数学B(微分積分)(物質生命理工学科1クラス)・数学IN(化学科)・講義内容と予定


本講義は理工学部共通科目の「数学B(微分積分)」(物質生命理工学科1クラス)と 理工学部化学科の「数学IN」との合併講義である。

上智大学の学部シラバス内の本授業のページ [数学B(微分積分)(物質生命理工学科1クラス) |数学IN(化学科) ]


お知らせ

授業時のプロジェクタ資料を掲載する予定です。 各授業日の項から見て下さい。 但し、各授業中の前回の復習部分を含んでいるので、内容に重複があります。 印刷時には必要なページだけ印刷するなどして下さい。

講義概要

一変数の場合を中心に、微分積分など数学に於ける解析的手法を扱う。 高校までの「等式の数学」で余り触れられない「不等式による評価」の話から始めて、 Taylor展開の理論を大きなテーマとし、 極限・収束・無限和・微分・積分・近似計算などを関連付けて講義したい。 また、化学の学習で必要な常微分方程式のうち、簡単なものの解法にも触れる。 高校までで学んだ知識も活用する一方、それらのより確かな基礎付けも与える。 問題演習や多くの例を通じて理論的な事項を実感すると共に、 将来出会う様々な実例に馴染んでもらいたい。

講義計画

不等式による評価から始めて、Taylor 展開を主な切口に、 一変数の微分積分について以下の事柄を中心に解説する。 時間があれば更に各週読み切りで幾つかのトピックを紹介したい。

主な参考書

講義内容

4/14

配ったプリント [page 0(pdf,18KB) ] ・プロジェクタ資料 [4/14授業時(pdf,42KB) |4/14印刷用(pdf,34KB) ]

前振り(物質生命理工学科・化学科に於ける数学の授業の意義・ノートの取り方など)。 不等式による評価。解析学は不等式の数学である。

4/21

配ったプリント [演習1(pdf,12KB) ] ・プロジェクタ資料 [4/21授業時(pdf,46KB) |4/21印刷用(pdf,43KB) ]

不等式による評価(続き)。極限と近似。Taylor展開の導入。

関数 f(x)=x^2 において、 x を 2 に近付けると f(x) は 4 に近付くが、 その誤差について、

  1. |f(x)-4| < 0.1 となるためには、x をどの程度 2 に近付ければ良いか (つまり、|x-2| < δ なら大丈夫と言えるためには、 δの値をどれくらいにすれば良いか)。 (ヒント: x=2+h と置くと計算し易い。)
  2. |f(x)-4| < 0.0001=1/10000 となるためには ?
  3. 一般に、εを任意の正の数として、|f(x)-4| < ε となるためには、 δの値をどれくらいにすれば良いか。 (ヒント: 同じ要領の評価を変数εのまま行なえば良い。)

4/28

配ったプリント [演習2(pdf,11KB) ] ・プロジェクタ資料 [4/28授業時(pdf,39KB) |4/28印刷用(pdf,37KB) ]

Taylor展開とは何か。形式的 Taylor 展開の幾つかの例。 Taylor展開の利用(極限計算・近似値計算)。

  1. f(x)=sin x の Taylor 展開を求めよ。
  2. これを利用して、
    1. 極限 lim_{x→0}(sin x-x)/x^3 を求めよ。
    2. sin 1 の近似値を小数第 4 位まで求めよ。

5/5

「こどもの日」でお休み。

5/12

プロジェクタ資料 [5/12授業時(pdf,52KB) |5/12印刷用(pdf,50KB) ]

前回の問題の解説。 Taylor 展開の利点・欠点・課題点。

無限級数の収束・発散の例。絶対収束・条件収束。 有限和と異なり、無限和では、項の順番を入れ替えると、 任意の実数値に収束せしめたり、発散せしめたりし得ることがある。 調和級数 Σ_{n=1}^∞ 1/n が発散することを、1/x の積分と比較した評価で示す。

5/19

プロジェクタ資料 [5/19授業時(pdf,65KB) |5/19印刷用(pdf,55KB) ]

絶対収束・条件収束。 正項級数は部分和が(上に)有界なら収束し、しかも項の順番に依らない。 絶対収束する級数は項の順番を任意に入替えても同じ値に収束する。

正項級数の収束判定。比較判定法。「無限等比級数の和」を比較基準に。

5/26

配ったプリント [演習3(pdf,11KB) ]・プロジェクタ資料 [5/26授業時(pdf,60KB) |5/26印刷用(pdf,55KB) ]

簡単な収束性判定(d'Alembertの比テスト・Cauchyのn乗根テスト)。 冪級数とその収束半径。

判定が微妙な例: s>1 ならば Σ_{n=1}^∞ 1/n^s は収束。 Riemannのζ関数とその特殊値(お話)。

Taylorの定理(剰余項の評価)の予告編。

次の級数が絶対収束するような $x$ の範囲は?

