ほどはお貸しすることが出来ると思います。 ただし春学期のうち5回分は、最近私が編著した下記の本の論文を使用しますので、これはテキストに指定したいとおもいます。

[テキスト]幡谷則子、下川雅嗣 [編著](2008)『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』(地域立脚型グローバルスタディーズ叢書第3巻) 上智大学出版会。 ⇒アマゾン

1) 4/16:イントロダクション

2)4/23: 貧困・開発・発展 
 (必修)1:下川「貧困者の現実、彼らの歩みとオルタナティブな発展―アジアの都市部の事例を中心にー」
    (完成版は村井吉敬、安野正士、David Wank [編著](2007)『グローバル社会のダイナミズム:理論と展望』(地域立脚型グローバルスタディーズ叢書第1巻)上智大学出版会、183-206。)
    (英訳:"People's Reality, People's Process and Alternative Developments in Urban Asia")
     2:下川 『Japanese Seed』
  (推奨)1:もし履修した人がいれば下川の国際政治経済論2の授業を思い出しながら
     2:James Ferguson (Stanford University) "Decomposing Modernity: History and Hierarchy after Development" 
     (日本語訳完成版:「近代の神話の解体―進歩主義以後の時代における歴史と階層序列」は『グローバル社会のダイナミズム:理論と展望』(地域立脚型グローバルスタディーズ叢書第1巻)に収録)
     3:世界開発報告や人間開発報告書で記述されている一般的な貧困および開発のイメージ

3)4/30 :開発と紛争
 (必修)1:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』 「序 ―グローバル化と貧困、開発、紛争」(幡谷則子)
     2:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』 「グローバルな開発、ナショナルな開発そして紛争―インドネシアから考える」(村井吉敬)
     3:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』 「紛争と経済―コロンビアの国内避難民(IDP)問題をめぐるグローバル/ローカル・イニシアティブ」(幡谷則子)

4)5/14 :グローバルな援助・開発とローカルな民衆
 (必修)1:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』 「グローバル援助の問題と課題―スマトラ沖地震・津波復興援助の現場から」(佐伯奈津子)
     2:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』 「拡大するダム反対運動のネットワーク―インドネシアの事例から」(久保康之)

5)5/21:貧困者の歩み(People's Process)の発展
 (必修)1:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』「貧困者の歩み(People's Process)の発展―パキスタン、タイの事例から」(下川雅嗣)
      2:下川「アジアにおける貧困者のあゆみとコミュニティ・ビジネス」内田雄造編著『まちづくりとコミュニティネットワーク』解放出版社, 159−185, 2006年。

6)5/28 休講(フィリピン出張のため)または社会正義研究所主催の映画上映会に参加してもらうことになるかもしれません

7)6/4:オルタナティブな発展モデル
 (必修)1:『貧困・開発・紛争:グローバル/ローカル相互作用』「結び―ローカル/グローバル相互作用が生む新たな発展モデル」(下川雅嗣)
     ※なお、今回はこれまでのゼミで扱ったものをすべて総合してグループで話し合いましょう。

8)6/11:貧困と教育:学校教育、ノンフォーマル教育、識字教育、意識化教育(パウロフレイレ)
 (必修)1:糟谷有紀子『教育は貧困者の可能性を拡大できるか』2004年度卒業論文
      2:氏原由実 (2007)『パウロ・フレイレの教育学と日本社会の意識化への可能性』2006年度セミ論
 (参考)1:AshAのHPめぐこのHP(一般的イメージ?)
      2:パウロ・フレイレ(小沢有作他共訳) (1979), 『被抑圧者の教育学』亜紀書房。
      3:パウロ・フレイレ(里見実訳) (2001), 『希望の教育学』太郎次郎社。

9) 6/18 :発展のための農地改革の重要性と困難性
 (必修)1:国武匠 『明日の農地改革』2005年度卒業論文
      2: 國武匠 (2008) 『農地改革における国外要因分析−ボリビアを事例にー』、2007年度下川ゼミ修士論文。
      ※近日中に、これを基に若干書きかえたものが『コスモポリス』に掲載される予定です。
 (推奨)1:Market Led Agrarian Reformについての元ゼミ生による簡単なまとめ
 (参考)1:K.T. "Critical analysis of market-led land reform -The case of Market Led Agrarian Reform in South Africa-"(全文)

10) 6/ 25:グローバリゼーションと新自由主義:その可能性と問題性
 (必修)1:「グローバル化と先進国における貧困と社会的排除:野宿者、フリーター、移住労働者の現場から」(第27回国際シンポジウム)
      ⇒2009年12月新刊

 (推奨)1:下川(2007)「経済学から見たグローバリゼーション」『コスモポリス』、第1号、63-68。
       ←ただし国際政治経済論1の授業を受けてない人は難しいと思われるので避けた方がよい
     2:グローバリゼーション関連のお勧め本のいずれか
 
11) 7/2:新自由主義と日本における貧困問題:ワーキングプアー、不安定就労(派遣、派遣切り、雇用崩壊等)、野宿者等
     ※前回の文献やディスカッションをもとにしたうえで、特に日本のコンテキストで、日頃経験していること、テレビ等で見ていること、将来直面すると予想されること等を材料にして深めていきたいと思います。
 (推奨)1:『知っていますか?野宿者のこと』2006年度上智大学学内共同研究「貧困と差別」野宿者問題連続講座班(社会正義研究所に行けば無料でもらえます)。
      2:湯浅誠(2008)『反貧困:「すべり台社会」からの脱出』岩波新書

12) 7/9 :グローバリゼーションとオルタナティブな労働・生産形態『労働者協同組合』
 (必修)1:菅野正純「「民衆のグローバリゼーション」と「協同労働の協働組合」」『社会正義』23, pp23-41.
 (推奨)1:湯浅誠『仕事づくり、空間づくり、関係づくりー自らの仕事起こしー』(数ページです)
     2:ホセ・アスルメンディ 『アリスメンディアリエタの協同組合哲学―スペイン・モンドラゴン協同組合の創設思想』
     3:協同総合研究所のHPは参考になります

13) 7/16: 新自由主義に対するラテンアメリカの人々の対応・運動
※ラテンアメリカは1980年代から90年代、新自由主義の実験場とさえ言われていました。そこが今どうなったか、人々はどう対応しているかを知るのは意味のあることでしょう。
※なお、ここの必修う文献は、後日変更する可能せいがあります。
 (必修)1:藤井枝里『アルゼンチンにおけるERT:労働者による会社・工場回復運動〜雇い主のいない労働を求めて〜』2006年度ゼミ論
      ⇒現地レポート1現地レポート2
     2:田辺洋太『土地を持たない農村部の働き手達による活動@Brasil〜 MSTの紹介 〜』2004年度ゼミ論
     3:下川(2004)『はじめれのラテンアメリカ訪問』(後にMSTのインタビュー資料あり)


14) 7/23 卒論・ゼミ論・共同研究/プロジェクト等のテーマ発表

卒論執筆者・ゼミ論執筆者の日程目安

<前期:演習(国際政治経済論1)>
・5月下旬:できれば研究テーマ案の分かち合い及びテーマの調整
・5/29:国際関係副専攻卒論登録締切(これ以前にテーマをある程度絞っておかないとこのときでは遅い)
・7/23に卒論、ゼミ論、グループ研究の研究テーマ・途中経過についての簡単な報告をしてもらう。

<後期:演習(国際政治経済論2)>
・後期は順に中間発表
・12月9−15日:卒論提出期間
・12月末及び1月:卒論最終発表(ゼミの時間中)
・1月8、9、10、11日のどこか1泊2日(場合によっては1月末):ゼミ論最終報告合宿(原則全員参加)
・ゼミ論締切りは最終合宿の前のゼミの日(たぶん1月7日)にしたいと考えている(ただし修正指示があった場合の最終締め切りを1月20−25日あたり)と考えている。

Seminarへ戻る