  1. Σ_{n=0}^∞ x^n/n!
  2. Σ_{n=1}^∞ x^n/(n 2^n)
  3. Σ_{n=0}^∞ n 3^n x^n
  4. Σ_{n=0}^∞ n! x^n
  5. Σ_{n=0}^∞ n^n/n! x^n

6/2

配ったプリント [page 1(pdf,25KB) |page 2,3(pdf,40KB) |演習4(pdf,11KB) ]・プロジェクタ資料 [6/2授業時(pdf,45KB) |6/2印刷用(pdf,39KB) ]

形式的Taylor展開級数については、

という点が問題となる。収束性についてはここまでで論じた。 剰余項が 0 に収束すれば元の関数と一致することが保証されるので、 剰余項の評価に関するTaylorの定理を、平均値の定理を用いて証明。

近似値計算と誤差評価の演習。

f(x)=e^x のTaylor展開の剰余項 R_N(f;x) について、

  1. |R_N(f;1)| < 10^{-4} となる(なるべく小さい) N を与えよ。
  2. e の近似値を小数第 3 位まで求めよ。
  3. 誤差が 10^{-3} 以下であることを保証せよ。

6/9

配ったプリント [page 4(dvi,21KB) ]・プロジェクタ資料 [6/9授業時(pdf,52KB) |6/9印刷用(pdf,49KB) ]

前回出題の問題について解説。特に、打切り誤差と丸め誤差とについて。 冪級数の計算。項別微積分。二項展開。

6/16

中間試験を行なった。 [中間試験問題(pdf,31KB) ]

中間試験結果

平均点は100点満点中66.8点くらい。 講義で触れていなかった問題などもあることを考えれば、 良く出来ていると思います。 90点以上の人も1割ほどいました。立派立派。 70点以上くらいの人はこの調子で引続きしっかり取組んで 期末試験に臨んでくれれば良いでしょう。 50点以下くらいの人はきちんと復習をし直した上で、 心して期末試験に臨んで下さい。 授業中の演習問題を提出していない人や正解できていない人は 遡って提出することをお奨めします(評価対象)。

6/23

配ったプリント [演習5(pdf,7KB) ]・プロジェクタ資料 [6/23授業時(pdf,62KB) |6/23印刷用(pdf,59KB) ]

中間試験の答案返却・補足解説。 形式的Taylor展開級数が収束しても元の関数と一致しない例。

逆関数。或る種の微分方程式を満たす関数の逆関数は積分で表される。 逆三角関数 arcsin x,arctan x とそのTaylor展開。

6/30

配ったプリント [演習6(pdf,16KB) ]・プロジェクタ資料 [6/30授業時(pdf,107KB) |6/30印刷用(pdf,93KB) ]

冪級数は複素数の範囲で考えると本性を表わす。 Euler の公式 : e^{ix}=cos x+i sin x。双曲線関数。

積分。区分求積から積分の定義に向けて。

7/7

プロジェクタ資料 [7/7授業時(pdf,104KB) |7/7印刷用(pdf,86KB) ]

積分の基礎付け(Riemann積分)。有界閉区間上で有界な関数の積分の定義。 定義で苦労することによって証明が見通し良くなる道を選ぶのが、現代数学の流儀。 (Riemann積分の意味で)積分できない関数の例。

連続関数の積分可能性。微分積分学の基本定理。 連続関数に対しては、 積分の理論の範疇である定積分関数や不定積分と 微分の理論の範疇である原始関数(逆微分)とが一致する、 というのが、微分積分学の基本定理の内容である。 これにより、定積分の計算自体は高校で学習したように 原始関数が判れば計算できる。

7/14

配ったプリント [page 5,6(pdf,37KB) |page 7(pdf,18KB) ]・プロジェクタ資料 [7/14授業時(pdf,63KB) |7/14印刷用(pdf,61KB) ]

広義積分(変格積分)とその簡単な収束判定。 Γ関数。

7/19(補講日)

補講(質問会)を行なう。

7/21

配ったプリント [演習7(pdf,9KB) ](提出不要)・プロジェクタ資料 [7/21授業時(pdf,72KB) |7/21印刷用(pdf,71KB) ]

「海の日」であるが授業実施日である。

積分の計算法。 簡単に見える関数でも不定積分が初等関数の範囲で得られないこともあるので、 積分の計算が一般的にいつでも出来る方法はなく、 個別のテクニックに頼らざるを得ないが、 或る程度の範囲については原理的に出来る方法がある。 その例として、 有理関数の不定積分(続き)・無理関数の不定積分・三角関数の有理関数の不定積分。 これら積分の計算法が何故うまく機能するのかという幾何的な背景。

7/28

期末試験を行なった。 [期末試験問題(pdf,47KB)]